| 科学者のタマゴのつぶやき |
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大学院での研究のこと、中学生時代に興味を持っていたことなどを語ります。
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3/23UP!
ヒトはいろいろなものどうしの関係をみつけるのが好きだ。成功するトレーダーと指の長さの関係、マングローブと環境の関係、熱と時間の関係、などなど過去のサイエンス・ポットの記事を見てもそれはよくわかる。
だけど、関係をみつけるのが好きすぎて、本当は関係がないのに関係があると勘違いしてしまうこともある。いわゆる「迷信」だ。四つ葉のクローバーを見つけるといいことがあるとか、うそっぽいとは思いながらもなんとなく信じられていることって意外と多いのではないだろうか。
いかにも人間臭くて、ヒト特有のものに思える迷信だけど、ハトに対してやったこんな実験がある。箱の中のハトに一定の時間間隔でエサをやると、多くのハトが、どこかをつつく、同じ場所をぐるぐる回るなど何らかの動作をくり返すようになったのだ。その行動をすることと、エサがもらえることとは何の関係もないのに、"まるで関係があると信じているかのように"ずっとその行動をするようになったのだ。
ハトのこの行動が迷信なのかは慎重に考えないといけないけど、ついヒトの迷信と関係付けて考えてしまうのは、やっぱりヒトは関係をみつけるのが好きだからかも。
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3/16UP!
暖かかったり寒かったり、気温がコロコロと変わるこの季節。寒い日には温かいお茶でも飲んで温まりたくなりますよね。寒がりの私は、温かいお茶がずっと温かいままだったらいいのにと思うのですが、どんなに温かいお茶でも時間がたつとどうしても冷めてしまいます。
お茶が冷えてしまうのは、熱がお茶から周りの空気へと逃げていくためですが、温度が高い方(お茶)から低い方(空気)へ熱が流れることは「熱力学第二法則」として150年以上前から知られています。
この法則、かなり昔から知られているものの、なぜ熱の流れる向きが決まっているのかという問題は現代まで大きな謎として残っていました。最近の研究によって謎の一端が明らかにされましたが、そのポイントは、法則通りに熱が流れる確率と逆向きに流れる確率を比べるという、100年以上悩んだ割にはシンプルなものでした。
偉大な物理学者たちを悩ませてきた問題を解く手がかりが、確率を単純に比べるところにあったとは拍子抜けしてしまいそうですが、難しくて手がつかない問題ほどシンプルに考えることが大切なのかもしれませんね。
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3/9UP!
皆さんはマングローブという植物を知っていますか?
熱帯・亜熱帯域の沿岸に生え、根や枝がニョキニョキと変わった形をした樹木です。私は沖縄本島の南西にある石垣島で、マングローブの水環境を調査しています。石垣島はマングローブを両岸に持つ河川が多く、さらにその沖にはアマモやサンゴ礁など美しい生態系が形成されています。
これまでの調査から、複雑な地形を持つマングローブ河川では、土砂をマングローブの根元に蓄え、沖合への過剰流出を防いでいることがわかりました。これは、にごった水を嫌うサンゴ礁などに良い影響を与えていると考えられます。
沖縄地方では近年、農地などから赤土が流れ出すことで、サンゴ礁が土砂に覆われ死滅することが問題となっていました。しかし、マングローブのこのような特徴を他の河川にも応用することができれば、それらの問題を回避できる可能性が出てきました。
生きとし生けるものすべてに必要な水。水は山から川をつたい、海へと流れていきます。陸と海の境界に生育するマングローブの水環境は、このように広い範囲の水域とつながり、互いに影響しあっているのです。
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3/2UP!
インターネットで地図を調べたことがありますか?
地図や航空写真が簡単に表示されるのはもちろんのこと、実際に道を歩いているように写真を表示できたり、江戸時代や明治時代の古地図を見ることができたりと、見ているだけで時間を忘れるほど面白いです。
Google Earthというソフトでは、地球上のあらゆる場所をとてもきれいな衛星画像で見ることができます。私の研究している地球科学の分野ではGoogle
Earth上で、気象や地震、地磁気などいろいろな場所で観測されたデータを表示する試みがなされています。だれにでも見やすい表示ができ、研究者同士の議論もしやすくなることから、これからもGoogle
Earthが使われていくと思います。
最近、Google Earthで海底の地形を見ることができるようになりました。実際に深海に潜ることは限られた人しかできませんが、Google
Earthを使うと簡単に海底旅行を楽しめます。何か新しい発見をすることもできるかもしれません。火星の表面の様子を見ることもできるので、宇宙旅行をしている気分にもなれますよ。
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3/2UP!
「背が高い人は頭がいい」と言ったら「うそだ!」と思われてしまうかも。でも、全国の中学生を集めて身長測定と英語のテストをしたら? 同じ問題なら中1よりも中3の方が有利だし、中1よりも中3の方が平均身長が高い。すると「背が高い人は頭がいい」という結果になる。
このような関係は因果関係(原因と結果の関係)ではなく、相関関係(異なる2つの性質がともなって変わるという関係)と呼ばれる。
男性トレーダー(利益目的で株などを売買する人)のうち、人さし指に比べ薬指が長い人は、そうでない人よりも利益をあげていると報告する論文が先日発表された。指の長さとトレーダーとしての成功という2つの性質が相関関係にあると示されたわけだ。この相関関係を男性ホルモンの量で説明しようとする研究も盛んだ。そうした研究が実を結び、男性ホルモンの量が多いと薬指が長くなり、トレーダーとしての能力も高まることが仮に解明されたとすれば、この相関関係は2つの因果関係として証明されたことになる。
それでも指の長さとトレーダーとしての成功は相関関係のまま。薬指を引っ張って伸ばしたりしないでね。
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3/2UP!
空から舞い落ちる雪を手袋で受け止めると、様々な形の結晶が見られます。その美しさに感動したことのある人も多いのではないでしょうか。
世界で初めて人工的に雪の結晶を作り、結晶の形と気象の関係を明らかにした日本の科学者がいます。北海道で雪と氷の研究をした、中谷宇吉郎博士です。
僕は中学生の頃、石川県片山津にある「中谷宇吉郎 雪の科学館」を訪れました。そこで、中谷宇吉郎の科学に対する考え方に出合いました。自然を忠実に観察することの大切さ。科学は万能ではないこと。それを認識してこそ、新しい分野を切り開くことができ、科学の発展につながること。この時受けた感動が、僕が科学者を志すきっかけになりました。
僕はいま氷の研究をしています。うまくいかないことも多く、悩むこともたくさんあります。そんな時、雪の科学館での気持ちを思い出すことにしています。身近にある不思議に気づき、探求する。すると、いつも思った通りにいくわけではなくて、新しい疑問が生まれることや、偶然にも意外な発見をすることがある。悩むことは新たな発見への手がかりになるのです。
中谷宇吉郎については本もたくさん出ているので、ぜひ読んでみてください。
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3/2UP!
私たち人間の世界の常識では、物の形を調べるには手で触るよりも目で見るほうが効率的である。たとえば、家族の顔なら一目見ればそれと分かるが、目をつぶって顔を触り、その感触をもとに顔を見分けるのは、たとえ家族でも、けっこう難しそうである。
原子間力顕微鏡は、そんな常識に真っ向から立ちむかうロックな顕微鏡だ。この顕微鏡では、見たい物質の表面を非常に細い針でなぞり、表面の凹凸に応じた針の振れを解析することで、物質の形を調べる。まさに、"触って見る"顕微鏡である。
性能はとてもよく、中学校に置いてあるような"目で見る"タイプの顕微鏡(光学顕微鏡)では、どんなにがんばっても100ナノメートル(1ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1)くらいまでしか見られないのに対し、原子間力顕微鏡を使えば0.1ナノメートルくらいまで見ることができる。この高性能はたとえば、タンパク質の一分子レベルでの観察に利用されている。
顕微鏡の世界では、目で見るよりも触って見る方が1000倍もよく物が見えるのである。
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3/2UP!
今から14年前の1月17日に、最大震度7の巨大地震が神戸周辺を襲いました。震災地の高速道路が横倒しになり、ビルが傾いている映像を見て衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。地震の恐ろしさを実感し、被災者の方々を思うと非常に胸が痛みました。日本は非常に地震が多い国です。地震が起こったときのことを身近な人と話し合い、事前に備えておくことが大切ですね。
日常生活にとっては災害以外の何物でもない地震ですが、地球科学の研究においては、重要な役割を持っています。地球の中はどうなっているのだろう、その謎を解明するために地震が使われています。
地震が起きたときに伝わる揺れ(地震波)を観測し、詳しく解析することで地球の中がどのようなものでできているのか、どんな性質をもっているのか、温度や密度を調べることができるのです。
つまり、体の中を調べるX線CTスキャンのように、地震波を使って地球の中をみることができるということです。
地球に関する研究が進み、地震を予知することが出来たら良いのですが、どこでどれくらいの地震がいつ起こるかということをピタリと正確に予知することは、とても難しいようです。
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3/2UP!
