こどもアサヒ

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科学者のタマゴのつぶやき

大学院での研究のこと、中学生時代に興味を持っていたことなどを語ります。

4/28UP!

足で歩くタンパク質
総合文化研究科博士課程・今村謙士

 タンパク質って何だろう?

 こう聞くとたいていの人は、栄養素の一つ、と答えるんじゃないだろうか。もちろん間違いじゃない。しかし生物の体の中をのぞいてみれば、「栄養素」のイメージとは程遠い、タンパク質の猛烈な活躍ぶりに気づくだろう。たとえば心臓を拍動させるのも、食べ物を消化するのも、目で光を感知するのも、すべてタンパク質の仕事だ。彼らは生命活動のあらゆる場面で主役として振る舞い、それゆえ「栄養素」という言葉で片付けるにはあまりに精密で、活動的で、賢い。

 タンパク質と一口にいっても、様々な種類がある。ヒトは3万2000ものタンパク質を持っているという。僕はその中の一つで、ダイニンと呼ばれるタンパク質の研究をしている。ヒト以外にも多くの生物が持つありふれたタンパク質だが、実に興味深い性質を備えている。それは、歩くことだ。ダイニンは足を2本持ち、人間と同じように二足歩行をするのである。今この時も、君の体内ではダイニンが歩き回っている。そしてそれは、君が生きていく上で欠かせないことなのだ。

細胞内には「首都」と「道」
 江戸時代、幕府は江戸を始点とする5つの道、いわゆる五街道を整備した。これらの道は、現在に至るまで物流の大動脈として活躍している。江戸(東京)だけではない。地図を広げてみると、世界中どこでも、首都をはじめ大都市からは道が放射状に延びていることが分かる。

 生物の構成単位である細胞、実はこの中にも、人間が作ったのとよく似た流通網が敷かれている。細胞には核という構造があり、ここには遺伝情報を担うDNAがつまっていて、細胞全体の司令塔として働く。いわば細胞における首都だ。一方、道として機能するのは微小管と呼ばれるせんい状のタンパク質で、核のすぐ近くを始点として細胞の端の方へ放射状に延び、これに沿って盛んに物質輸送が行われている。

 この物質輸送の担い手こそ、前回紹介した歩くタンパク質、ダイニンである。ダイニンは細胞内の道である微小管の上を歩きながら、いろいろな物質を運んでいく。微小管とダイニンによるこの物流システムは、細胞内に核を中心としたネットワークを形成し、細胞の効率的な活動を助けているのだ。

地道に働く俊足ダイニン
 細胞の中で歩きながら物を運ぶタンパク質、ダイニン。とても速足で、1秒間におよそ1マイクロメートル(千分の1ミリメートル)も歩く。え、遅い? いやいやそんなことはない。何といってもダイニンは、大きさが50ナノメートル(2万分の1ミリメートル)しかないのだから。分かりやすいように人間の大きさに引き伸ばして考えてみると、50ナノメートルのダイニンが秒速1マイクロメートルで歩くのは、身長150センチのヒトが時速100(キ ロ)以上で歩くのに相当する。ものすごいスピードだ。それに、そもそも細胞の大きさは普通10〜100(マイクロ)メートルしかないから、秒速1マイクロメートルでも十分仕事ができる。

 ただ中には例外的に、とても長い細胞もある。ヒトだと最長で1メートルくらい。そんな細胞ではどうするのか? どうするもこうするもない。千里の道も一歩から。時間はかかっても、秒速1マイクロメートルでこつこつ歩いていくだけだ。芸がないようだが、ダイニンのこの地道な働きがなければ、生物はこんなに長い細胞をとても維持できないだろう。

ダイニンの歩みを追え!
 タンパク質「ダイニン」が歩いている様子を観察するには、どうしたらいいだろう?これはなかなか難しい問題だ。ダイニンは大きさが50ナノメートルしかない〔1ナノメートルは1ミリメートルの百万分の1〕。みんなの学校に置いてあるような顕微鏡(光学顕微鏡)では、どんなにがんばっても100ナノメートル程度以上の大きさのものしか見えない。電子顕微鏡とよばれる顕微鏡を使うと、1ナノメートルくらいまで見ることができるが、この顕微鏡の弱点は観察対象を固定しなければならないこと。つまり、ダイニンが歩いているところは観察できない。

 この問題が解決したのは、比較的最近になってから。かなり高度な技術がからむが、原理はいたってシンプルだ。ダイニンに見やすい目印をつけることである。例えば、ダイニンに蛍光物質をくっつけて光学顕微鏡で観察すれば、光の動きを追うことでダイニンの動きを知ることができる。

 この方法によって、ダイニンが8ナノメートルの歩幅で一歩ずつ進んでいく様子が観察されている。50ナノメートルのタンパク質が本当に歩いていることを実感させられる、ちょっと感動的な実験だ。



体のはじまりとES細胞
東大院生・ようへい

 体のはじまりの話。最初はただ1個の目に見えない大きさの細胞。それが2つに分かれ、4つ、8つと分裂して増えていく。そうなるとただの塊から、中に穴の開いたサッカーボールみたいな形になる。このサッカーボールの外側にある細胞は将来、胎盤という組織になって、赤ちゃんを守る役割を果たす。その内側にちっちゃな細胞たちがいて、体の全部を作る。

