こどもアサヒ

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ぼくの家は「世界遺産」

小松義夫/著
白水社、1500円+税
 おすすめする人 作家・瀬名秀明

 小松さんはあるとき友達からインドネシア・スラウェシ島にあるふしぎな家のことを聞く。その島では子どもが生まれるとビッティという木を植え、子どもが育って大きくなったらその木を切って船の材料にし、残りで家を建てるのだという。ところがその木は曲がっていて、家の柱も曲がっているというのだ。

 この本はカメラマンでジャーナリストである小松さんが世界の家を見て回ったその旅行記だ。ふしぎな家が次々と登場する。ジャングルに建てられた巨大スタジアムのようなシャボノという集合住宅。ベネズエラの深い森の河岸につくられた水上家屋。小松さんはアメリカの出版社に連れられて、ティピというテントの中で170年も前の生活スタイルも体験する。三角錐の高い天井は気持ちよさそうだ。そしてインドネシアの島では本当にくねくねと曲がった柱の高床式家屋と出あう。小松さんはその家に上がって、ゆらゆらした柱を見ているうちに、その「自由」さに楽しさを覚え、感嘆する。

 家とは周囲に広がる大自然の環境とぼくたち家族の境界につくられるとびきり素敵な「遺産」なんだ、と読んでいて実感してくる。本書が面白いのは、家を探し訪ねている小松さんが、その土地で一歩ずつ環境に入り込み、人と対話し、道を進んでゆくその過程が自然体で書かれているからだ。小松さんはジャーナリストだから見事な写真を撮ってぼくたちに見せてくれる。もしきみが環境についての科学者なら、ここからどんな研究をしてみたいと思うだろう? 人々の暮らしとこの地球をどのような視点で結ぶだろうか? 壁に描かれる紋様、人々と共にある動植物の生態、季節に応じた生活の知恵。それだけではない。政治的に不安定な国とどのように向き合い、その社会や文化を学ぶのか。

 環境の科学はぼくたちに多くのことを突きつけてくる。これをきっかけに多くの本へ手を伸ばしてみよう。
 書店や図書館、図書室の棚は、地球の入り口だ。

朝日中学生ウイークリー2008年5月18日号から)



アルツハイマー病にならない!
井原康夫、荒井啓行/著、朝日新聞社

 おすすめする人 東大院生のじ

食事の効果で体を守る
 みなさんはアルツハイマー病を知っていますか? 脳の神経細胞が死んで、数が減少し、記憶力や判断力が低下して認知症になっていく病気です。日本では、アルツハイマー病を患った人は100万人以上いるといわれ、将来的にはさらに患者数が伸びるといわれています。

 この病気を完璧に治療する方法はまだありませんが、食生活などの生活習慣が病気と関連しているといわれています。例えば、魚、野菜、豆類などを多く摂取する地中海料理を食べていると病気の発症が下がったなどの報告があり、予防効果のある食事の研究が盛んになりました。さらに動物を使った実験で、クルクミンという物質に病気の予防効果があったといわれていますが、このクルクミンはカレー粉に含まれています。アメリカでは、クルクミンが実際に人に予防効果があるかどうかを調べる臨床治験も行われています。

 この本には食事のレシピがついているので、参考にしながら、料理に取り入れて、食生活を見直してみるのもいいかもしれませんね。



文章読本さん江
斎藤美奈子/著、ちくま文庫

 おすすめする人 東大院生べぇ

「流派」選んで書き物攻略
 先日、修士論文というリポートの親玉をなんとか提出した。研究者は、この論文書きという苦行と一生つきあっていかなくちゃいけない。

 論文書きに限らず、文章書きにはみんな苦労するようで、本屋にいけば、「論文の書き方」「やさしい文章術」といった、文章読本と呼ばれる本がたくさん並んでいる。

 しかしこの文章読本、結構くせ者である。「話すように書け派」と、「話すようには書くな派」という2つの「流派」が対立しているのだ。

 本書は、綿密な調査と分析で、この「流派」対立に切り込んでいく。各「流派」の源流を突き止めていくうちに、著者はなんと、学校での作文教育にまでたどり着く。

 夏休みの大敵、あの読書感想文。その背後に「流派」間の覇権争いがあったとは……メイワクな話だ。

 僕の見立てでは、どちらの「流派」も一長一短。まずはどちらかの「流派」を極めてみることを勧める。



スタバではグランデを買え!
吉本佳生、ダイヤモンド社

 おすすめする人 東大院生べぇ

価格の秘密がわかるよ
 昔々、僕が中学生の頃、友達とよくマクドナルドへ行った。だいぶ年をとった今、僕はおしゃれなコーヒーチェーン「スターバックス(スタバ)」に一人で通うようになった。

 スタバでコーヒーのSサイズ(280円)を飲みながら本を読む、というのが僕のささやかなぜいたくだ。本のタイトルにあるグランデというのは、特大サイズ(380円)のことを指す。これを買えだなんて、ぜいたくすぎる!

