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2017年8月19日付
ケン 友だちの家の近くにあるコンビニには、外国人の店員さんがたくさんいたよ。
真鍋記者 人口が減り続けている日本では、外国人の労働力にたよる仕事が多くなっている。海外から来た労働者の数は100万人をこえているんだ。
ポン 100万人!
真鍋記者 日本は実際には移民を多く受け入れる「移民国家」になりつつある。国や社会は、移民に対するこれまでの「見て見ぬふり」の態度を続けることはできない。
――空港のそばにあるホテルでの客室清掃、デパートの地下食品売り場で売られるのり巻きの調理、中学校での外国語指導助手(ALT)、高齢者の介護……。ある50代のフィリピン人女性が日本で就いた仕事だ。この働きぶりが示すように、外国人労働力を頼りにする職場が増えている。
ジャン どのくらい増えているの?
――民間の研究機関が、労働現場で外国人労働者がしめる割合を試算した結果、調べた産業の平均は2009年から16年で1.9倍に増えていた。
総務省が国民の仕事の状況を毎月調べる労働力調査と、外国人をやとう事業所から厚生労働省への届け出を元に計算すると、16年時点で、仕事をしている人の59人に1人が外国人だった。去年10月末の外国人労働者の数は約108万人、外国人をやとう事業所は約17万といずれも過去最高だ。
ポン どうしてそんなに増えているの?
――背景には深刻な人手不足がある。出生率の低下や、親となる世代の減少などから、日本の人口は今後急速に減ることが確実とみられている。これからも、外国人労働力への依存が高まり続ける可能性は極めて高い。
「移民頼み」の現実が進む一方で、国の取り組みは後手に回っている。
ポン どういうこと?
――国際的には、「通常の居住地以外の国に1年以上住む人」を移民と呼ぶことが多い。だが日本では、移民という言葉がこうした意味ではほとんど用いられていない。
安倍晋三首相は去年、「いわゆる移民政策を取ることは全く考えておりません」と国会で明言した。外国人を社会で受け入れるための全体的な対策を練ることに、政府は後ろ向きなんだ。
ジャン 「見て見ぬふり」ってことね。
――そのひずみに直面している現場の一つが、学校だといえる。文部科学省の調査によると、公立学校に通う外国籍の子は約8万人に上り、そのうち日本語指導が必要な子は3万4千人と10年前の1.5倍になった。現場の教員の努力に、外国人生徒の教育が支えられているのが実情だ。
ケン 外国人を積極的に受け入れられないの?
――言葉や文化、風習が異なる外国人を社会の一員として受け入れるのは、たやすいことではない。移民を受け入れている国々でも近年、受け入れを拒否しようという排外意識が頭をもたげている。アメリカのトランプ大統領誕生やイギリスがEU(ヨーロッパ連合)からの離脱を決定した背景にも、移民に対する人々の反発があった。
だからといって問題を先送りすれば、分断と偏見はさらに深まるだろう。外国からの新たな隣人とどう共存、共生していくか。一歩をふみ出す時が来ている。
記事の一部は朝日新聞社の提供です。