 研究者たちは、この細胞を実験室で増やすことに成功した。これがES細胞だ。ES細胞は、神経やら筋肉やら心臓やら体の組織なら何にでも変身できるすごい能力をもっている。だから、研究者たちはこの細胞に夢中になった。

 でも、ES細胞は研究者の言うことをなかなか聞いてくれない暴れん坊だ。ちゃんと扱ってやらないと、勝手に別の細胞に変身して、その能力を失ってしまう。体の中に移植しても、正しい組織にならずにでたらめな組織になってしまう。

ES細胞を飼いならせ!
 研究者は暴れん坊のES細胞を何とか飼いならそうとしている。僕たちの研究室では、すい臓の細胞をマウスのES細胞から変身させることに成功した。すい臓には、糖尿病になるのを防ぐインスリンを分泌する機能がある。ES細胞からすい臓を作って移植できたら、糖尿病を根本的に治療できるかもしれない。

 僕たちの方法では、まずES細胞の塊を作ることで、自分から変身できるようにする。そこにES細胞を操る「アメ」と「ムチ」になる物質を加える。「アメ」はES細胞が生きて増えるための栄養だ。「ムチ」はある種類の細胞だけに変身させるための特別な物質だ。

 この「アメ」と「ムチ」がないと、細胞はでたらめな細胞になったり、死んでしまったりする。試行錯誤を繰り返して、一部の細胞をすい臓にすることができた。治療に使えるようなすい臓を作ることができるのはまだまだ遠い話だけど、なんとか実現させたい。

君の中にもいる幹細胞
 色々な種類に変身できる細胞を、花や葉を生み出す木の幹に例えて「幹細胞」という。何でもなれるES細胞ほどじゃないけど、すごい能力の幹細胞が実は僕らの体の中にもいる。

 その1つが造血幹細胞だ。この細胞は名前の通り血液の細胞を生み出していて、毎日の生活に必要な血液を作るために頑張っている働き者だ。でも、この細胞がおかしくなって、白血球という細胞ばかりを作ってしまうことがある。この病気を白血病という。

 逆になまけ者の幹細胞もいる。神経幹細胞はその一つだ。昔は、大人になってしまうと神経細胞は増えないと考えられていた。でも、最近の研究で脳にはこの神経幹細胞があって、傷などを受けると新たな神経細胞を生み出すことがわかってきた。なまけ者だけど、いざというときにはすごい力を発揮する幹細胞だ。

 ここで紹介したのはほんの一部で、たくさんの個性豊かな幹細胞たちが僕たちの中にいる。

幹細胞で治す「再生医療」
 幹細胞を使って、傷ついた体の組織を再生することができたら、きっともっと多くの人が救えるに違いない。そんな「再生医療」が実現に向けて動き出している。

 すでに実施されている例として、白血病の骨髄移植がある。他人の骨髄の中にある造血幹細胞を移植する治療法だ。最近では、患者さん本人に残っている正常な造血幹細胞を移植することも研究されている。また、ひどいやけどなどで傷ついた皮膚を、他の部分の皮膚の細胞を増やした後に移植する治療法も実現している。その他にも体の色々な部分で再生医療に向けての研究が進んでいる。

 でも、まだまだ医療に実現可能な組織は少なくて、研究者は暴れん坊のES細胞やなまけ者の神経幹細胞を飼いならそうと頑張っている最中だ。中学生のみんなが大学生になる頃にはもっと多くの組織の再生医療が実現していて、この研究分野はもっと盛んになっているだろう。



ダイヤモンドで地球の謎探る
東大院生・小竹翔子

 ダイヤモンドと聞いて、どんなものを想像しますか? 婚約指輪に用いられるようなキラキラと輝く宝石を想像する人が多いのではないでしょうか。

 実は、ダイヤモンドには宝石としての価値だけでなく、地球内部の研究対象としても高い価値があります。地表から150キロメートル以上も深い、温度と圧力が非常に高い地球深部でダイヤモンドは成長します。その際に、周囲の地球深部物質を内部に取り込むことがよくあります。地面を掘ることでは到達できないくらい深い所の物質を、火山の噴火とともにダイヤモンドが地表へと運んできてくれるのです。

 現在報告されている最も深い所(地下660キロメートルよりも深い下部マントル)の物質も、ダイヤモンド中から見つかっています。内部に不純物を取り込んだダイヤモンドは、見た目が汚いので宝石としての価値は低いですが、地球深部を研究する私たちにとっては、そちらのほうが貴重です。

硬いダイヤで高圧環境を再現
 地球内部は、地表とは異なり温度と圧力がとても高いです。非常に硬い物質として知られているダイヤモンドを使って、地球深部と同程度の圧力を再現し、その環境で物質がどのようになっているかを調べることができます。特別な形にカットされた2つのダイヤモンドで岩石などの試料をはさみ、試料を押し付けるように力を加えることで、高い圧力をかけることができます。ダイヤモンドアンビルと呼ばれる、手のひらにのるほどの小さい装置です。300万気圧(地球の外核に相当する圧力)以上の高圧発生に成功したという報告もあります。

 地球のとても深い所には実際に試料を取りに行くことが出来ないので、実験室で地球内部の環境を再現しています。ダイヤモンドは透明なので、顕微鏡を使うと高い圧力のかかっている試料を目で見ることができます。ダイヤモンドには地球内部を見る窓の役割もあるのです。