科学の研究ってどうやってるんだろう?そういう風に感じたことはないですか。それなら実際に研究者に会って、体験してみるのが一番。実際に学問をつくっている人や、場所の雰囲気を味わってみると、教科書の世界とは違う本物の科学の世界に触れられます。普段の学校の勉強もこれまでとは違った目で見られるかもしれません。
このように、科学者と中学生であるみなさんが一緒になって、科学実験を行ったり、科学技術が作っていく未来について話し合ったりする活動のことを、「アウトリーチ活動」といいます。
今度、僕が大学で企画しているプロジェクトUtoI(東京大学アウトリーチイニシアティブ)で、東京大学で行われているアウトリーチ活動を紹介するホームページを作りました。
このページでは、東京大学の色々な研究者が行う研究室体験や出張授業から、日にち、場所、学問分野などをもとに参加したいイベントを選ぶことができます。特にこれから進路選択をしていく中高生のみなさんが対象のアウトリーチ活動を多く紹介する予定です。デザインも楽しめるようにしたので、ぜひ見てみてください。
UtoIホームページ: http://www.utoi.jp
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3/2UP!
お正月の楽しみといえば、お年玉ですよね。昔のお年玉は、お金ではなくお餅だったそうです。お供え餅を子どもに分け与えたのがお年玉の始まりといわれています。
お餅は、もち米を蒸し、臼ときねでついて作ります。ところが普通のお米(うるち米)をついても、びよよんと伸びるお餅にはなりません。
その秘密は、もち米に含まれるデンプンの成分にあります。デンプンは、α−グルコースとよばれる分子が数千個以上つながった、細長い構造をしています。α−グルコースがまっすぐつながったデンプンをアミロース、枝分かれしながらつながったものをアミロペクチンと呼びます。アミロースは数千個程度、アミロペクチンは数万個以上のα−グルコースからできていて、アミロペクチンの方が長い構造を持っています。
もち米に含まれるデンプンは、ほぼ100%アミロペクチンです。きねでつくと、枝分かれしたアミロペクチン同士が絡まり合い、粘りが出るのです。うるち米には直線状の短いアミロースが含まれているので、絡まりにくく、ついても粘りが出ないのです。
お正月に欠かせない食べ物は、お餅の他にもたくさんあります。正月料理を食べながら、その歴史や科学について考えてみるのはどうでしょう。でもお年玉袋に入っているのは、やっぱりお金がいいですよね。
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3/2UP!
実験動物といえばマウスやラットをイメージする人が多いと思いますが、「線虫」という、まさに字の通りの、虫を使って実験を進めることもあります。実際に、僕も使用していました。
イメージするだけで嫌な人もいると思いますが、線虫はミミズのように胴体が長く、ウニョウニョ動きます。しかし、顕微鏡を使って観察できるぐらいで、体長は約1(ミリ)メートルと小さいです。線虫が他の生物と比べて優れている点は、20℃に置いておくだけでよく飼育が楽、3日で大人になる、体が透明であるため細胞が観察しやすい、神経細胞の数も302個とはっきりしているため神経の研究において扱いやすい、など利点がたくさんあることです。
結局は「虫」なんでしょ?と思う人がいるかもしれませんが、2002年のノーベル医学生理学賞を受賞した3人は、この線虫を使用し、受精卵から細胞分裂し続けてできた一つ一つの細胞が、どの組織になるかを明らかにしました。線虫もヒトと同じく、神経や筋肉、腸などを持っているので、ヒトの発生における研究で参考になります。
正直、僕自身も慣れるまで気持ち悪いと思いましたが、研究者にとって非常にありがたい生物なのです。
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12/27UP!
「DNA鑑定が、犯人逮捕の決め手となった」「DNA鑑定により、親子関係が証明された」など、よくニュースで聞くことはないでしょうか?
生物は、遺伝子の情報から作られるタンパク質を中心にしてできています。その遺伝子情報が含まれているDNAは、A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)という塩基配列で形成されています。この塩基配列の短い組み合わせ、例えばCACACA……やGACGAC……など繰り返し配列(これをマイクロサテライトといいます)がDNAにはたくさん存在していて、A君ではDNAのある一部分のCAリピートが10回、B君では15回のように、繰り返し配列の数に個人差が出る場合があります。個人差が出やすいマイクロサテライトをたくさん利用して、個体を識別するのがDNA鑑定です。子は両親からDNAを受け継ぐので、子と親の繰り返し数は同じになり、これで親子鑑定をします。DNA鑑定は、確率として100%を保障するものではありませんが、99.999……%という高い確率を示すようにされています。
このDNA鑑定は、私たち「ヒト」ばかりではなく、ウシやブタ、ニワトリなどの家畜の品質管理にも利用されています。産地偽装などが問題になる昨今、このDNA鑑定は偽装を暴くうえで大切なものなのです。
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12/27UP!
「正」しいから「正」常なんだ、と思うかもしれないが、簡単にそうも言えない。
最近「うつ」という言葉をよく聞くと思うけど、その「うつ」を例に取ってみよう。みんなはうつにどういうイメージを持っているだろうか。うつでない状態が「ふつう」「正常」で、うつであるときは、気分や考えることがネガティブになっている状態だと思う?
ある意味では、それらはあたっていると言えるだろう。比べれば、抑うつ状態のときのほうが気分は沈んでいるわけだし、多数派のことを「ふつう」「正常」と言うなら、多数派である(とされる)うつじゃない人たちのほうが、「ふつう」で「正常」ということになるだろう。
だけど、抑うつ的な人のほうが判断は正確で、抑うつ的でない人は楽観的すぎて判断が間違っていた、ということを示した心理学の研究がある。ものごとを正確に、つまり「正しく」判断できる、という意味ではうつであるときが「正常」で、楽観的すぎて間違った判断をしている「ふつう」の状態は「正常でない」とも言えるのだ。
冒頭の問いに答えるのは、案外難しい。
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12/27UP!
2008年のノーベル化学賞がオワンクラゲからGFP(緑色蛍光タンパク質)を発見した下村脩先生らに贈られるというニュースはもう知っているよね? GFPという光るタンパク質の発見自体が貴重だけれども、この研究の本当のすばらしさは別のところにある。それは、これまで見えなかった体の中の物質や細胞の動きがGFPを使うことで見えるようになったことだ。
僕自身も生物学の実験にGFPを使っている。僕は体のどの臓器にもなれる万能細胞から、心臓や神経などの細胞に変化させる研究をしているのだけど、万能細胞からある特定の臓器に変化したことを確かめるために、変化させた細胞をマウスの臓器に移植する。GFPで光る万能細胞を使うと、移植された臓器内で光って見えるから、非常に便利だ。もし細胞が適切な臓器に移植されたなら、臓器の一部が光って見える。もし細胞が変化していなかったら、移植されても細胞が死んでしまったりして、光って見えない。
このように、これまで見えなかったものを見えるようにすることは、科学の進歩において非常に重要なことだ。「見える」ことは「わかる」ことの第一歩になる。
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12/27UP!
2007年、日本で初めて天然のダイヤモンドが発見されました。これまでの常識をくつがえす大発見でした。天然のダイヤモンドは、地球の内部100キロメートル以上の深さで作られます。そして、超音速で噴き上がるマグマによって地表にもたらされます。ゆっくりとしたスピードで運ばれてくると、途中で黒鉛に変化してしまうのです。日本の地下には、このようなマグマの動きは存在しないと考えられてきました。
それでは、このダイヤモンドはいったい地球内部のどこで作られ、どうやって地表に運ばれて来たのでしょうか。日本の地下には、今まで考えられなかったようなマントルの動きがあるのかもしれません。
発見されたダイヤモンドは3つだけです。とても貴重な試料なので、研究のために破壊することはできません。そこで、僕が開発した、試料を壊さずに中を調べることができる手法を使うことになりました。
このダイヤモンドの隣には、幸運にも流体の二酸化炭素がありました。この二酸化炭素にレーザーを当てて、重い二酸化炭素(13CO2)と軽い二酸化炭素(12CO2)の割合を調べます。この割合が、地表に届くまでにダイヤモンドがたどった道のりを推定する手がかりになると期待しています。今、測定したデータを解析中ですが、どんな結果が出るかわくわくしています。
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12/27UP!
今年は、ノーベル物理学賞と化学賞を日本人が受賞した。新聞、テレビで大々的に取り上げられるこのニュースを聞いて、理科って、研究って面白そう、と思った人も多いのではないだろうか。
でも、ここで紹介したいのはノーベル賞ではなく、「イグ」ノーベル賞。名前はちょっと違うけど、この賞を受賞した研究をみてみると、ちょっと違う視点から研究するって面白そう、と思えるかもしれない。
イグ・ノーベル賞は、「人々を笑わせ、そして考えさせる」研究に対して贈られる賞だ。今年は例えば、イヌにつくノミのほうがネコにつくノミより高く飛ぶことを発見した人に生物学賞が贈られたりしている。ノーベル賞と比べると力が抜けてしまうような研究だけど、こういう研究をするのも面白そうじゃない?