 なんでまたバカ高いグランデを薦めるのか? グランデはSのちょうど倍のサイズ。なんと、たった100円でSをもう1杯分飲めるのだ。

 なぜ追加分は安いのだろう? それは、新しく2杯別々にいれるより、一度に2杯分いれる方が楽だからだ。つまり、手間が少ない分安い。

 手間を考えると価格の秘密が見えてくる。薬代のほとんどが、研究者がかけたたくさんの手間に対して支払われているって、知ってた?



ゲームとしての社会戦略
松原望、丸善ライブラリー

 おすすめする人 東大院生べぇ

まるで人生の攻略本
 人生は決断の連続だ、なんてことを昔の偉い人はいったらしい。決断なんていうとおおげさだけど、僕たちは毎日「今日は傘を持っていこう」など小さな決断を下している。

 この日々の小さな選択問題を「ゲーム」と呼んで、どの選択肢を選ぶのがベストなのかを研究している人たちがいる。

 その成果が凝縮されたこの本は、人生の攻略本といえるだろう。攻略本には、「不確実性」「エントロピー」「相関関係」などなど普通のプレーではなかなかみつからない秘密のアイテムが満載。ただしこれらのアイテムは、丁寧な説明があるとはいえ、使い方がちょっぴり難しい。まあそこは人生を攻略するアイテムなんだから我慢してほしい。

 秘密のアイテムを使いこなして日々の選択問題をクリアしていけば、将来はお金持ちになれる……かもしれない。



プリオン説はほんとうか?
福岡伸一/著、講談社ブルーバックス

 おすすめする人 東大院生みお

生物学版、仁義なき戦い
 数年前、米国で牛海綿状脳症(BSE)を発症した牛が見つかり、牛肉の輸入が停止され、牛丼チェーン店から牛丼が消えました。BSE牛の脳に存在する異常タンパクが正常な牛に感染し、正常タンパクを異常型に変えるという大胆な仮説を提唱したプルシナー博士は、このタンパクをプリオンタンパク質と命名し、この「プリオン仮説」でノーベル賞を受賞しました。仮説であるはずのプリオン説が真実であるようにみえた瞬間です。

 しかしこの本の著者を含め、プリオン説を支持しない研究者もいます。ノーベル賞は決して科学のゴールではなく、いつでも新たな仮説の挑戦を待っているのです。

 プリオン説を裏付ける証拠と、それに反する証拠を追いながらこの本を読み進めていくと、プリオン説は本当に本当なのか?と思えてきます。ノーベル賞に挑む現在進行形の戦い、さて勝つのはどちら?



はじめて考えるときのように
野矢茂樹、PHP文庫

 おすすめする人 東大院生べぇ

哲学者と漫才しよう
 古い哲学の本の中に、プラトンとかソクラテスみたいな偉い人同士が議論する様子を描いた話がある。これらは、対話形式で物語が進むことから対話編ってよばれている。

 この本も対話編といってもいいだろう。それも「あなた」と「哲学者」の対話。哲学者はこの本の中で、考えるってどういうこと?とあなたに問いかける。硬い話だからってすぐに対話をやめないでほしい。

 あなたの話し相手は、実は、哲学という難しいお話を笑い話に変えてしまうことができる陽気な哲学者、というか漫才師なんだ。例えば、君のことをいつも考えている、と話す男は、トイレに行くときも君のことを考えているのかな、とヘンな話題をもちだしてくる。

 対話編のもう一人の主人公となって楽しく漫才するだけで哲学的な考え方が身につくお得な本だ。難しく考えず、まずは愉快な読み物として楽しんでほしい。



議論のレッスン
福澤一吉/著、NHK出版・生活人新書

 おすすめする人 東大院生みお

授業がおもしろくなる?
 「昨日はカレー食べたから、今日はラーメンがいいな」。こう言われたら、多くの人がうなずくでしょう。では、「昨日は英語のテストだったから、今日はラーメンがいいな」と言われたら? 変だと思いませんか。

 会話と議論には実は守るべき共通のルールがあります。『議論のレッスン』は、変な会話とまともな会話の違いを丁寧に説明し、そのルールを自然に身につけさせてくれます。会話がかみ合わないときは、ルールが守られていないのです。科学者が成果を発表して信用されるためにも、ルールに沿った議論ができないといけません。

 残念ながら日本の学校ではこのルールを教えないので、多くの大人が、ルールを知らずに変な議論や妙な会話をしています。

 この本を読めば、つまらない授業がなぜつまらないのかも、きっとわかるようになってしまいますよ!