自由研究で古代チョコ
東大院生・上南部夏希

 中学生のとき、夏休みの自由研究で大好きなチョコレートについて調べました。チョコレートの起源は紀元前2千年、古代メキシコのショコラトルという苦い飲み物にまでさかのぼります。「神の食べ物」として価値が高く、薬用や儀式で使われたと知って驚きました。

 そこで当時のショコラトルを、工場見学でもらったカカオ豆を使って再現することにしました。カカオ豆を乾煎りし、はじけたら皮をむき、すりばちで20分程すりつぶします。徐々に油が出て、ペースト状になったらバニラエッセンスやシナモン、唐辛子を加えてさらに練ります。味は苦いココア、においはチョコレートです。ペースト状のカカオをお湯にとかし、刻んだ干しトウモロコシ入りの温かいミルクを加え、できあがりです。まさにチョコレートの語源「苦い水」のとおり、薬のような味でした。古代のチョコレートを味わっていると思うと、タイムスリップしたようなわくわく感を覚えました。

チョコの効能、科学で解明
 16世紀、薬として中米からヨーロッパに伝わった古代の飲むチョコレートは、砂糖を入れるとおいしいので大流行し、19世紀に現在のかじるチョコレートが誕生しました。

 チョコレートが口の中でとろけるのは、カカオバターの融点が体温より数度低いからです。もし、1、2度でも高いと口の中でとけにくくしつこい味に、低いと室温でべたべたします。不思議ですね。

 古代は薬であったチョコレートですが、最近になって効能や味わいの科学的裏付けが明らかになってきました。カカオ豆には脂肪や食物繊維、ミネラル、ポリフェノールが豊富に含まれています。ポリフェノールは苦み・渋みの成分ですが、様々な病気(がん、動脈硬化、胃潰瘍など)の原因にもなる活性酸素の働きを防ぐ作用があるとされているのです。

 このように自然界には効能のある植物なども多く、その秘密を科学的に研究するのは面白いです。みんなの身近にも面白い研究対象があるかもしれませんね。



「知」の集大成で作る新薬
東大院生・あっきー

 私たちの身の回りにある薬、いまでは日々の生活に欠かせなくなりました。「新しい薬」が開発されると、これまでの医療が一新することがあります。不治の病だった結核が、いまや薬を飲めば治ります。頭痛や腹痛になると家の薬箱を持ち出しますが、迷信に頼っていた昔の人にとって、この箱は、さながら「魔法の箱」に見えるでしょう。

 私は東大薬学部で、「新しい薬」を作る研究をしています。薬を飲むと、体の中でなにが起きるの? 副作用は? どのくらい飲めばいい? 知識を総動員して、いろいろな側面から考えます。私もみなさんのように、中学校で方程式を解き、化学式を学び、生物の体、英語の文法を勉強しました。振り返ってみると、それらの知識が私の土台になっているようです。実際にどのようにして「薬」という目標に挑んでいるのか、紹介していきます。

タミフル化学合成に成功
 およそ1年半前、私の所属する柴崎正勝・研究室では、抗インフルエンザ薬=タミフルを石油原料から作ることに成功しました。これまでタミフルは植物を原料に作っていましたが、これでは生産量が天候などの影響を受けるため、必要なときに「タミフルが足りない!」となりかねません。継続的に産出する石油を原料にすることで、タミフルの安定供給へ道が開かれたわけです。

 タミフルの合成は、いまから20年近く前に開発された化学反応に始まります。まだ私は生まれたばかり。それから100人以上の化学者の手をわたり今回の成果につながったと思うと、感慨深いものがあります。

 自分たちの研究が医薬品へと結びついた喜びは、薬学部ならではのもの。言葉では表現できません。タミフルが完成した日、ささやかなお祝い会が開かれました。みんな笑顔の記念写真は、私たち研究者にとって、かけがえのない1枚です。

大学研究者としての使命
 マラリアという感染症を知っているでしょうか。熱帯地方の病気なので日本ではあまり耳にしませんが、世界三大感染症の一つで、毎年3億〜5億人の人が感染しています。発展途上国では、多くの子どもがこの病気で命を落としており、一刻も早い特効薬の開発が望まれています。

 しかし残念なことに、製薬企業はマラリア治療薬を開発することに乗り気ではありません。発展途上国は金銭的に貧しく、薬をなかなか買えないからです。「もうからないなら作らない」という構図が、本当に薬が必要なところに、薬が届かない悪循環を生み出しています。

 このような「企業の穴」を埋められるのが、会社の外にいる大学の研究者だと思います。私はいま、マラリアの治療薬を作る研究をしています。この研究を通してマラリアの特効薬を見つけ、多くの子どもの命が救われれば、研究者として思い残すことはありません。

研究の原動力は「感動」
 「なんで研究者になったの?」、私はこの質問をよく受けます。それに対する答えはただ一つ、「人類の英知に対する感動」です。

 想像してみましょう。いまは5000年前。身の回りには不思議なことがたくさんあります。なんで昼夜が周期的に来るの? なんで夜空にはたくさんの星が浮かんでいるの? そんな右も左も分からない状態から、私たちは言葉や数字を作り、文明を築き、長い年月をかけて自然界の法則を解明し、いまに至っているのです。みなさんが学校で使う教科書――その裏に何千年もの時間が流れていると考えると、なんだか壮大な気持ちになってきませんか?