そして、実はこちらでも今年は日本人が受賞している。北海道大学の中垣俊之さんらのグループが、「脳がない単細胞生物の粘菌でも迷路を解く能力がある」ことを発見したのだ! 他にもまだまだ面白い研究がこの賞を受賞している。ぜひ調べてみてほしい。研究に対するイメージが変わるかも。
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12/27UP!
最近、数学関連のニュースを2つ聞いた。まず、かけ算九九の中で7の段が最も難しいというもの。分かる気がする。中学生の時のこと、私は数学のテストで答案用紙にしたり顔で7分の91と答えを書き、バツをもらった。7も13も苦手だ。私は素数が苦手らしい。
素数とは、1とその数自身以外に正の約数がない、1を除く自然数のこと。7の段が難しい理由の1つは7が1けたの数の中で最大の素数だからだそうだ。
もう1つは、カリフォルニア大学の数学者チームによる史上最大の素数発見のニュース。その素数は約1298万けた。1秒に2けたずつ夜も寝ずに書いていっても75日かかる長さだ。
何にも使えそうにない素数だが、インターネット上で情報が第三者にバレないようにする暗号化技術に利用されている。十分に大きい異なる2つの素数の場合、その2数をかけることは簡単だが、その積からもとの2数に素因数分解するのは非常に難しく時間がかかるという性質を利用している。そういえば、ある団体が1000万けた以上の素数に10万(ド ル)の賞金をかけている。どうせなら賞金額も素数にしてしまえばいいのに。
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12/27UP!
食器や鏡、テレビや携帯電話の画面など身近な物に多く使われているガラスには長い歴史があり、その起源は今から5千年以上もさかのぼります。
製法は古くから知られているものの、ガラスが固まる仕組みは現在でも分かっておらず、これは現代の物理学に残された最大の謎のひとつといわれています。
この謎を解くために色々な方向から研究が進められています。これまでの研究から、ガラスが固まることと、その中の粒子の動きが遅くなることが関係していると分かってきています。一般的に、液体を冷やしていくとある温度より下では原子が規則正しく並んだ結晶になって固まりますが、ガラスの場合は、自由に動き回っていた粒子に渋滞が起こり、身動きが取れなくなって固まるという特徴があります。そのためガラスの構造は不規則で、粒子が自由に動き回る液体に似ています。ガラスは、液体に似ている構造をしていながら硬いという、不思議な状態にあるのです。
ガラスが固まる鍵を握る粒子の渋滞が、いつ、なぜ、どう起きるか。今日も世界中の物理学者がガラスの謎に挑んでいます。
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12/27UP!
ロブスターは大型のザリガニです。皆さんも食べたことがあるかもしれません。ここ10年ほど、アメリカ東海岸に生息するロブスターが病気になりやすくなり、問題になっていたのですが、私たちが日ごろ使うプラスチックが原因かもしれないと、世界で3番目に古いウッズホール海洋研究所の教授が報告しました。ちなみに東大付属の三崎臨海実験所は世界で2番目に古い海洋研究所です。
プラスチックの分解産物であるアルキルフェノールという物質は、内分泌かく乱物質、つまり環境ホルモンです。アルキルフェノールは、脱皮後のロブスターが殻を硬くするために必要な物質と非常によく似た形をしていて、その物質の働きを邪魔して硬い殻を作れなくしているようなのです。柔らかい殻は菌に感染しやすく、その結果病気になってしまうのだとか。
プラスチックは丈夫で長もちなのが特長ですが、その分解産物はもっと長く残るため、環境に与える影響が心配です。環境ホルモンという言葉は流行が終わり、聞くことももうほとんどありませんが、今もじわじわと海の生物を痛めつけているのです。
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12/27UP!
最近、世界最小のヘビがカリブ海の島で発見されました。500円玉の上にとぐろを巻いてくつろげるほど小さいこのヘビのように、未知の生物はまだ世界中にたくさん存在します。私たちに発見されないまま絶滅した生物もきっといるでしょう。
2005年に発見されたキプンジというサルは、すでに絶滅の危機にひんしています。ホッキョクグマも06年にようやく絶滅危惧種に指定されました。
良いニュースもあります。絶滅寸前だと思われていたゴリラが、コンゴ共和国に多数生息していたのです。しかし、居場所が知られると心ない人々に乱獲されてしまうかもしれません。私たちは乱獲者を非難する一方で、便利で楽な生活を求め、暑ければエアコンをつけ、間接的に他の生物の命を脅かしています。暑いのを我慢するのはつらいですが、キプンジはすむ場所が私たちに奪われるのを我慢し、ホッキョクグマは何か月もごはんを我慢しているのです。
地球を守る、それはすなわち、地球上の生物を守るということです。どうすればみんなを守れるのか、自分なりの答えを探し、行動してみませんか。
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12/27UP!
冷たい氷を入れた飲み物がぴったりの季節がやってきました。コップの中の氷は、水に浮いていますよね。これは、氷の密度が液体の水の密度よりも低いからです。
ところが、水に沈む氷を作ることもできます。室温で水に約1万気圧の圧力をかけることで、そのような氷ができます。液体の水と比べて、氷を形成する水分子がぎゅーっと詰まっているため、この氷は密度が高く、水に沈むのです。
氷は宇宙にもたくさん存在していますが、宇宙の氷の中にも、私たちが普段目にする氷と違う氷が存在すると考えられています。例えば、冥王星です。冥王星は氷でできており、表面の温度は約マイナス230度といわれています。さらに、天体の内部は中心に近づくほど圧力が高くなります。最近、冥王星を始めとする氷天体の中に、プラス(+)とマイナス(−)の静電気を帯びた氷が存在する可能性が提唱されました。+と−には互いに引きつけ合う力が生じます。この力によって氷の粒が急速に集まり、今まで考えられていたよりも、惑星が素早く形成された可能性が指摘されています。
このように氷は多くの謎を秘めています。現在、茨城県の東海村に、氷の謎を解き明かすのに最適な世界トップクラスの巨大な施設が建設されているので、これから研究がもっと進むと思います。
宇宙の氷は中性子で調べる
冥王星のような氷でできた天体には、私たちが普段目にする氷と違う氷が存在すると考えられています。これらの氷の中には、惑星形成の鍵を握る氷(プラスとマイナスの静電気を持った氷)が存在すると期待されています。
普通、物質の構造(原子の並び方)を調べるには、レントゲン写真でおなじみのX線が使われます。ところが、水素原子はX線では調べることができません。氷は水素と酸素からできていますが、X線は水素のような軽い原子の位置を調べるのが苦手なのです。水素原子の並び方を調べるには、X線の代わりに中性子を使います。現在、非常に強い中性子を発生する、世界でトップレベルの施設が茨城県の東海村に建設されています。このJ-PARCと呼ばれる巨大な施設を使うことによって、氷の研究が大きく発展することが期待されています。実験室で宇宙の氷と同じ条件の氷を作り、中性子を当てて構造を調べます。
今後、電波望遠鏡などを使った冥王星の直接的な観測も行われる予定です。これらの探査で得られたデータと、J-PARCを使って測定した氷のデータを比較することで、惑星形成の鍵を握る氷の発見をすること、これが僕の目標です。
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7日からの北海道洞爺湖サミットでも議論される地球温暖化、最近は新聞でこの言葉を見ない日はないくらいだ。1992年に国際連合の環境開発会議がブラジルで開催されたころも、いまほどではないにしても温暖化の議論が盛り上がっていた。そのころニュースをまめにチェックするようになっていた中学生のぼくは、地球温暖化をかなり深刻に心配していたと思う。
しかし、当然ながらわかっていないことも多いという。地球が温暖化していて、いちばんの原因が人間活動による二酸化炭素であって、今後も温暖化しつづける、というのがなかなか確実にいえない。
たとえば、世界の温度計は必ずしも理想的な場所になくて、最近は都市化などで温度が高めに出てしまう、つまり実際よりも温暖化が強調される可能性があるだとか、二酸化炭素以外にも空気中のちりや土地利用の変化などの影響も小さくないはずで、二酸化炭素対策だけでは不十分だとかいう意見がある。
そんなふうに環境問題は複雑すぎてよくわからないことだらけだけど、そのひとつの手がかりとして、いまぼくは科学と社会の歴史をひもとき研究しながら考えている。
生態学から成長した「エコ」
