多くの人を死なす「新型かぜ」
この冬は、インフルエンザで学級閉鎖する学校が続出しています。いまはAソ連型という従来型ウイルスですが、専門家が大変心配しているのは病原性の強い新型の出現です。
インドネシア、ベトナムを中心に死者が出ている鳥インフルエンザウイルスが、いつ新型になってもおかしくないからです。
新型がどのくらいこわいかは、今から90年前、突然現れた新型の「スペインかぜ」が示しています。
1918年3月、アメリカで見つかった新型インフルエンザはアッという間に国内に広がり、4月にはフランスに上陸、5月にはヨーロッパ中に広がっていました。
従来型のウイルスなら、患者の中で死ぬ人は200人に1人以下ですみますが、新型は50人に1人以上でした。地域によっては五人に一人というところもありました。
第一次世界大戦のさなか、ヨーロッパ戦線で若い兵士がばたばた死に、いつしか「スペインかぜ」と呼ばれるようになりました。
日本では同じ年の秋から大流行、2年間で死者38万人に達しました。
このような新型は、鳥インフルエンザが人やブタに感染を繰り返しているようなところで生まれます。
メコン川下流のベトナムの農家を訪ねたときのことを思い出します。取材中、わたしの周りの土間や台所、寝床をニワトリが走り回っていました。裏庭にはブタ。何千羽もの水鳥を家の近くの池で飼っている農家もあったし、市場では竹かごの中でニワトリが目をキョロつかせていました。
「新型の出現を阻止することは、不可能かもしれない」。あの光景を見た者には、そう思えます。
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