 研究室を一歩外に出ると、車が道路を走り、飛行機が空を横切ります。当たり前のこの光景が、はるか昔に思いをはせると「感動」に変わるのです。脈々と積み重ねられた人類の英知、そこに自分の足跡を残すべく今日も研究を行います。



宇宙に一番近い町キルナ
東大院生・なう

 あなたはキルナという町を知っているだろうか。キルナは、スウェーデン北部、北極圏内に位置し、宇宙研究最前線の町として知られる。僕はこの2月から、宇宙工学を学ぶためにこの町にやってきた。しかし、なぜこの北の町が宇宙研究にとって重要なのだろうか。

 その一つの理由はオーロラ。上空の闇にうかぶ緑の揺らめき、3月までは僕も頻繁に見た。何もないと思われる宇宙も、太陽からのプラズマで満たされている。その一部は地球の磁場に捉えられ、磁力線に沿って、南北の極域に運ばれる。そこで大気と反応してオーロラが発生する。オーロラを研究することで、地球の大気・磁場が、宇宙のプラズマといかに相互作用をしているかがわかる。

 地球は、無の宇宙に浮かんでいるわけではなく、ダイナミックな宇宙の流れにさらされていることが、ここでは実感できる。

宇宙を見つめる北極の「猫」
 オーロラのように、極域の地球大気では太陽や宇宙の影響を受けた興味深い自然現象が数多く発生している。これらを観測するため、キルナをはじめとした北極圏の4つの都市に、直径30(メートル)もの巨大アンテナを持つレーダーが設置されている。これは欧州非干渉レーダーEISCAT(アイスキャット)と呼ばれる。雪の中、宇宙を鋭く見つめる猫を想像させる名前ではないだろうか。

 EISCATでは、地上波テレビにも使われるUHF帯の電磁波を上空に照射する。上空には太陽や磁場の影響を受けたプラズマ状態の荷電粒子が存在し、散乱されたごくわずかな電波を再び地上で受信する。この電波を調べることで、大気の状態(電子密度、温度、風速など)を観測し、太陽活動や地球磁気圏の様子まで推定することができる。EISCATでは、地球から宇宙につながる糸口を調べることができる。

宇宙研究に大地と空と
 キルナは、スカンジナビア半島北部、ラップランドと呼ばれる広大な地域に位置する。極域の厳しい自然に囲まれたラップランドには、山や氷河・森林が広がり、人はほとんど住んでいない。広大な大地とはるかに続く空。実は、これが宇宙の研究に欠かせない要素の一つでもある。

 宇宙研究に伴う観測ロケット・気球の打ち上げは、事故や騒音、落下後の回収など、人が多く住む場所では不都合な場合が多い。ここキルナには、市街から東に40キロメートルの場所にエスレンジという打ち上げ基地があるが、その北方はノルウェーとの国境まで、愛媛県の広さに匹敵する無人の区域がある。そのおかげで、小型ロケット・観測気球の打ち上げなどの実験が、都市や人間・航空機を危険にさらすことなく自由に行われている。

 同時に、キルナは鉄道・航空便が整備されており、施設維持やアクセスが容易である。全く人がいない南極での研究と比べると格段にコストが安いのだ。

飛行機で作る「無重力」
 エスレンジでは、その広大な場所を利用した無重力実験も行われている。ジェットコースターで一瞬体が浮く感覚を覚えている人も多いだろう。同様に、飛行機を上下に波打つように飛ばし、下降中に機内に無重力状態を作る。無重力状態では物質に重さがなく、異なる物質を極限まで均一に混合でき、新材料・新薬開発の助けとなる。また、生物への重力の影響を解明し、生命の起源に迫るなど、あらゆる科学分野の研究に役立つ。

 キルナは宇宙開発に欠かせないあらゆる要素を同時に兼ね備えた、たぐいまれな都市である。興味深い自然現象、広大な空と大地、そして利便性の良い交通アクセス。各分野で日本との関係も深く、日本人研究者も数多く訪れている。もちろん、オーロラや白夜を求めて訪れる日本人観光客も多い。みなさんも一度、宇宙を身近に感じる旅に、キルナを訪れてみてはどうだろうか。




CO2は地球内部を知る鍵
東大院生・みやび

マントルの岩石に含まれる鉱物 (薄緑色はカンラン石; 一辺2ミリ)

 私たちの足元に存在する、地球。その内部にどのような世界が広がっているか想像したことはありますか?

 地球の半径は約6400キロメートルで、内側から核、マントル、地殻の3つの部分に分けられます。このうちマントルは、地表から数十キロ〜2900キロの深さに存在し、地球の全体積の約8割を占めています。

 地球温暖化で注目を集めている二酸化炭素(CO2)は、実は地球深部とも深くかかわっています。マントルにはCO2が存在しており、火山活動などを通じて地表に放出され続けているのです。これらのCO2は、一体どこからやってくるのでしょうか。地球温暖化について考える上でも、地球内部で物質がどのように循環しているかを探る上でも、マントルに存在するCO2は重要な鍵を握っているのです。私はこのCO2に注目して、地球の内部の謎を探る研究を行っています。

地球内部の岩石(横約4ミリ)

地球深部の岩石は宝石の塊
 地球深部のマントルを研究するには、直接マントルを調べるのが確実ですが、地面を掘ってマントル物質を手に入れるには高度な技術と膨大なお金が必要です。そこで、火山からマグマと一緒に噴出した、マントルの岩石のカケラを採取します。