1992年の国連環境開発会議のころにはやった言葉が「エコロジー」だった。エコマークができたのもそのころだし、NHKでは「地球SOS それいけコロリン」なんていうアニメ番組もあった。
エコロジーには、いまでこそ環境への配慮とかそのための活動といった意味も含まれるけれども、この意味が登場するのはいまから40年ほど前のこと。もともとは1866年にドイツの生物学者ヘッケルがつくった言葉で、生物一体一体の内側を調べるのではなく、生き物たちとその周りの環境の関係を調べていく学問のこと。日本では「生態学」と翻訳された。
となると、生態学者はやはり野外で研究することが多いから、昔から自然を守ろうとする人たちも少なくなかったのではないか。その、生態学者の自然保護の歴史が、ぼくの研究テーマ。
日本の場合、生態学者が研究者として本気で自然保護に貢献しようとしはじめたのは1959年あたり、戦後の高度経済成長期であるとともに、学問としての生態学の成長の時期でもあることがわかってきた。その背景をいま詳しく分析しているところ。
「エコ」と一言でいっても、考えはじめるとなかなか奥が深いのだ。
リサイクルはどこまでやるか
古紙パルプを40%使っているといわれていた再生紙はがきで、実際の割合は1%から5%ほどだったということが今年1月に発覚した。もちろんうそを表示していたのは問題だけど、この事件はどこまでリサイクルするべきかについて考えさせられる。
ぼく自身、中学のころから学校で毎日配られる紙をみるたびにもったいないなと思っていたけれども、高校の自由研究で古紙を集める会社を見学に行ってみて、古紙の取引価格が動いていることを知った。古紙を集めてもあまり使ってもらえない時期もあったのだ。ちなみに、いまは中国にたくさんの古紙が渡っているという。
調べてみると、江戸時代にも紙の原料として古紙がまぜられていたし、リサイクルが叫ばれる1990年ごろには、段ボールなども含めると、すでに原料の半分以上が古紙だったという。
ぼくが中学生のころに「リサイクル・ビームで解決♪」なんて歌もあったけれども、ただ単にたくさんリサイクルすればいいわけではない。リサイクルのためには運搬や加工でかなりのエネルギーが必要だったり、紙は焼却炉でごみ全体がよく燃えるためにある程度は必要だったり。なかなか厄介な問題なのだ。
自然保護に正解はない
いまぼくは、アメリカ合衆国の東海岸、ボルティモアという街に来ています。ここで1週間、東アジアの科学史についての学会(研究者が発表や討論する会合)に参加しています。ぼくの発表は、生態学者がどのように自然保護に貢献しようとしはじめたかについて。もともと農業や林業に貢献しようとしていた生態学者が、1959年ころから自然を守ろうとしはじめたのです。
しかし、この問題を扱うときに本当に難しいのが、自然保護といったときに、どのような自然を保護するか、ということです。みなさんの住んでいる家は以前は木々が生い茂っていたり草が生えていたところだと思いますが、いま森が生い茂っているところでさえ、昔からずっとその姿だったわけではありません。なので、そこには正しい答えはたぶんありません。いま生きているぼくらが、どんなものを大切にしたいのかという、考え方の問題です。
環境問題は非常に複雑で、なかなか答えの出ないものですが、それに対して人々がどのように取り組もうとしてきたのかをたどることによって、環境問題に対してちょっとしたヒントが得られると思いますし、いまの時代がどんなものなのかということもわかるのではないかと思っています。
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| 足で歩くタンパク質 |
総合文化研究科博士課程・今村謙士
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タンパク質って何だろう?
こう聞くとたいていの人は、栄養素の一つ、と答えるんじゃないだろうか。もちろん間違いじゃない。しかし生物の体の中をのぞいてみれば、「栄養素」のイメージとは程遠い、タンパク質の猛烈な活躍ぶりに気づくだろう。たとえば心臓を拍動させるのも、食べ物を消化するのも、目で光を感知するのも、すべてタンパク質の仕事だ。彼らは生命活動のあらゆる場面で主役として振る舞い、それゆえ「栄養素」という言葉で片付けるにはあまりに精密で、活動的で、賢い。
タンパク質と一口にいっても、様々な種類がある。ヒトは3万2000ものタンパク質を持っているという。僕はその中の一つで、ダイニンと呼ばれるタンパク質の研究をしている。ヒト以外にも多くの生物が持つありふれたタンパク質だが、実に興味深い性質を備えている。それは、歩くことだ。ダイニンは足を2本持ち、人間と同じように二足歩行をするのである。今この時も、君の体内ではダイニンが歩き回っている。そしてそれは、君が生きていく上で欠かせないことなのだ。
細胞内には「首都」と「道」
江戸時代、幕府は江戸を始点とする5つの道、いわゆる五街道を整備した。これらの道は、現在に至るまで物流の大動脈として活躍している。江戸(東京)だけではない。地図を広げてみると、世界中どこでも、首都をはじめ大都市からは道が放射状に延びていることが分かる。
生物の構成単位である細胞、実はこの中にも、人間が作ったのとよく似た流通網が敷かれている。細胞には核という構造があり、ここには遺伝情報を担うDNAがつまっていて、細胞全体の司令塔として働く。いわば細胞における首都だ。一方、道として機能するのは微小管と呼ばれるせんい状のタンパク質で、核のすぐ近くを始点として細胞の端の方へ放射状に延び、これに沿って盛んに物質輸送が行われている。
この物質輸送の担い手こそ、前回紹介した歩くタンパク質、ダイニンである。ダイニンは細胞内の道である微小管の上を歩きながら、いろいろな物質を運んでいく。微小管とダイニンによるこの物流システムは、細胞内に核を中心としたネットワークを形成し、細胞の効率的な活動を助けているのだ。
地道に働く俊足ダイニン
細胞の中で歩きながら物を運ぶタンパク質、ダイニン。とても速足で、1秒間におよそ1マイクロメートル(千分の1ミリメートル)も歩く。え、遅い? いやいやそんなことはない。何といってもダイニンは、大きさが50ナノメートル(2万分の1ミリメートル)しかないのだから。分かりやすいように人間の大きさに引き伸ばして考えてみると、50ナノメートルのダイニンが秒速1マイクロメートルで歩くのは、身長150センチのヒトが時速100(キ ロ)以上で歩くのに相当する。ものすごいスピードだ。それに、そもそも細胞の大きさは普通10〜100(マイクロ)メートルしかないから、秒速1マイクロメートルでも十分仕事ができる。
ただ中には例外的に、とても長い細胞もある。ヒトだと最長で1メートルくらい。そんな細胞ではどうするのか? どうするもこうするもない。千里の道も一歩から。時間はかかっても、秒速1マイクロメートルでこつこつ歩いていくだけだ。芸がないようだが、ダイニンのこの地道な働きがなければ、生物はこんなに長い細胞をとても維持できないだろう。
ダイニンの歩みを追え!
タンパク質「ダイニン」が歩いている様子を観察するには、どうしたらいいだろう?これはなかなか難しい問題だ。ダイニンは大きさが50ナノメートルしかない〔1ナノメートルは1ミリメートルの百万分の1〕。みんなの学校に置いてあるような顕微鏡(光学顕微鏡)では、どんなにがんばっても100ナノメートル程度以上の大きさのものしか見えない。電子顕微鏡とよばれる顕微鏡を使うと、1ナノメートルくらいまで見ることができるが、この顕微鏡の弱点は観察対象を固定しなければならないこと。つまり、ダイニンが歩いているところは観察できない。
この問題が解決したのは、比較的最近になってから。かなり高度な技術がからむが、原理はいたってシンプルだ。ダイニンに見やすい目印をつけることである。例えば、ダイニンに蛍光物質をくっつけて光学顕微鏡で観察すれば、光の動きを追うことでダイニンの動きを知ることができる。
この方法によって、ダイニンが8ナノメートルの歩幅で一歩ずつ進んでいく様子が観察されている。50ナノメートルのタンパク質が本当に歩いていることを実感させられる、ちょっと感動的な実験だ。
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体のはじまりの話。最初はただ1個の目に見えない大きさの細胞。それが2つに分かれ、4つ、8つと分裂して増えていく。そうなるとただの塊から、中に穴の開いたサッカーボールみたいな形になる。このサッカーボールの外側にある細胞は将来、胎盤という組織になって、赤ちゃんを守る役割を果たす。その内側にちっちゃな細胞たちがいて、体の全部を作る。
研究者たちは、この細胞を実験室で増やすことに成功した。これがES細胞だ。ES細胞は、神経やら筋肉やら心臓やら体の組織なら何にでも変身できるすごい能力をもっている。だから、研究者たちはこの細胞に夢中になった。
でも、ES細胞は研究者の言うことをなかなか聞いてくれない暴れん坊だ。ちゃんと扱ってやらないと、勝手に別の細胞に変身して、その能力を失ってしまう。体の中に移植しても、正しい組織にならずにでたらめな組織になってしまう。
ES細胞を飼いならせ!
