準備着々、行き先は風まかせ
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実験に使ったスペースシャトル形の紙飛行機 |
「国際宇宙ステーション」の日本の研究施設「きぼう」の船内実験室が、今月、取り付けられました。予定通り進めば、2009年春にはすべて完成。そうしたら、わたしが楽しみにしている実験があります。ステーションから地球に向けて紙飛行機を飛ばす「地球帰還計画」です。
計画しているのは日本折り紙ヒコーキ協会(広島、戸田拓夫会長)と東京大学大学院工学系研究科など。戸田さんは紙飛行機の滞空時間19.24秒の世界記録をもっていますが、帰還には数か月かかるとみられます。計画が成功すれば大幅な世界記録更新、間違いなしです。
わたしのいた大学の航空工学科には紙飛行機を飛ばす試験がありました。教室のはしまでスーッと飛ばさなくてはなりません。たいがい途中で墜落するか、左右にそれてしまう。バランスのいい飛行機と、力を抜いた投げ方が必要でした。
「地球帰還計画」は26日、国に認められましたが、以前から準備が進んでいます。無事帰還の一番の問題は、大気圏突入時に空気の抵抗熱で燃えないようにすることです。
1月、東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)で、安全を確かめる実験をしました。ガラス質の薬剤で高温に強くした紙で折った長さ七センチの飛行機に、マッハ7(秒速約1.2キロ)の空気を12秒流したところ、先っぽは約200度になったが、燃えませんでした。東大の鈴木真二教授は「予想よりきびしい条件での実験。自信がついた」。一歩前進です。
わたしの試験では飛ばし方も大事でしたが、宇宙ではただ放り出せばいいらしい。協会では「初めはグルグル回転するかもしれないが、あとは自然に安定飛行する」とみています。
「宇宙から紙飛行機が帰ってくる――子どもたちが科学っておもしろいと思ってくれれば成功」と戸田さん。
紙飛行機の行き先は風まかせ。地球のどこに、いつ舞い降りるかをどうやって確認するのか……ちょっと間の抜けたところもあるこの計画、心から応援したいと思います。
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