 マグマの粘り気と上昇速度の条件がそろった火山だけが、マントルのカケラを地表に運ぶことができます。日本は活発な火山の多い国ですが、採取できるのは秋田県の一の目潟など十数か所に限られています。

 マントルの岩石は、緑色のカンラン石、薄茶色の斜方輝石、赤色のざくろ石など、色とりどりの鉱物でできています。顕微鏡で観察していると、万華鏡をのぞいている気分です。鉱物の中には二酸化炭素が閉じ込められていることがあります。この二酸化炭素を分析することで、岩石がどこからやってきたのかを探ることができるのです。

中に含まれている、二酸化炭素 (一つ一つは約5マイクロメートル)

CO2分析で「起源」を推定
 地球深部の岩石中に含まれる二酸化炭素は、どのように分析されるのでしょうか。そしてどんな情報を教えてくれるのでしょうか。

 炭素には、重い炭素(13C)と軽い炭素(12C)が存在します。食物連鎖の一番下に位置する植物は、光合成の際に軽い12CO2を優先的に取り込みます。そのため植物を食べる動物も、その動物を食べる動物も、軽い12Cを多く体内に取り込むことになります。地球内部の岩石に含まれるCO2を分析して軽い12CO2に富んでいたら、生物が多く存在したところからやってきた岩石であると推定できます。

 一般的には、岩石の塊を砕き、含まれるCO2を抽出して分析されます。しかし、砕いてしまうと同じ岩石は二度と手に入りません。CO2以外の分析をすることもできなくなってしまいます。そこで私は、CO2にレーザー光を照射することで、岩石を砕かずに、しかも数百分の1ミリの局所分析が可能な、新しい手法の開発を行いました。

簡単に解けない謎の面白さ
 新しい手法や様々な分析法を使うことで、地球内部を含めた地球上での二酸化炭素(CO2)の循環について研究が行われています。温暖化についてはどんなことが分かるのでしょう。

 地球の内部に沈み込んだサンゴ礁や動物の死骸がCO2になり、地球内部から放出されているとします。この場合、放出されるCO2と同じ量に相当する炭素が地球内部に入り込んでいくので、温暖化にはほとんど影響を与えません。しかし、もともと地球の内部に存在していたCO2が地表に放出されているとしたら、どうでしょう。CO2は放出される一方で、温暖化に影響を与えることになります。

 地球内部のCO2がどれだけ温暖化に影響を与えているのか、はっきりしたことは分かっていません。答えを出すのに必要な試料やデータが、不足しているのです。簡単には解けない謎に迫る面白さを感じながら、研究を続ける毎日です。




自然界の「枝ぶり」に夢中
東大院生・大西隼

 僕は「枝ぶり」マニアだ。鉱物や雪の結晶、生体内の血管や、植物の枝や根や葉脈の広がり、地面の亀裂、地中のアリの巣、河川の枝分かれ、果ては宇宙の大銀河構造まで、自然界ではあらゆるスケールにおいて美しい「枝ぶり」を発見できる。

 お気に入りのクスノキをじいっと見上げていると、枝ぶりの美しさに感じ入り鳥肌が立ってゾクゾクしてくる。なぜこんなにも僕は「枝ぶり」に夢中になってしまうのか。

 直感的に思うのは、自然界における偶然と必然のダイナミクスの結果として生まれた「枝ぶり」には、まさに「時間」が刻まれているように感じられるせいかもしれない、ということ。とすると、アンティークや遺跡などの古いものに人が夢中になるのと似たような仕組みかな。

 実は僕は「枝ぶり」以前に、「存在」というものがずっと気になっていた。「存在」ってなんだろう。

 ハイデガーという偉い哲学者が『存在と時間』という著書をのこしたほどなので、どうやら存在と時間は深い関係にあるようだ。広大な宇宙の中に地球が存在して、その上にちっぽけだけど切実な「私」が「存在」するということ。別に「存在」のない世界でもいいわけなのに、なぜこの世には「存在」があるの?

 こうやってうじうじ考えている僕の認識の中枢は、千億個もの神経細胞が複雑につながりあった脳なんだ。世界のさまざまな美しい「枝ぶり」を認識できるのも、脳のネットワークを「枝ぶり」が支えているからなんだと思ったりすると、なぜかゾクゾク感が増幅するんだよね。

 僕はヒトの脳が構造の中に「美」を見いだすメカニズムに興味がある。だけど、そもそも「美」の本質ってなんだろうね。「存在」や「美」といった世界の根本的な部分に、「枝ぶり」からつながっていく感じも、また気持ちいいのです。




不思議な森、マングローブ
自然と共生する知恵探りたい
東大院生・かずみ

 海と陸のはざまにひっそりと茂る森。それがマングローブです。普段私たちが目にする植物の多くは、海水に浸ると死んでしまいます。ところがマングローブの木は、海水の浸る場所でも悠然と生えています。

 マングローブの不思議はそれだけではありません。普通の木々と違って、板状の大きな根を持っていたり、タケノコのように地面から上に突き出た根を持ち、そこで呼吸をしたりします。さらには、倒れ掛かった自分の体を支えるかのように、新しい根を枝から生やす木もあるのです。これらの特徴は、波で土砂がさらわれやすい沿岸に生えるマングローブが、独自に生み出した防衛手段なのかもしれません。