研究者は暴れん坊のES細胞を何とか飼いならそうとしている。僕たちの研究室では、すい臓の細胞をマウスのES細胞から変身させることに成功した。すい臓には、糖尿病になるのを防ぐインスリンを分泌する機能がある。ES細胞からすい臓を作って移植できたら、糖尿病を根本的に治療できるかもしれない。
僕たちの方法では、まずES細胞の塊を作ることで、自分から変身できるようにする。そこにES細胞を操る「アメ」と「ムチ」になる物質を加える。「アメ」はES細胞が生きて増えるための栄養だ。「ムチ」はある種類の細胞だけに変身させるための特別な物質だ。
この「アメ」と「ムチ」がないと、細胞はでたらめな細胞になったり、死んでしまったりする。試行錯誤を繰り返して、一部の細胞をすい臓にすることができた。治療に使えるようなすい臓を作ることができるのはまだまだ遠い話だけど、なんとか実現させたい。
君の中にもいる幹細胞
色々な種類に変身できる細胞を、花や葉を生み出す木の幹に例えて「幹細胞」という。何でもなれるES細胞ほどじゃないけど、すごい能力の幹細胞が実は僕らの体の中にもいる。
その1つが造血幹細胞だ。この細胞は名前の通り血液の細胞を生み出していて、毎日の生活に必要な血液を作るために頑張っている働き者だ。でも、この細胞がおかしくなって、白血球という細胞ばかりを作ってしまうことがある。この病気を白血病という。
逆になまけ者の幹細胞もいる。神経幹細胞はその一つだ。昔は、大人になってしまうと神経細胞は増えないと考えられていた。でも、最近の研究で脳にはこの神経幹細胞があって、傷などを受けると新たな神経細胞を生み出すことがわかってきた。なまけ者だけど、いざというときにはすごい力を発揮する幹細胞だ。
ここで紹介したのはほんの一部で、たくさんの個性豊かな幹細胞たちが僕たちの中にいる。
幹細胞で治す「再生医療」
幹細胞を使って、傷ついた体の組織を再生することができたら、きっともっと多くの人が救えるに違いない。そんな「再生医療」が実現に向けて動き出している。
すでに実施されている例として、白血病の骨髄移植がある。他人の骨髄の中にある造血幹細胞を移植する治療法だ。最近では、患者さん本人に残っている正常な造血幹細胞を移植することも研究されている。また、ひどいやけどなどで傷ついた皮膚を、他の部分の皮膚の細胞を増やした後に移植する治療法も実現している。その他にも体の色々な部分で再生医療に向けての研究が進んでいる。
でも、まだまだ医療に実現可能な組織は少なくて、研究者は暴れん坊のES細胞やなまけ者の神経幹細胞を飼いならそうと頑張っている最中だ。中学生のみんなが大学生になる頃にはもっと多くの組織の再生医療が実現していて、この研究分野はもっと盛んになっているだろう。
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ダイヤモンドと聞いて、どんなものを想像しますか? 婚約指輪に用いられるようなキラキラと輝く宝石を想像する人が多いのではないでしょうか。
実は、ダイヤモンドには宝石としての価値だけでなく、地球内部の研究対象としても高い価値があります。地表から150キロメートル以上も深い、温度と圧力が非常に高い地球深部でダイヤモンドは成長します。その際に、周囲の地球深部物質を内部に取り込むことがよくあります。地面を掘ることでは到達できないくらい深い所の物質を、火山の噴火とともにダイヤモンドが地表へと運んできてくれるのです。
現在報告されている最も深い所(地下660キロメートルよりも深い下部マントル)の物質も、ダイヤモンド中から見つかっています。内部に不純物を取り込んだダイヤモンドは、見た目が汚いので宝石としての価値は低いですが、地球深部を研究する私たちにとっては、そちらのほうが貴重です。
硬いダイヤで高圧環境を再現
地球内部は、地表とは異なり温度と圧力がとても高いです。非常に硬い物質として知られているダイヤモンドを使って、地球深部と同程度の圧力を再現し、その環境で物質がどのようになっているかを調べることができます。特別な形にカットされた2つのダイヤモンドで岩石などの試料をはさみ、試料を押し付けるように力を加えることで、高い圧力をかけることができます。ダイヤモンドアンビルと呼ばれる、手のひらにのるほどの小さい装置です。300万気圧(地球の外核に相当する圧力)以上の高圧発生に成功したという報告もあります。
地球のとても深い所には実際に試料を取りに行くことが出来ないので、実験室で地球内部の環境を再現しています。ダイヤモンドは透明なので、顕微鏡を使うと高い圧力のかかっている試料を目で見ることができます。ダイヤモンドには地球内部を見る窓の役割もあるのです。
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中学生のとき、夏休みの自由研究で大好きなチョコレートについて調べました。チョコレートの起源は紀元前2千年、古代メキシコのショコラトルという苦い飲み物にまでさかのぼります。「神の食べ物」として価値が高く、薬用や儀式で使われたと知って驚きました。
そこで当時のショコラトルを、工場見学でもらったカカオ豆を使って再現することにしました。カカオ豆を乾煎りし、はじけたら皮をむき、すりばちで20分程すりつぶします。徐々に油が出て、ペースト状になったらバニラエッセンスやシナモン、唐辛子を加えてさらに練ります。味は苦いココア、においはチョコレートです。ペースト状のカカオをお湯にとかし、刻んだ干しトウモロコシ入りの温かいミルクを加え、できあがりです。まさにチョコレートの語源「苦い水」のとおり、薬のような味でした。古代のチョコレートを味わっていると思うと、タイムスリップしたようなわくわく感を覚えました。
チョコの効能、科学で解明
16世紀、薬として中米からヨーロッパに伝わった古代の飲むチョコレートは、砂糖を入れるとおいしいので大流行し、19世紀に現在のかじるチョコレートが誕生しました。
チョコレートが口の中でとろけるのは、カカオバターの融点が体温より数度低いからです。もし、1、2度でも高いと口の中でとけにくくしつこい味に、低いと室温でべたべたします。不思議ですね。
古代は薬であったチョコレートですが、最近になって効能や味わいの科学的裏付けが明らかになってきました。カカオ豆には脂肪や食物繊維、ミネラル、ポリフェノールが豊富に含まれています。ポリフェノールは苦み・渋みの成分ですが、様々な病気(がん、動脈硬化、胃潰瘍など)の原因にもなる活性酸素の働きを防ぐ作用があるとされているのです。
このように自然界には効能のある植物なども多く、その秘密を科学的に研究するのは面白いです。みんなの身近にも面白い研究対象があるかもしれませんね。
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私たちの身の回りにある薬、いまでは日々の生活に欠かせなくなりました。「新しい薬」が開発されると、これまでの医療が一新することがあります。不治の病だった結核が、いまや薬を飲めば治ります。頭痛や腹痛になると家の薬箱を持ち出しますが、迷信に頼っていた昔の人にとって、この箱は、さながら「魔法の箱」に見えるでしょう。
私は東大薬学部で、「新しい薬」を作る研究をしています。薬を飲むと、体の中でなにが起きるの? 副作用は? どのくらい飲めばいい? 知識を総動員して、いろいろな側面から考えます。私もみなさんのように、中学校で方程式を解き、化学式を学び、生物の体、英語の文法を勉強しました。振り返ってみると、それらの知識が私の土台になっているようです。実際にどのようにして「薬」という目標に挑んでいるのか、紹介していきます。
タミフル化学合成に成功
およそ1年半前、私の所属する柴崎正勝・研究室では、抗インフルエンザ薬=タミフルを石油原料から作ることに成功しました。これまでタミフルは植物を原料に作っていましたが、これでは生産量が天候などの影響を受けるため、必要なときに「タミフルが足りない!」となりかねません。継続的に産出する石油を原料にすることで、タミフルの安定供給へ道が開かれたわけです。
タミフルの合成は、いまから20年近く前に開発された化学反応に始まります。まだ私は生まれたばかり。それから100人以上の化学者の手をわたり今回の成果につながったと思うと、感慨深いものがあります。
自分たちの研究が医薬品へと結びついた喜びは、薬学部ならではのもの。言葉では表現できません。タミフルが完成した日、ささやかなお祝い会が開かれました。みんな笑顔の記念写真は、私たち研究者にとって、かけがえのない1枚です。
大学研究者としての使命
マラリアという感染症を知っているでしょうか。熱帯地方の病気なので日本ではあまり耳にしませんが、世界三大感染症の一つで、毎年3億〜5億人の人が感染しています。発展途上国では、多くの子どもがこの病気で命を落としており、一刻も早い特効薬の開発が望まれています。
しかし残念なことに、製薬企業はマラリア治療薬を開発することに乗り気ではありません。発展途上国は金銭的に貧しく、薬をなかなか買えないからです。「もうからないなら作らない」という構図が、本当に薬が必要なところに、薬が届かない悪循環を生み出しています。
このような「企業の穴」を埋められるのが、会社の外にいる大学の研究者だと思います。私はいま、マラリアの治療薬を作る研究をしています。この研究を通してマラリアの特効薬を見つけ、多くの子どもの命が救われれば、研究者として思い残すことはありません。
研究の原動力は「感動」
「なんで研究者になったの?」、私はこの質問をよく受けます。それに対する答えはただ一つ、「人類の英知に対する感動」です。
想像してみましょう。いまは5000年前。身の回りには不思議なことがたくさんあります。なんで昼夜が周期的に来るの? なんで夜空にはたくさんの星が浮かんでいるの? そんな右も左も分からない状態から、私たちは言葉や数字を作り、文明を築き、長い年月をかけて自然界の法則を解明し、いまに至っているのです。みなさんが学校で使う教科書――その裏に何千年もの時間が流れていると考えると、なんだか壮大な気持ちになってきませんか?
