こどもアサヒ

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隕石コレクター
リチャード・ノートン/著
江口あとか/訳
築地書館 3500円+税
 おすすめする人 作家・瀬名秀明

 「一般の人にとっては、隕石はちょっとした好奇心を誘うものでしかないだろう。しかし、ごく少数の人々――隕石ハンターにとって、隕石は情熱そのものなのである」

 隕石、それは宇宙からやって来た石だ。そしてこの本はその隕石に魅せられた著者が、情熱のありったけをこめて隕石のすべてを書き尽くした、おそらく世界最良の隕石本だ。訳者のあとがきにもあるように、情熱は伝染する。読んだらあなたもいますぐ隕石を探しに外へ出て行きたくなる。

 本書は隕石の見分け方や探し方から始まって、クレーターの脇に博物館まで建ててしまうようなコレクターたちの熱い物語を経て、さまざまな隕石から見えてくる壮大な宇宙の姿を描き出す。最初は難しい言葉が多いと思うかもしれないが、やがて用語にも慣れて、むしろそういった言葉を通していつのまにか写真の隕石をじっくり見つめている自分に気がつくはずだ。

 穴が開いていたり、小さな粒がついていたり、断面積に格子状の筋が入っていたり。そういったふしぎなかたちは、すべて宇宙の姿を映し出していて、そこには化学的な意味がある。本書を読んでいると隕石の手触りさえ想像できる。遠い宇宙が自分の手のひらにあって、それに触れることの驚きと興奮を共有しよう。

 この本が見事なのは、隕石について読むことで、生命や地球、宇宙の謎まで視野が広がってゆくことだ。

 たとえば、火星からの隕石に生命らしき痕跡があったという発見の意味はどこにあったのか、火星に行った探査ロボットが何を成し遂げたのか、シューメイカー・レヴィ彗星が木星に衝突したとき科学者たちが何を見いだしたのか、そういった個々のトピックが、この本ではひとつにつながり、体系として頭に入ってくる。

 よい入門書で、かつ時代を超えて、大人になってもずっと大切にしたい本は少ない。これはその数少ない本のひとつだ。

(朝日中学生ウイークリー 2007年10月21日号より)




ビッグバン宇宙論
サイモン・シン/著
青木薫/訳
新潮社 上下各1600円+税
 おすすめする人 作家・瀬名秀明

 本の世界を広げてゆくやり方にはふたつある。同じ題材を辿る方法と、同じ作者を読んでゆく方法だ。科学の本も例外ではない。

 サイモン・シンの『ビッグバン宇宙論』は、夏休みに科学書の世界を広げるきっかけとしてうってつけの本だ。宇宙はどうやって生まれたのだろう? 古代の人たちは地球が世界の中心にあると考えていた。しかし普通に空を見上げれば、天動説に納得してしまうのは当然のこと。昔の人にとって、それは最先端の科学的推論だったはずだ。

 つまり宇宙の謎を解き明かす人類の営みは、人類が自然を観察し、それを理論と摺り合わせてきた歴史だ。この本を読み進めてゆくと天動説と地動説を比較する表が現れる。最初のうち、天動説が優勢だ。でもさらに進んでガリレオの時代になれば、地動説に合致する観察結果の方が多くなってくる。科学が刻々と動いている様子が伝わってきて、心臓がどきどきしてくる。この緊迫感は本当にすごい。

 アインシュタインの相対性理論は、宇宙が一点から爆発して誕生したのかもしれないという恐ろしい仮説を導き出した。ビッグバンは本当にあったのか、それとも宗教家が考えたように、宇宙は永久不変のものなのか? アインシュタインは悩んだ末、宇宙が不変であるように、自分の数式を書き換えてしまった。ここからが第二ラウンドだ。両方の仮説を比較する表が現れる。最初は定常宇宙論が優勢だ。さあどうなる?

 著者のサイモン・シンは誤った理論を唱えた人を決して非難しないが、アインシュタインさえも英雄として書かない。そこが素晴らしい。すべての科学者がいきいきとしている。

 上下2冊のハードカバーだからといって怯まないでほしい。読み終えたらきみはきっと、さらに先の最新宇宙論を知りたいと思うだろう。サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』や『暗号解読』も読みたくなる。
 「ああ、面白かった!」
 そう呟いたら、次の一冊がきみを待っている。

(朝日中学生ウイークリー 2006年7月16日号より)

わたしも読みました!

東大院生・なう
 僕がこの本を読んでまず感じたことは、硬く難解に感じる科学理論にも、その裏には多くの人間ドラマがあるということだ。もちろん、「宇宙は一点から始まった」というビッグバン宇宙論そのものも非常に面白い。しかし、この理論が出来上がるまでには、多くの人がかかわり、研究者同士の協力や競争、時には争いや確執があった。戦争や宗教に翻弄されることもあったが、ようやく1つの理論が認められるようになったのである。

 本書では、天動説・地動説論争から現在に至るまで、何百年にもわたる紆余曲折の末にようやくビッグバン宇宙論が人々に浸透する歴史を、実に生き生きと描いている。この本を読めば、数字と式だけだと思っていた「科学」が、実にダイナミックで人間味あふれる存在であることに気づく。科学が苦手で嫌いだった人も、様々な視点から見つめる科学に親しみを感じられるようになるだろう。




ようこそ宇宙の研究室へ すばる望遠鏡が明かす宇宙のなぞ
布施哲治/著、くもん出版、1200円+税

 おすすめする人 東大院生うっちー

 宇宙の難しいことはわからないけれど、星空を見上げるのは好き。皆さんの中にはそんな人が多いのではないだろうか。空気のきれいな山などで見上げた星空の美しさに、息をのんだことがある人もいるだろう。この本「ようこそ宇宙の研究室へ」は、そんな人に贈る宇宙科学への招待状だ。

 この本には、宇宙と太陽系についての基本知識がまとめられているほか、望遠鏡のしくみと歴史、「すばる望遠鏡」の観測から得られた新しい発見、そして、「すばる」利用の手続きから実際の観測までの流れなどが、親しみやすい表現でつづられている。

 「すばる」は、国立天文台ハワイ観測所にある、世界最大級の天体望遠鏡だ。どのくらい大きいかというと、望遠鏡の中にある鏡の直径が8.2m。これだけ大きな鏡を作るのはとても大変なことで、実に7年もの歳月が費やされたという。誰も見たことのないものを見たい、誰も知らないことを知りたいという、今も昔も変わらない人類の思いが込められた大きな大きな望遠鏡は、何億光年ものかなたの天体の姿を映し出し、私たちに宇宙のなぞを解き明かすヒントを与えてくれる。

 著者の布施さんは、小学生のころに読んだ図鑑をきっかけにして宇宙に興味を持ち、今もその頃の思いを大切にしながら、日々研究に打ち込んでいる。もしかしたら、この本のなかに皆さんの将来の姿が見えるかもしれない。

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