 私は熱帯の海の中に生える森、マングローブを研究しています。潮が引いた時マングローブ林の中を歩くと、足元の柔らかな土で全身泥だらけになります。ひざまで埋まった足を引き抜いていると、傍らで小さな水音が聞こえてきます。トビハゼが驚いて逃げていく音です。私はそこへ行くといつも、人が自然の一部であることを思い起こさせられます。

 私たちの多くは、エアコンなどの電化製品やスーパーで買う食べ物など、人工的な物に囲まれて暮らしています。すると時々、人が自然の恵みを受けて生きていることを忘れてしまいます。

 自然は私たちにとって資源の源であり、知恵の宝庫でもあります。人が自然を破壊しすぎることなく、継続的に共生するにはどうすればよいか? そのヒントを探し出すため、研究を続けています。




イノシシの「つむじ」
東大院生・たっけー

 イノシシにも「つむじ」がある。友達がそんな発見をしたのは、今年の正月のこと。科学館に展示してあるイノシシの剥製を見ていたときだった。確かによくよく見てみると、首の後ろに小さな渦がある。その中心が、いわゆる「つむじ」だ。「つむじ」といえば、人間の頭にだけあるものだと思っていた。それがイノシシにもあるというのだから、ちょっとした驚きだ。

 実は理論的には、誰の髪の毛にも、そしてどんな動物の毛にも、「つむじ」が存在するのだという。これは数学的に証明でき、「不動点定理」という名前までついているそうだ。何げなく見過ごしてしまうものでも、よく見てみると何かしら発見がある。そしてその奥に、もっと大きな真実が見つかることがある。今年はまだ10か月以上残っている。これからどんな発見があるか楽しみだ。




人を「型」にはめて見るな
東大院生・たっけー

 輸血するわけでもないのに人の血液型を聞いてきて、揚げ句の果てやっぱりだのそうは見えないだの、こういうところが何型っぽいだの論評する人が後を絶たない。血液型性格診断という科学的に根拠のない迷信が広まっていることにもうんざりするが、なにより気になるのは、何型の性格というように「型」にはめて人を判断する人があまりにも多いことだ。

 人の性格なんて複雑で、一言で語れるものじゃない。だからこそ魅力が生まれ、一人一人の個性が出てくる。「型」で人を見ると、その人のいいところをたくさん見逃すことにもなってもったいない。だから僕は血液型を聞かないし教えない。そんな「型」にはめられたくないからだ。

 なんてことを言っていると、理屈っぽいからA型でしょなんて言うヤツがいて、ますますうんざりしてくるのだ。




ドイツで知る家族との時間
東大院生・なう

 日本の大学院生は、夜も休日も勉強に研究に忙しいことが多い。そのため、特に遠方からの学生は、実家に帰るのは盆正月程度となってしまう。中には何年も帰っていない人もいる。

 でも、ドイツにいると、みんな頻繁に実家に戻り家族と過ごす。車で何時間かけても、月に1、2回は実家に帰る。ドイツ人は、家族との時間を大切にする人たちなのだ。

 しかし、日本では仕事をし始めるとなかなか休日が取れないのも確か。だからこそ、家族との時間が少しでもある若いうちに、その時間を大切にしよう。悩んでいること、楽しいこと、つらいこと、家族と話をすることで、きっとみんなの心が豊かになる。




時間大国・日本に感謝?!
東大院生・なう

 僕の留学先・ドイツから日本を見ると、日本の意外な一面を見ることができる。

 みんなは「勉強や部活に追われて時間がない」と思うことがあるだろう。日本は学校も会社も忙しい。でも、考え方を変えてみよう。学校や会社に集中できるのはなぜだろう。日曜日も深夜も開いているコンビニ、時間に正確な鉄道、即席でもおいしい食品、お客をわずらわせないサービス、すべてがみんなの時間を節約してくれる。

 ドイツではこれらはすべて逆。日曜日は店も大学も休みでバスも激減。実は、日本は時間をとても節約できる時間大国だ。その時間を使って、勉強や仕事に取り組める。みんなも、この恵まれた時間に感謝し、勉強に部活に遊びに精いっぱい挑戦しよう。




夢に導く時間軸を持とう
東大院生・あっきー

 みなさんは、どのような将来の夢を持っていますか。夢に向け歩んでいくことは、とても気持ちがいいものです。

 夢を持つとき、いろんな「時間軸」で考えてみましょう。「総理大臣になる」のような壮大な夢と一緒に、高校の生徒会長になる・○○大学に入るなど、手の届きそうな夢です。そのような身近な夢を、私たちは「目標」と呼びます。

 目標は夢への「道しるべ」――。一歩一歩、踏みしめていくと、遠くにあった「夢」は、手の届く「目標」になります。そして視野が広がると、夢の向こうに、新しい夢が見えてくるかもしれません。

 私の夢は「発展途上国で苦しむ人々に、たくさんの薬を供給すること」です。その夢をかなえるべく、もうすぐ製薬企業に就職します。いつの日か夢が現実になる日を目指して、一歩ずつ……。




「おしゃべり」で悩み解決
東大院生・あっきー

 毎日、生活をしていると、いろいろな問題にぶつかると思います。勉強や部活、友達のことから恋の悩みまで。そういうとき、皆さんはどうやって問題を解決していますか? 私のお勧めは「人とおしゃべりをすること」です。