研究室を一歩外に出ると、車が道路を走り、飛行機が空を横切ります。当たり前のこの光景が、はるか昔に思いをはせると「感動」に変わるのです。脈々と積み重ねられた人類の英知、そこに自分の足跡を残すべく今日も研究を行います。
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あなたはキルナという町を知っているだろうか。キルナは、スウェーデン北部、北極圏内に位置し、宇宙研究最前線の町として知られる。僕はこの2月から、宇宙工学を学ぶためにこの町にやってきた。しかし、なぜこの北の町が宇宙研究にとって重要なのだろうか。
その一つの理由はオーロラ。上空の闇にうかぶ緑の揺らめき、3月までは僕も頻繁に見た。何もないと思われる宇宙も、太陽からのプラズマで満たされている。その一部は地球の磁場に捉えられ、磁力線に沿って、南北の極域に運ばれる。そこで大気と反応してオーロラが発生する。オーロラを研究することで、地球の大気・磁場が、宇宙のプラズマといかに相互作用をしているかがわかる。
地球は、無の宇宙に浮かんでいるわけではなく、ダイナミックな宇宙の流れにさらされていることが、ここでは実感できる。
宇宙を見つめる北極の「猫」
オーロラのように、極域の地球大気では太陽や宇宙の影響を受けた興味深い自然現象が数多く発生している。これらを観測するため、キルナをはじめとした北極圏の4つの都市に、直径30(メートル)もの巨大アンテナを持つレーダーが設置されている。これは欧州非干渉レーダーEISCAT(アイスキャット)と呼ばれる。雪の中、宇宙を鋭く見つめる猫を想像させる名前ではないだろうか。
EISCATでは、地上波テレビにも使われるUHF帯の電磁波を上空に照射する。上空には太陽や磁場の影響を受けたプラズマ状態の荷電粒子が存在し、散乱されたごくわずかな電波を再び地上で受信する。この電波を調べることで、大気の状態(電子密度、温度、風速など)を観測し、太陽活動や地球磁気圏の様子まで推定することができる。EISCATでは、地球から宇宙につながる糸口を調べることができる。
宇宙研究に大地と空と
キルナは、スカンジナビア半島北部、ラップランドと呼ばれる広大な地域に位置する。極域の厳しい自然に囲まれたラップランドには、山や氷河・森林が広がり、人はほとんど住んでいない。広大な大地とはるかに続く空。実は、これが宇宙の研究に欠かせない要素の一つでもある。
宇宙研究に伴う観測ロケット・気球の打ち上げは、事故や騒音、落下後の回収など、人が多く住む場所では不都合な場合が多い。ここキルナには、市街から東に40キロメートルの場所にエスレンジという打ち上げ基地があるが、その北方はノルウェーとの国境まで、愛媛県の広さに匹敵する無人の区域がある。そのおかげで、小型ロケット・観測気球の打ち上げなどの実験が、都市や人間・航空機を危険にさらすことなく自由に行われている。
同時に、キルナは鉄道・航空便が整備されており、施設維持やアクセスが容易である。全く人がいない南極での研究と比べると格段にコストが安いのだ。
飛行機で作る「無重力」
エスレンジでは、その広大な場所を利用した無重力実験も行われている。ジェットコースターで一瞬体が浮く感覚を覚えている人も多いだろう。同様に、飛行機を上下に波打つように飛ばし、下降中に機内に無重力状態を作る。無重力状態では物質に重さがなく、異なる物質を極限まで均一に混合でき、新材料・新薬開発の助けとなる。また、生物への重力の影響を解明し、生命の起源に迫るなど、あらゆる科学分野の研究に役立つ。
キルナは宇宙開発に欠かせないあらゆる要素を同時に兼ね備えた、たぐいまれな都市である。興味深い自然現象、広大な空と大地、そして利便性の良い交通アクセス。各分野で日本との関係も深く、日本人研究者も数多く訪れている。もちろん、オーロラや白夜を求めて訪れる日本人観光客も多い。みなさんも一度、宇宙を身近に感じる旅に、キルナを訪れてみてはどうだろうか。
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マントルの岩石に含まれる鉱物
(薄緑色はカンラン石; 一辺2ミリ)
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私たちの足元に存在する、地球。その内部にどのような世界が広がっているか想像したことはありますか?
地球の半径は約6400キロメートルで、内側から核、マントル、地殻の3つの部分に分けられます。このうちマントルは、地表から数十キロ〜2900キロの深さに存在し、地球の全体積の約8割を占めています。
地球温暖化で注目を集めている二酸化炭素(CO2)は、実は地球深部とも深くかかわっています。マントルにはCO2が存在しており、火山活動などを通じて地表に放出され続けているのです。これらのCO2は、一体どこからやってくるのでしょうか。地球温暖化について考える上でも、地球内部で物質がどのように循環しているかを探る上でも、マントルに存在するCO2は重要な鍵を握っているのです。私はこのCO2に注目して、地球の内部の謎を探る研究を行っています。
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| 地球内部の岩石(横約4ミリ) |
地球深部の岩石は宝石の塊
地球深部のマントルを研究するには、直接マントルを調べるのが確実ですが、地面を掘ってマントル物質を手に入れるには高度な技術と膨大なお金が必要です。そこで、火山からマグマと一緒に噴出した、マントルの岩石のカケラを採取します。
マグマの粘り気と上昇速度の条件がそろった火山だけが、マントルのカケラを地表に運ぶことができます。日本は活発な火山の多い国ですが、採取できるのは秋田県の一の目潟など十数か所に限られています。
マントルの岩石は、緑色のカンラン石、薄茶色の斜方輝石、赤色のざくろ石など、色とりどりの鉱物でできています。顕微鏡で観察していると、万華鏡をのぞいている気分です。鉱物の中には二酸化炭素が閉じ込められていることがあります。この二酸化炭素を分析することで、岩石がどこからやってきたのかを探ることができるのです。
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| 中に含まれている、二酸化炭素
(一つ一つは約5マイクロメートル) |
CO2分析で「起源」を推定
地球深部の岩石中に含まれる二酸化炭素は、どのように分析されるのでしょうか。そしてどんな情報を教えてくれるのでしょうか。
炭素には、重い炭素(13C)と軽い炭素(12C)が存在します。食物連鎖の一番下に位置する植物は、光合成の際に軽い12CO2を優先的に取り込みます。そのため植物を食べる動物も、その動物を食べる動物も、軽い12Cを多く体内に取り込むことになります。地球内部の岩石に含まれるCO2を分析して軽い12CO2に富んでいたら、生物が多く存在したところからやってきた岩石であると推定できます。
一般的には、岩石の塊を砕き、含まれるCO2を抽出して分析されます。しかし、砕いてしまうと同じ岩石は二度と手に入りません。CO2以外の分析をすることもできなくなってしまいます。そこで私は、CO2にレーザー光を照射することで、岩石を砕かずに、しかも数百分の1ミリの局所分析が可能な、新しい手法の開発を行いました。
簡単に解けない謎の面白さ
新しい手法や様々な分析法を使うことで、地球内部を含めた地球上での二酸化炭素(CO2)の循環について研究が行われています。温暖化についてはどんなことが分かるのでしょう。
地球の内部に沈み込んだサンゴ礁や動物の死骸がCO2になり、地球内部から放出されているとします。この場合、放出されるCO2と同じ量に相当する炭素が地球内部に入り込んでいくので、温暖化にはほとんど影響を与えません。しかし、もともと地球の内部に存在していたCO2が地表に放出されているとしたら、どうでしょう。CO2は放出される一方で、温暖化に影響を与えることになります。
地球内部のCO2がどれだけ温暖化に影響を与えているのか、はっきりしたことは分かっていません。答えを出すのに必要な試料やデータが、不足しているのです。簡単には解けない謎に迫る面白さを感じながら、研究を続ける毎日です。
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僕は「枝ぶり」マニアだ。鉱物や雪の結晶、生体内の血管や、植物の枝や根や葉脈の広がり、地面の亀裂、地中のアリの巣、河川の枝分かれ、果ては宇宙の大銀河構造まで、自然界ではあらゆるスケールにおいて美しい「枝ぶり」を発見できる。
お気に入りのクスノキをじいっと見上げていると、枝ぶりの美しさに感じ入り鳥肌が立ってゾクゾクしてくる。なぜこんなにも僕は「枝ぶり」に夢中になってしまうのか。
直感的に思うのは、自然界における偶然と必然のダイナミクスの結果として生まれた「枝ぶり」には、まさに「時間」が刻まれているように感じられるせいかもしれない、ということ。とすると、アンティークや遺跡などの古いものに人が夢中になるのと似たような仕組みかな。
実は僕は「枝ぶり」以前に、「存在」というものがずっと気になっていた。「存在」ってなんだろう。
ハイデガーという偉い哲学者が『存在と時間』という著書をのこしたほどなので、どうやら存在と時間は深い関係にあるようだ。広大な宇宙の中に地球が存在して、その上にちっぽけだけど切実な「私」が「存在」するということ。別に「存在」のない世界でもいいわけなのに、なぜこの世には「存在」があるの?
