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武田康男/文・写真、草思社、
1680円+税 |
おすすめする人 作家・瀬名秀明
武田康男さんはぼくのいちばん好きな空の写真家だ。武田さんの写真集は科学の本でもあって、読んだ瞬間からぼくたちの世界の見方を変える。本書は武田さんが1年以上にわたって日本南極地域観測越冬隊員として昭和基地に赴き、研究活動の合間に撮影した南極の空をまとめたものだ。本書を開けば武田さんとともに、科学の目で南極の蜃気楼を、白夜を、ダイヤモンドダストを体感できる!
さっそく第1章のオーロラを見てみよう。きれいな写真が次々と現れるが、そのひとつひとつに意味が込められている。
武田さんの説明を読もう。オーロラの色は高さによってほぼ決まっているという説明とともに写真を見れば、確かに高度によって赤や緑やピンクに色づいているのがわかるはずだ。夜明けに地球自体が太陽の影になって、空の底が青く残って見える「地球影」の写真も、武田さんの説明とセットになってよくわかる。
このように武田さんの本は、説明を読むことでさっきまで見えなかった気象現象がありありと目に迫ってくる。これが科学の驚きなのだ。
気温や湿度によってかたちが変わる雪の結晶。平たい雪の結晶が空に舞う夜に浮かび上がる光柱(ライトピラー)。光の筋が天の一点に集まっているという説明文がなければ、ぼくたちはあっと驚くその美しさを見逃してしまうかもしれない。天の川を一筋の光が横切る写真は、南極の上空に人工衛星がよく飛んでいることを伝えてくれる。羽根の先に霜をつけた風見鶏の写真を見れば、霜が風上からついたこともわかる。なんてすてきな演出だろう。
終盤に2羽のペンギンが楽しそうに遊んでいる写真が登場して、それまで見てきた雪と氷の大地がぱっと温かくなった気がした。天敵が少ない南極の動物は伸び伸びして、見ていて本当に嬉しい気持ちになると武田さんは書く。
人間たちも部屋に鍵をかけない。そんな世界がこの地球上にあるのです、という一文に、ぼくは心を打たれたのだった。
(朝日中学生ウイークリー 2010年9月19日号より) |