 問題を抱えていると、どうしても気分がふさぎがち。だけど、人としゃべることで気分も晴れ晴れとし、肩の力が抜けてきます。よい解決法とは、案外、そういうときに浮かんできます。

 そしてなにより、人としゃべることで別の「価値観」が味わえます。自分とはまったく違う発想に、「そういう考えもあるのか」と。周りに耳を傾けることで、自分の考えも固まってくるものです。

 悩んでるときはつらくても、それは新しい自分を見つけるチャンスです。とことんまで悩んでみてはどうでしょう。




僕らは虹の中にいる
東大院生・たっけー

 空が青いのはなぜだろう。子どものような質問だが、科学を学ぶと「なぜ」の答えが分かってくる。

 太陽の光は、赤や青などさまざまな色が混じっている。このうち青い光は、空気によって散乱しやすい性質がある。だから目に映る空の色は青いのだ。一方、散乱されない赤い光だけが、大気をくぐり抜けてやってくるのが夕焼けだ。

 この説明を聞いたとき、僕はあることに気がついた。太陽の光が赤や青に分かれるなんて、まるで虹みたいだ。もちろん屈折による虹と原理は違うが、光を色ごとに分けるという点では同じだ。それならば、昼間の僕らは虹の青い色の中にいるようなもの。夕焼けに染まるころは、きっと赤い部分にいるのだろう。

 僕らは虹の中にいる! こうやって世界が今までと違って見えたときが、科学を学んで一番うれしいことなのだ。




自由でハードな米国の授業
東大院生・みお

 私は米国の中学高校を卒業しました。米国の生徒は、皆さんとは全く違う価値観の中で生活しています。
 ここでは米国での学校生活と、理科の授業について紹介します。

 米国の中学高校では、時間割りを自分で決めます。英語はお気に入りの先生の授業をとろう、理科が好きだから今年は生物と化学を両方とろう、など。理科は物理・生物・化学以外に、天文学や解剖学もあります。自由で楽しそう? でも授業はとってもハードです。
 教科書は1000ページもあって、持ち歩くのも一苦労。それを1年でやるのですから! 膨大な量の宿題と格闘する日々です。しかも宿題の多くは、みなさんが想像するものとかなり違います。

 米国の授業では、プロジェクトとよばれるものが多く課されます。これは、グループもしくは個人でやる、少し大掛かりな宿題です。
 たとえば、「DNAの二重らせんの模型を作る」。ホームセンターで好きな材料を購入してきて、DNAを作ります。そのほか、「2人で遺伝病について調べて、遺伝カウンセラーと患者になりきって発表」や、「光を当てるとものが動くしかけを作る」なんていうものも。プロジェクトが重なると、平均睡眠時間が5時間以下になるくらい、大変です。

 私はプロジェクトの嵐を真剣にこなすうちに、研究者になるという目標を得ました。みなさんも、忙しいなかでも学校の授業に真剣に向き合って学んでいると、将来の夢が簡単に見つかるかもしれませんよ。




高校生になったらやりたいこと
東大院生・かむかむ

 (1)体育祭や文化祭でもりあがる!(2)部活をがんばる!(3)高校生クイズにでる!!! 小学生のときからテレビのクイズ番組や謎解きの本が大好きだった僕にとって、高校生クイズは憧れでした。中学校の図書室には以前の大会の問題が載っている本があったので、しょっちゅう借りて「勉強」していました。そして毎年、夏の終わりのテレビ放送が「模擬試験」です。頭の中で高校生と早押しクイズを競って、特訓です。

 都道府県代表としてテレビに出るには、高校野球と同じように、まずは地方予選を勝ち抜かなければなりません。僕の高校があった関東地方の予選は、埼玉県の西武ドームでおこなわれました。初めは○×クイズです。○だと思えば左の応援席に、×だと思えば右の応援席に入り、正解するとグラウンドに降りることができるのです。パソコンや携帯電話などを持ちこんで調べてもよいことになっていたのですが、僕も一緒に行った友達2人も当時はパソコンも携帯電話も持っていません。そこで、僕はあの重くて分厚い「広辞苑」を持っていきました。

 激動の20世紀を見続けてきた国会議事堂。その高さは、「西武ドーム」とほぼ同じですが、1936年完成当時、日本一高い建築物だった。
 【○か×か?】

 んー、国会議事堂の高さも、西武ドームの高さも広辞苑には載ってないぞ。東京タワーができたのは戦後だしなぁ……。

 結局、何の確信も持てないまま応援席へ入ることになりました。中に入ってからも、やっぱりあっちだったかなぁ、いや絶対こっちだよ、とドキドキです。そして、正解の発表。「まーる、まーるっ!」、「ばーつ、ばーつっ!」。大声で叫びながら、答えを待ちます。

 結果は……、残念ながらグラウンドに降りることはできませんでした。楽しみにしていた早押しクイズは夢のまた夢です。けれども、高校生クイズはお祭りです。友達と3人組をつくって、わいわい楽しく参加できたことはとても良い思い出になっています。

 今でも毎年、高校生クイズを楽しく見ています。特に去年(2005年)は母校が優勝したので、まるで自分のことのように喜んでしまいました。みなさんも高校生になったらぜひチャレンジしてみてくださいね。




