朝日小学生新聞
2006年9月8日
保護者の方へ 購読の申込み 今日は何の日? 朝日小学生新聞トップ
   こどもアサヒ TOPページ > 朝日小学生新聞 > 科学コラム「おや子で科学」
  芥川龍之介の「クモの糸」は本当だった

人がぶら下がれるほど強い糸

ジョロウグモ。糸の強さはクモの世界でもチャンピオン級という

 「御釈迦様はその蜘蛛の糸を……遥か下にある地獄の底へ、まっすぐにそれを御下しなさいました」

 有名な芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』の一節です。

 地獄にはカンダタがいた。人殺しだが、クモを助けたことがある男だ。御釈迦様は男を助けてやろうと考えたのだ。男は糸を上り始めた。ふと見ると、ほかの罪人も上ってくる。助かるのは自分だけで良い。「下りろ」。叫んだ瞬間、糸が切れた――という話です。

 小説とはいえ、クモの糸に人がぶら下がれるものなのか?

 奈良県立医大の大崎茂芳教授は、コガネグモの縦糸19万本を集めて太さ2.6ミリのひもをよりました。そのひもを部分的に使ったハンモックを作り、自分(体重65キロ)で乗ってみた。大丈夫でした。2007年、学会で発表。満員の会場は拍手喝采でした。

 信州大繊維学部の中垣雅雄教授によると、「米デュポン社は『鋼鉄より強いナイロン』より強いといっている」といいます。

 軽い防弾服などをめざして、カナダ、アメリカ、ドイツなどで人工的にクモの糸を作る研究を進めています。

 中垣教授はこの強さを絹に生かそうと、約10年前から、カイコにクモの遺伝子を組み込むことに挑戦。07年、ジョロウグモの横糸成分が10パーセント混じった絹糸(スパイダーシルクと命名)を吐くカイコを作ることに成功しました。

 横糸は弾力性が大きく企業の協力で、2年後に靴下として製品化する計画です。同時に、横糸より強い縦糸成分を吐くカイコも開発中です。

 クモは嫌われ者。中垣教授も「あまり好きじゃない」という。でも、古くなった巣も食べて新しい糸を作るなど、リサイクルの面でもすぐれ者のクモ。見直してやりたい。

朝日学生新聞社副社長・内山 幸男
朝日小学生新聞 2008年2月10日付
おや子で科学 バックナンバー
 
強力連載隊
落第忍者乱太郎 まんが日本の歴史 おしえてさかなクン

TOPページ  |  朝小TOP  |  朝中TOP  |  新聞の定期購読  |  お問い合せ  |  著作権  |  広告掲載  |  会社概要
(C)Asahi Gakusei Shinbunsha All Rights Reserved.