世界一やさしい問題解決の授業
渡辺健介/著、ダイヤモンド社

 おすすめする人 東大院生ようへい

 例えば、中学生の君があるA高校に入学したいと思ったとする。そのためには何をしなくてはいけないだろう? この本はそんな目標を実現するためのガイドブックだ。

 まず目標はなるべく具体的にしよう。そこで「A高校にテスト入試で合格する。そのためには、A高校の入試問題で8割を解く」としてみる。次は、自分の現状と目標とのギャップを具体的に表そう。その結果、入試問題は過去問でまだ6割しか解けないとわかる。ここでめげずに、目標達成への方法を考えよう。まずはいろんな可能性を書き出す。どの教科、分野を伸ばそう? それから、その可能性の中から実現できる選択肢を絞り込んで、実行へのプランを作る。それで目標が達成できることを確認したら、あとは実行あるのみ。

 世の中には困難な問題が山積みで、それらを解決するためには自分で考えて行動することが重要だ。この本の方法を用いて、チャレンジしよう。



ネコを撮る
岩合光昭/著、朝日新書

 おすすめする人 東大院生べぇ

写真家が持つ科学者の目
 東京大学の駒場キャンパスにはたくさんのネコがいる。キャンパス内のネコはかなり人になれているけれど、それでも近づいていくのはなかなか難しい。ましてや写真をうまく撮るなんて困難この上ない。

 ネコを撮るのが上手なことで有名な写真家の岩合光昭さん。そのイワゴーさんがネコを撮るコツを教えてくれる本が題名もそのものの『ネコを撮る』だ。

 プロの写真家のどんな素晴らしいテクニックが披露されているのかと期待して読んでみると、いい意味で裏切られた。上手に写真を撮るためのコツは、いかにうまくカメラを使うかといった小手先のテクニックではなく、ネコをしっかりと観察することみたい。

 これって実は研究と同じ。いい実験をするには、実験技術よりもまずはしっかりと観察することが大切。だから写真家の目を持つ人は、きっといい科学者になれるに違いない。



新ネットワーク思考
アルバート・ラズロ・バラバシ、NHK出版

 おすすめする人 東大院生べぇ

友達何億人できるかな?
 広島駅の喫茶店で学会のプログラムを眺めていたときのこと。近くの席の女子高生が「○○ちゃんは島谷ひとみの親せきらしいよ」「へー、すごーい」といった話をしていました。

 有名人が身近にいると聞くと、やっぱなんとなく「すごい」と思ってしまいますね。実は僕もメジャーリーガーが身近にいます。おやじの会社の後輩が、マリナーズの捕手・城島と中学時代にバッテリーを組んでいたのです。すごいでしょ。

 でもこれって本当にすごいこと? 友達の友達をたどっていくと、案外みんなつながっているのではないだろうか。こんな問いに真剣に取り組んだへんてこな科学者たちがいて、この本の著者はそのうちの一人。答えはなんと「友達の友達の友達の友達の友達の友達」までたどればすべての人がつながっているという。

 世界は案外狭かった。この小さな世界は人と人とのつながり以外にも多く見られます。具体例は本で!



モモ
ミヒャエル・エンデ/著、岩波少年文庫、840円

 おすすめする人 東大院生とってぃ

モモと一緒に考える時間
 1年のうち、授業の時間はどのくらいで、勉強や遊び、睡眠はどれくらいだろうか。中学生のころ、ぼくはいろいろ計算してみたことがある。学校にいる時間も寝ている時間も、生活の3分の1くらいだとか。

 さて、もしも時間を貯めることができるとしたら?