こうやってうじうじ考えている僕の認識の中枢は、千億個もの神経細胞が複雑につながりあった脳なんだ。世界のさまざまな美しい「枝ぶり」を認識できるのも、脳のネットワークを「枝ぶり」が支えているからなんだと思ったりすると、なぜかゾクゾク感が増幅するんだよね。
僕はヒトの脳が構造の中に「美」を見いだすメカニズムに興味がある。だけど、そもそも「美」の本質ってなんだろうね。「存在」や「美」といった世界の根本的な部分に、「枝ぶり」からつながっていく感じも、また気持ちいいのです。
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不思議な森、マングローブ
自然と共生する知恵探りたい |
東大院生・かずみ
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海と陸のはざまにひっそりと茂る森。それがマングローブです。普段私たちが目にする植物の多くは、海水に浸ると死んでしまいます。ところがマングローブの木は、海水の浸る場所でも悠然と生えています。
マングローブの不思議はそれだけではありません。普通の木々と違って、板状の大きな根を持っていたり、タケノコのように地面から上に突き出た根を持ち、そこで呼吸をしたりします。さらには、倒れ掛かった自分の体を支えるかのように、新しい根を枝から生やす木もあるのです。これらの特徴は、波で土砂がさらわれやすい沿岸に生えるマングローブが、独自に生み出した防衛手段なのかもしれません。
私は熱帯の海の中に生える森、マングローブを研究しています。潮が引いた時マングローブ林の中を歩くと、足元の柔らかな土で全身泥だらけになります。ひざまで埋まった足を引き抜いていると、傍らで小さな水音が聞こえてきます。トビハゼが驚いて逃げていく音です。私はそこへ行くといつも、人が自然の一部であることを思い起こさせられます。
私たちの多くは、エアコンなどの電化製品やスーパーで買う食べ物など、人工的な物に囲まれて暮らしています。すると時々、人が自然の恵みを受けて生きていることを忘れてしまいます。
自然は私たちにとって資源の源であり、知恵の宝庫でもあります。人が自然を破壊しすぎることなく、継続的に共生するにはどうすればよいか? そのヒントを探し出すため、研究を続けています。
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イノシシにも「つむじ」がある。友達がそんな発見をしたのは、今年の正月のこと。科学館に展示してあるイノシシの剥製を見ていたときだった。確かによくよく見てみると、首の後ろに小さな渦がある。その中心が、いわゆる「つむじ」だ。「つむじ」といえば、人間の頭にだけあるものだと思っていた。それがイノシシにもあるというのだから、ちょっとした驚きだ。
実は理論的には、誰の髪の毛にも、そしてどんな動物の毛にも、「つむじ」が存在するのだという。これは数学的に証明でき、「不動点定理」という名前までついているそうだ。何げなく見過ごしてしまうものでも、よく見てみると何かしら発見がある。そしてその奥に、もっと大きな真実が見つかることがある。今年はまだ10か月以上残っている。これからどんな発見があるか楽しみだ。
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輸血するわけでもないのに人の血液型を聞いてきて、揚げ句の果てやっぱりだのそうは見えないだの、こういうところが何型っぽいだの論評する人が後を絶たない。血液型性格診断という科学的に根拠のない迷信が広まっていることにもうんざりするが、なにより気になるのは、何型の性格というように「型」にはめて人を判断する人があまりにも多いことだ。
人の性格なんて複雑で、一言で語れるものじゃない。だからこそ魅力が生まれ、一人一人の個性が出てくる。「型」で人を見ると、その人のいいところをたくさん見逃すことにもなってもったいない。だから僕は血液型を聞かないし教えない。そんな「型」にはめられたくないからだ。
なんてことを言っていると、理屈っぽいからA型でしょなんて言うヤツがいて、ますますうんざりしてくるのだ。
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日本の大学院生は、夜も休日も勉強に研究に忙しいことが多い。そのため、特に遠方からの学生は、実家に帰るのは盆正月程度となってしまう。中には何年も帰っていない人もいる。
でも、ドイツにいると、みんな頻繁に実家に戻り家族と過ごす。車で何時間かけても、月に1、2回は実家に帰る。ドイツ人は、家族との時間を大切にする人たちなのだ。
しかし、日本では仕事をし始めるとなかなか休日が取れないのも確か。だからこそ、家族との時間が少しでもある若いうちに、その時間を大切にしよう。悩んでいること、楽しいこと、つらいこと、家族と話をすることで、きっとみんなの心が豊かになる。
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僕の留学先・ドイツから日本を見ると、日本の意外な一面を見ることができる。
みんなは「勉強や部活に追われて時間がない」と思うことがあるだろう。日本は学校も会社も忙しい。でも、考え方を変えてみよう。学校や会社に集中できるのはなぜだろう。日曜日も深夜も開いているコンビニ、時間に正確な鉄道、即席でもおいしい食品、お客をわずらわせないサービス、すべてがみんなの時間を節約してくれる。
ドイツではこれらはすべて逆。日曜日は店も大学も休みでバスも激減。実は、日本は時間をとても節約できる時間大国だ。その時間を使って、勉強や仕事に取り組める。みんなも、この恵まれた時間に感謝し、勉強に部活に遊びに精いっぱい挑戦しよう。
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みなさんは、どのような将来の夢を持っていますか。夢に向け歩んでいくことは、とても気持ちがいいものです。
夢を持つとき、いろんな「時間軸」で考えてみましょう。「総理大臣になる」のような壮大な夢と一緒に、高校の生徒会長になる・○○大学に入るなど、手の届きそうな夢です。そのような身近な夢を、私たちは「目標」と呼びます。
目標は夢への「道しるべ」――。一歩一歩、踏みしめていくと、遠くにあった「夢」は、手の届く「目標」になります。そして視野が広がると、夢の向こうに、新しい夢が見えてくるかもしれません。
私の夢は「発展途上国で苦しむ人々に、たくさんの薬を供給すること」です。その夢をかなえるべく、もうすぐ製薬企業に就職します。いつの日か夢が現実になる日を目指して、一歩ずつ……。
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毎日、生活をしていると、いろいろな問題にぶつかると思います。勉強や部活、友達のことから恋の悩みまで。そういうとき、皆さんはどうやって問題を解決していますか? 私のお勧めは「人とおしゃべりをすること」です。
問題を抱えていると、どうしても気分がふさぎがち。だけど、人としゃべることで気分も晴れ晴れとし、肩の力が抜けてきます。よい解決法とは、案外、そういうときに浮かんできます。
そしてなにより、人としゃべることで別の「価値観」が味わえます。自分とはまったく違う発想に、「そういう考えもあるのか」と。周りに耳を傾けることで、自分の考えも固まってくるものです。
悩んでるときはつらくても、それは新しい自分を見つけるチャンスです。とことんまで悩んでみてはどうでしょう。
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空が青いのはなぜだろう。子どものような質問だが、科学を学ぶと「なぜ」の答えが分かってくる。
太陽の光は、赤や青などさまざまな色が混じっている。このうち青い光は、空気によって散乱しやすい性質がある。だから目に映る空の色は青いのだ。一方、散乱されない赤い光だけが、大気をくぐり抜けてやってくるのが夕焼けだ。
この説明を聞いたとき、僕はあることに気がついた。太陽の光が赤や青に分かれるなんて、まるで虹みたいだ。もちろん屈折による虹と原理は違うが、光を色ごとに分けるという点では同じだ。それならば、昼間の僕らは虹の青い色の中にいるようなもの。夕焼けに染まるころは、きっと赤い部分にいるのだろう。
僕らは虹の中にいる! こうやって世界が今までと違って見えたときが、科学を学んで一番うれしいことなのだ。
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私は米国の中学高校を卒業しました。米国の生徒は、皆さんとは全く違う価値観の中で生活しています。
ここでは米国での学校生活と、理科の授業について紹介します。
米国の中学高校では、時間割りを自分で決めます。英語はお気に入りの先生の授業をとろう、理科が好きだから今年は生物と化学を両方とろう、など。理科は物理・生物・化学以外に、天文学や解剖学もあります。自由で楽しそう? でも授業はとってもハードです。
