雪の結晶―小さな神秘の世界―
ケン・リブレクト/著、矢野真千子/訳、河出書房新社、
1575円+税
 おすすめする人 作家・瀬名秀明

 この書評をつづっているいま、窓の外では雪が降っている。きっとみなさんも空から降ってくる雪を受け止め、手袋の中で溶けてゆくその結晶を見つめたことがあるはずだ。なぜ雪は六角形なのだろう? どうしてこんなにさまざまな姿をしているのだろう?

 

 雪は天からの手紙といったのは100年前の科学者・中谷宇吉郎先生だが、アメリカ人も負けてはいない。本書の著者リブレクト先生の趣味はスノーウオッチング。いつもルーペを持ち歩き、降ってくる雪をとらえては写真に撮って、結晶の短い一生に想いをはせる趣味人なのだ。なんと、こんなすてきなガイドブックまでつくってしまった。


 リブレクト先生は雪がどうしてできるかもわかりやすく説明してくれる。中谷先生が見つけたように、雪の結晶はまわりの温度と湿度で変化する。気温マイナス15度付近で結晶は花形のように大きくなり、それより寒いか温かいと結晶は柱や板状になる。水蒸気の状態が絶妙なとき、結晶の先端はぐんぐん伸びてゆく。雲の中で細かな水滴のシャワーを浴びると小さなつぶつぶが表面に残る。星形に六角柱、針形に鼓形、内部に気泡の入ったものまで、リブレクト先生はたくさんの写真コレクションを惜しげもなく披露して、雪の鑑賞法を教えてくれる。


 鑑賞法がわかると、その雪がどのように空を旅してきたのかわかる。リブレクト先生は名探偵のように、雪のかたちを見てその来歴を物語る。ある雪はまず小さな六角形の結晶として生まれ、水蒸気の見事なバランスに恵まれて6本の樹枝を伸ばしていった。旅の途中で板状の結晶ができやすい気温と湿度に変わり、樹枝の先端に平らで大きな六角の板ができた。さらにひらひらと舞いながら額縁のようなエッジがつくられ、先生のもとへ降り立ったのだ。雪を見るだけでぼくたちは頭上に広がる大空を知ることさえできるのだ。


 手袋に降りた一片の雪を読み解こう。きみの心はそのとき空とつながっている。

(朝日中学生ウイークリー 2006年10月15日号より)


楽しい気象観察図鑑
武田康男/文・写真
草思社 1900円+税
 おすすめする人 作家・瀬名秀明

 この夏からパイロットの免許取得訓練を受け始めた。それをきっかけに、大きく変わったことがある。以前よりもずっと空を見るようになったのだ。

 それまで雲の高さや形なんてあまり気にしたことはなかった。でもいまは「地上から何千フィートくらいの高さだな」と見当がつくようになってきて、これがとても嬉しい。

 今回紹介する本は、そんな新しい世界を発見するための最良のガイドブックだ。見事な写真ばかりが厳選されていて、しかも添えられた説明がわかりやすい。これ一冊読めば、いままで何気なく見ていた景色がまったく新しいものとして見えてくるはずだ。

 例えば、沈もうとする夕陽が平たくつぶれているのを見たことがあるだろう。なぜつぶれるのか、この本にはきちんと写真つきで説明してある。大気の密度差で光が曲がって目に届くからだ。では夕陽が地平線に隠れる瞬間、緑色の光が見えることは知っているだろうか。ちゃんとその実物写真も載せているのがこの本のすごさだ。きみはブロッケンの妖怪伝説を知っているだろう。眼下の霧に自分の影が映る現象だ。その写真まで載っている。幻日、彩雲、光柱、名前だけでしか知らなかった気象現象の数々が、しっかりこの本には掲載されている! こんなにクオリティの高い写真集をまとめるまで、いったいどれほど長い時間、著者の武田さんは空を見続けてきたのだろう。

 今度夕焼け空を見たとき、きみはそれぞれの雲が層をなして、色づき具合も違っていることに気づくだろう。巻雲とひつじ雲とわた雲では高度も違うことがわかってくるだろう。蜃気楼の見える理屈を知った後は、春の蜃気楼が上に長く伸びて、冬の蜃気楼が海面より浮かんでいることを実感するだろう。この本が素晴らしいのは、美しい写真を眺めることで現象が理解できることだ。その瞬間から世界が鮮やかに生まれ変わる。

 さあ、空を観察しよう。

(朝日中学生ウイークリー 2006年10月15日号より)

わたしも読みました!

東大院生・かずみ
 あざやかな夕日や透き通るような朝焼け、入道雲や飛行機雲……。そんないろんな姿を見せてくれる空。
あなたも一度はその美しさ、神秘さに心を打たれたことがあるはず。

 この本を開くと、そんなすてきな瞬間を家に居ながらにして楽しむことができます。
いえきっと、この本を読めば読むほど、本物の空を見に、外に出たくなっちゃいます!

 あなたは知っていますか? “幻日”や“彩雲”と美しい名で呼ばれる空があることを。
雲よりずっと高いところの風を、流れ星で読めることを。
美しい空はどんなときに見えるのでしょう? なぜ美しく見えるのでしょう?
そんなたくさんの不思議や疑問に、きれいな写真とわかりやすい説明で答えてくれます。

 あなたは空を見上げることがありますか? どんな時に見上げますか?
季節は秋。いま見える空はどんな色でしょう。
雲の形は? 日の出入りは? 雨の降り方は?
季節の移り変わりとともに、ちょっとずつ変化してくるその姿を、まずはこの本で追いかけてみませんか?




映画「デイ・アフター・トゥモロー」
04年米、DVDは20世紀フォックスホームエンターテイメント

 おすすめする人 東大院生なう

 地球温暖化のもたらす未来を考えたことがあるだろうか? この映画は、温暖化をきっかけに想定を超えた気象現象が次々と起きる未来を描いている。大洪水、大型竜巻、巨大なひょう。最後には急激な寒冷化が地球を襲う。数度の温度上昇という一見たいしたことのない気象変化が、多くの悲劇をもたらしている。

 地球環境のバランスが崩れることが、ここまでの異常気象の引き金になりうるのだろうか。現実世界でも類を見ない自然災害が起きている中、映画の出来事を絵空事だとは言い切れないだろう。この映画では、迫力のあるCGに圧倒され、親子愛をはじめとした人間ドラマには心打たれるが、そんな映画のストーリーを楽しみながら、地球の未来を考え直すきっかけにしてほしい。

(朝日中学生ウイークリー 2006年11月19日号より)

 

 

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