冬景色より深海流の乱れが心配
去年の2月はじめ、流氷を求めて北海道・知床半島の海岸沿いを車で走っていました。
「いま、流氷が漂着している」。地元漁船の情報を頼りに、夫婦で家を出てもう2時間。羅臼の町を抜けてからもだいぶたつのに、海はひたすら青い。
流氷は、オホーツク海北部でできた海氷が海流や風で運ばれてやってきます。風向きや強さによって、ひと晩で現れたり消えたりするといいます。「沖に行ってしまったのか」
あきらめかけたとき、突然、海が真っ白〓写真〓に変わりました。「いた」。まるで貴重な動物でも見つけたような気分でした。
北海道の流氷は、世界で最も南でみられる海氷。冬の貴重な観光資源であるばかりではなく、氷が運ぶ植物プランクトンは海を豊かにもしています。
地球温暖化に関係する大きな働きもしています。海水は、塩分のせいで、マイナス1.8度で凍ります。このとき、多くの塩分をはき出します。低温で塩分が濃く重くなった周りの海水はどこまでも深く沈んでいき、巨大な深海流が始まります。オホーツクの深海流は北太平洋に流れこみ、インドネシアにまで流れていくといいます。
西太平洋・グリーンランド沖と南極でも、同じ仕組みの海水の沈み込みがあります。こちらはもっと規模が大きく、インド洋、太平洋の海底を約千年かけて一巡しています。この「海洋大循環」によって、北欧が高緯度なのに暖かいなど、地球の気候を穏やかにするのに役立っています。
ところが、地球温暖化でこの大循環が止まってしまうかもしれないと専門家が心配しています。そのとき地球はどうなるのか――流氷は、たんなる北海道の冬景色ではないのです。
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