科学の「絶対」を疑おう
東大院生・あっきー

 『ソフィーの世界』という本を知っていますか? 紀元前から最近までの「哲学」が、物語のかたちでまとめられた本です。
 その冒頭に、「パパが飛ぶ」シーンが出てきます。ママはこれを見て、驚きのあまり腰を抜かしてしまいますが、物心ついたばかりの息子は「パパは飛べるんだ!」と尊敬のまなざしです。
 私たちならどうでしょう。周りの人が急に空を飛びだしたら、なにかトリックを使っていると思うか、さもなければ、ママと同じく、驚いて声が出せないに違いありません。息子のように「人間は空を飛べるんだ!」と考えられるほど、頭は柔らかくありません。

 人間は鳥のように空を飛べない――このような「絶対のこと」の多くを、私たちは教科書から学びます。「抵抗×電流=電圧(オームの法則)」「0で割り算をすることはできない」「三人称単数現在の動詞にはsがつく」など。たくさんのことを覚え、これからも覚えていきます。
 しかし、ときにはその歩みを止めて、「絶対のこと」を疑うことが大事だと思います。
 たとえばヨードデンプン反応。でんぷんがあると青紫色に変色すると習いました。じゃがいもの切断面が青紫色に染まっている絵を思い出す人もいるでしょう。でも、そこでもう半歩進んで、
「なんでデンプンがあると、青紫色に変色するの?」
「なんで赤や黄色でなく、青紫色なの?」
「そもそも色がつくっていうのは、どういうことが起こっているの?」
と考えてみましょう。
 皆さんは驚くかもしれませんが、こうして踏み出した半歩先には、世界中の研究者が、いまなお研究しているテーマがたくさんあるのです。

 教科書の知識とは、覚えるものでなく、本当はそれを使って何かを考えるものです。そのときのためにも、日頃から半歩先に踏み込み、「ものを考える」癖をつけてみてはどうでしょうか。




宇宙を身近に……
東大院生・なう

図1:超小型衛星 サイ5

 2005年10月27日、モスクワの北方約800km、ロシア連邦プレセツク宇宙基地より8機の人工衛星が打ち上げられた。8機の衛星は、英国、中国、ロシア、欧州、ドイツ、ノルウェー、日本が作った人工衛星であり、これらがロシアのKosmos-3Mロケット1機に搭載され、同時に打ち上げられた。
 この中には東京大学の学生が製作した超小型人工衛星、XI-V「サイ5」も含まれている。サイ5は、一辺10cm立方、重さ1kgであり、手の平に乗る超小型衛星である。打ち上げ以降、サイ5は宇宙で何十枚もの写真撮影に成功し、大きな成果を挙げている。

図2:衛星撮影画像

 私は大学4年生(2001年)から航空宇宙工学専攻の中須賀研究室に在籍し、人工衛星の開発に関わってきた。当初は、知識も経験もない自分達が人工衛星を打ち上げることなど想像もつかなかったが、実際に打ち上げ、成功させ、成果をだしていることに、私自身も非常に驚いている。

 そして、この研究を広く一般に理解してもらえるよう、誰でも参加できる試みが行われている。例えば、沢山の人から集めた宇宙へのメッセージをマイクロフィルムに焼き付け、衛星に取り付けて宇宙に打ち上げたり、衛星による撮影画像を携帯電話やパソコンにメール配信する「さいめーるサービス」を行なったりしている。宇宙を身近に感じ、宇宙開発への理解を深めてもらいたい。それが私たちの願いだ。
 もしよろしければ、【東京大学中須賀研究室 さいめーるステーション】(http://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/ximail/top.html)を訪問し、あなたの携帯電話の壁紙を、美しい地球で飾ってみませんか?




私のルーツ
東大院生・かずみ

 思い返してみると、中学生のころって今までに生きてきたどんな場面の中でも、とりわけ多感な時期だったように思う。何かにつけ感動したり、何かにつけ熱く友達と語ったり、何か自分のポリシーや思うところに反するものがあると、必ず激昂(げっこう)したりしていた。今ふりかえってみると、どうしてあそこまで?と思うときもあるのだけれど、でもあの時期があったからこそ、今の自分があるのだ。そう断言できる。
 私が中学生のころ一番好きだったことは、友達と一緒にいること。学校で話すだけでは物足りなくて、家に帰ってもずーっと何時間も電話して親に怒られたり、電話が使えないとなると、何時間も何枚も手紙を書いたり。どうしてあんなに話すことがあったんだろう?なんて今では思うのだけれど、でも、そうする時間が当時の私にとってはかけがえがなく、とっても大切な時間だった。そしてその時間の多くから、今の私のルーツが作られた。

 私は今大学院で、環境問題に関する研究をしている。それを志したのは、まさに中学生のとき。『風の谷のナウシカ』を読んで、それに感動し、友達と熱く語ったことがきっかけだった。そのときはぼんやりとイメージしていただけ。けれど、高校に進学し、大学、大学院とひとつひとつ階段を登ってきて、気づけばあの頃思い描いた未来に、きっと今、いる。そしてこれからも、今目の前にあることを一歩一歩大事に進めていくことで、自分の未来に向かっていくのだろうな、と思う。
 今あなたの目の前にあるものは何ですか? その中であなたにとって大事なものは何ですか? そしてあなたにとって大切な人を、大切にできていますか? 今ははるか遠くを見通すことができなくても、きっと今ひとつひとつを大事にすることで、あなただけの道が見えてくるはず。あなたにとって一度しかないこの瞬間を大切に。あなたにとってのルーツが築かれていきますように。応援しています!o(^-^o)

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