教科書は1000ページもあって、持ち歩くのも一苦労。それを1年でやるのですから! 膨大な量の宿題と格闘する日々です。しかも宿題の多くは、みなさんが想像するものとかなり違います。
米国の授業では、プロジェクトとよばれるものが多く課されます。これは、グループもしくは個人でやる、少し大掛かりな宿題です。
たとえば、「DNAの二重らせんの模型を作る」。ホームセンターで好きな材料を購入してきて、DNAを作ります。そのほか、「2人で遺伝病について調べて、遺伝カウンセラーと患者になりきって発表」や、「光を当てるとものが動くしかけを作る」なんていうものも。プロジェクトが重なると、平均睡眠時間が5時間以下になるくらい、大変です。
私はプロジェクトの嵐を真剣にこなすうちに、研究者になるという目標を得ました。みなさんも、忙しいなかでも学校の授業に真剣に向き合って学んでいると、将来の夢が簡単に見つかるかもしれませんよ。
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(1)体育祭や文化祭でもりあがる!(2)部活をがんばる!(3)高校生クイズにでる!!! 小学生のときからテレビのクイズ番組や謎解きの本が大好きだった僕にとって、高校生クイズは憧れでした。中学校の図書室には以前の大会の問題が載っている本があったので、しょっちゅう借りて「勉強」していました。そして毎年、夏の終わりのテレビ放送が「模擬試験」です。頭の中で高校生と早押しクイズを競って、特訓です。
都道府県代表としてテレビに出るには、高校野球と同じように、まずは地方予選を勝ち抜かなければなりません。僕の高校があった関東地方の予選は、埼玉県の西武ドームでおこなわれました。初めは○×クイズです。○だと思えば左の応援席に、×だと思えば右の応援席に入り、正解するとグラウンドに降りることができるのです。パソコンや携帯電話などを持ちこんで調べてもよいことになっていたのですが、僕も一緒に行った友達2人も当時はパソコンも携帯電話も持っていません。そこで、僕はあの重くて分厚い「広辞苑」を持っていきました。
激動の20世紀を見続けてきた国会議事堂。その高さは、「西武ドーム」とほぼ同じですが、1936年完成当時、日本一高い建築物だった。
【○か×か?】
んー、国会議事堂の高さも、西武ドームの高さも広辞苑には載ってないぞ。東京タワーができたのは戦後だしなぁ……。
結局、何の確信も持てないまま応援席へ入ることになりました。中に入ってからも、やっぱりあっちだったかなぁ、いや絶対こっちだよ、とドキドキです。そして、正解の発表。「まーる、まーるっ!」、「ばーつ、ばーつっ!」。大声で叫びながら、答えを待ちます。
結果は……、残念ながらグラウンドに降りることはできませんでした。楽しみにしていた早押しクイズは夢のまた夢です。けれども、高校生クイズはお祭りです。友達と3人組をつくって、わいわい楽しく参加できたことはとても良い思い出になっています。
今でも毎年、高校生クイズを楽しく見ています。特に去年(2005年)は母校が優勝したので、まるで自分のことのように喜んでしまいました。みなさんも高校生になったらぜひチャレンジしてみてくださいね。
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『ソフィーの世界』という本を知っていますか? 紀元前から最近までの「哲学」が、物語のかたちでまとめられた本です。
その冒頭に、「パパが飛ぶ」シーンが出てきます。ママはこれを見て、驚きのあまり腰を抜かしてしまいますが、物心ついたばかりの息子は「パパは飛べるんだ!」と尊敬のまなざしです。
私たちならどうでしょう。周りの人が急に空を飛びだしたら、なにかトリックを使っていると思うか、さもなければ、ママと同じく、驚いて声が出せないに違いありません。息子のように「人間は空を飛べるんだ!」と考えられるほど、頭は柔らかくありません。
人間は鳥のように空を飛べない――このような「絶対のこと」の多くを、私たちは教科書から学びます。「抵抗×電流=電圧(オームの法則)」「0で割り算をすることはできない」「三人称単数現在の動詞にはsがつく」など。たくさんのことを覚え、これからも覚えていきます。
しかし、ときにはその歩みを止めて、「絶対のこと」を疑うことが大事だと思います。
たとえばヨードデンプン反応。でんぷんがあると青紫色に変色すると習いました。じゃがいもの切断面が青紫色に染まっている絵を思い出す人もいるでしょう。でも、そこでもう半歩進んで、
「なんでデンプンがあると、青紫色に変色するの?」
「なんで赤や黄色でなく、青紫色なの?」
「そもそも色がつくっていうのは、どういうことが起こっているの?」
と考えてみましょう。
皆さんは驚くかもしれませんが、こうして踏み出した半歩先には、世界中の研究者が、いまなお研究しているテーマがたくさんあるのです。
教科書の知識とは、覚えるものでなく、本当はそれを使って何かを考えるものです。そのときのためにも、日頃から半歩先に踏み込み、「ものを考える」癖をつけてみてはどうでしょうか。
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| 図1:超小型衛星
サイ5 |
2005年10月27日、モスクワの北方約800km、ロシア連邦プレセツク宇宙基地より8機の人工衛星が打ち上げられた。8機の衛星は、英国、中国、ロシア、欧州、ドイツ、ノルウェー、日本が作った人工衛星であり、これらがロシアのKosmos-3Mロケット1機に搭載され、同時に打ち上げられた。
この中には東京大学の学生が製作した超小型人工衛星、XI-V「サイ5」も含まれている。サイ5は、一辺10cm立方、重さ1kgであり、手の平に乗る超小型衛星である。打ち上げ以降、サイ5は宇宙で何十枚もの写真撮影に成功し、大きな成果を挙げている。
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| 図2:衛星撮影画像 |
私は大学4年生(2001年)から航空宇宙工学専攻の中須賀研究室に在籍し、人工衛星の開発に関わってきた。当初は、知識も経験もない自分達が人工衛星を打ち上げることなど想像もつかなかったが、実際に打ち上げ、成功させ、成果をだしていることに、私自身も非常に驚いている。
そして、この研究を広く一般に理解してもらえるよう、誰でも参加できる試みが行われている。例えば、沢山の人から集めた宇宙へのメッセージをマイクロフィルムに焼き付け、衛星に取り付けて宇宙に打ち上げたり、衛星による撮影画像を携帯電話やパソコンにメール配信する「さいめーるサービス」を行なったりしている。宇宙を身近に感じ、宇宙開発への理解を深めてもらいたい。それが私たちの願いだ。
もしよろしければ、【東京大学中須賀研究室 さいめーるステーション】(http://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/ximail/top.html)を訪問し、あなたの携帯電話の壁紙を、美しい地球で飾ってみませんか?
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思い返してみると、中学生のころって今までに生きてきたどんな場面の中でも、とりわけ多感な時期だったように思う。何かにつけ感動したり、何かにつけ熱く友達と語ったり、何か自分のポリシーや思うところに反するものがあると、必ず激昂(げっこう)したりしていた。今ふりかえってみると、どうしてあそこまで?と思うときもあるのだけれど、でもあの時期があったからこそ、今の自分があるのだ。そう断言できる。
私が中学生のころ一番好きだったことは、友達と一緒にいること。学校で話すだけでは物足りなくて、家に帰ってもずーっと何時間も電話して親に怒られたり、電話が使えないとなると、何時間も何枚も手紙を書いたり。どうしてあんなに話すことがあったんだろう?なんて今では思うのだけれど、でも、そうする時間が当時の私にとってはかけがえがなく、とっても大切な時間だった。そしてその時間の多くから、今の私のルーツが作られた。
私は今大学院で、環境問題に関する研究をしている。それを志したのは、まさに中学生のとき。『風の谷のナウシカ』を読んで、それに感動し、友達と熱く語ったことがきっかけだった。そのときはぼんやりとイメージしていただけ。けれど、高校に進学し、大学、大学院とひとつひとつ階段を登ってきて、気づけばあの頃思い描いた未来に、きっと今、いる。そしてこれからも、今目の前にあることを一歩一歩大事に進めていくことで、自分の未来に向かっていくのだろうな、と思う。
今あなたの目の前にあるものは何ですか? その中であなたにとって大事なものは何ですか? そしてあなたにとって大切な人を、大切にできていますか? 今ははるか遠くを見通すことができなくても、きっと今ひとつひとつを大事にすることで、あなただけの道が見えてくるはず。あなたにとって一度しかないこの瞬間を大切に。あなたにとってのルーツが築かれていきますように。応援しています!o(^-^o)
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