 「無駄なことはやめて、時間を貯めよう」。時間貯蓄銀行の灰色の男たちの誘いに乗って、大人たちが次々と時間の節約だけに心を奪われていく。異変に気づいた少女モモは、悩みながらも立ち上がる。

 エンデがこんな世界を書いたのは、いまから30年以上も前のこと。この物語はいまだに色あせない。

 その後も、ぼくらの生活は変化しつづけている。便利な道路が開通したり、思いついたらすぐに携帯電話で話せたり、ニュースを一瞬で見ることができたり。科学・技術がぼくらの時間をどう変えたのか、モモと一緒に考えてみてはいかが。



有機化学美術館へようこそ
佐藤健太郎/著、技術評論社、1659円

 おすすめする人 東大院生細川研知

ミクロの美しい世界へ
 世界には、目では見えませんが確実に存在しているものがあります。例えば天の川は肉眼では薄い光の広がりですが、望遠鏡で星の距離を測って地図を描くと、棒渦巻銀河であることが分かります。

 私たちの体は原子で出来ているという話はよく聞くと思いますが、原子や分子の世界も決して肉眼では見えません。計測した数値を形に当てはめ、絵として表現することで、その美しい形がはっきりと見えるようになります。

 この本では様々な美しい構造の模式図から、ミクロの世界をかいま見ることができます。分子の姿はある法則によって決まり、その法則に従って動きます。ちょっと難しくなりますが、分子の踊る姿や論理的な面白さを知れば、ミクロの世界はもっと楽しめるようになると思います。



絶対音感
最相葉月/著、新潮文庫

 おすすめする人 東大院生とってぃ

 楽器がなくても「ド」の高さがわかる。幼いころの訓練で身につくそんな「絶対音感」は、はたして音楽に必要なのだろうか。最相さんは、音楽教室の先生をはじめ、音楽家や研究者など、200人もの人に話を聞きに行く。

 ぼく自身、小さいころから姉のピアノを聞かされて育ったので、中2のとき、逆に多くの人が絶対音感をもたないことを知って驚いた。そして自分自身をふりかえって、音楽を聞くとすぐに楽譜を思い浮かべていることに気がついた。音程もなにも考えずに、そのまま音楽に触れたいと思った。

 音だけみても、人それぞれに感じ方がまったく違う。それでも、音楽の感動をほかの人と共有できてしまうのは不思議なことだと思う。



「右と左」の不思議がわかる絵事典
富永裕久/著、PHP研究所

 おすすめする人 東大院生かむかむ

 鏡を見ると、もう一人の自分がいる。でも、上下は変わらず、左右だけがあべこべになるのはなぜだろう。この絵事典は右と左のあらゆる謎に答えてくれる。

 アラビア語が右から左へ書かれるわけは? 日本の自動車はどうして左側通行なの?など、ふと気付くと右と左には不思議なことばかり。ガッツポーズなど心からよろこんでいるときの動きは左右対称だけど、人目を気にしたポーズは非対称になる。今まで気にしたことはあるだろうか?

 右と左は、原子よりももっと小さな素粒子の世界から、銀河の渦の巻き方までありとあらゆるところに登場する。国語、数学、理科、社会、体育や音楽、給食にだって右と左は見つかる。今日から「右と左」をちょっとだけ意識して過ごしてみよう。絵事典にも載っていない新たな「右と左の不思議」を発見できるはずだ。



あたらしい教科書 0.学び
プチグラパブリッシング

 おすすめする人 東大院生とってぃ

 中学生のころは、生活の大半を学ぶことで過ごす。でも学びは学校を出てからも一生続くものであって、実は意外と楽しめるもの。この本では数学、哲学から、音楽、マンガ、お菓子まで、17人の学び続ける人びとが登場する。

 例えば雑誌やテレビの星占いで大活躍の鏡リュウジさん。占いは「ただの迷信かもしれない」と表明しながらも、占いに魅力を感じて研究を続けていて、さらに現代での意義も認めている。自分の経験や知識の枠にない「もう一つの視点」から物事をとらえることができる、と。

 17人が歩んできた人生をながめるだけでもおもしろいし、学校以外での学びを考えてみることによって、学校での学びが自分にとってどんな意味をもつかを見つけることができるかもしれない。



人間ものがたり
ジェイムズ・C・デイヴィス/著、日本放送出版協会

 おすすめする人 東大院生あっきー

 歴史を勉強していると、西暦と出来事の羅列のよう。ただ覚えているだけでは、おもしろくありません。

 歴史を楽しむには、登場人物の気持ちになってみましょう。「1853年・ペリーが浦賀に来航」とありますが、なぜペリーは日本に来ようとして、それに対し日本人はどう感じたのでしょう。歴史の背景には、かならず「人間」がいて、彼/彼女らの生々しい感情が、世界を動かすのです。つまるところ、歴史とは人間が作り出す「ものがたり」。こんなおもしろい話はありません。

 石器時代から、9・11米同時多発テロまで。歴史を知ることで現在を知り、そしていまも歴史の1ページが刻まれていると実感できるでしょう。ちょっと背伸びして、世界の歴史を感じてみてはいかが?

Science Potについての意見や感想はこちらへ weekly@asagaku.co.jp


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