こどもアサヒ

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だまされる視覚 錯視の楽しみ方
北岡明佳/著
化学同人
1400円+税
 おすすめする人 作家・瀬名秀明

 まずはこの本の著者、北岡さんのウェブサイトを覗いてほしい。いきなりとぐろを巻いたヘビのような模様が現れて、それがぐるぐる回転しているように見えるだろう。これは「錯視」、つまり目の錯覚だ。でもこれほど強烈な錯覚に、きみはびっくりするに違いない。いったいどうやったらこんな図が描けるんだ?

 ぼくたちの脳は騙されやすい。でもなぜ騙されるのかはいまだに難しい科学の問題だ。著者の北岡さんは大学で知覚心理学という分野を研究し、その成果をもとにたくさんの錯視図をデザインし、『トリック・アイズ』という本をつくった。模様が揺れ動いて見えたり、光がぱちぱちと点滅して見えたり、ぼくもだまし絵や錯覚の絵は大好きでよく画集を買うのだが、北岡さんのデザインはちょっと他では見かけないほどダイナミックで、圧倒させられる。

 本書は世界初の錯視デザインの指南書だ。錯視の研究は19世紀から盛んにおこなわれて、さまざまな効果が発見された。例えば、灰色の四角は黒い背景の前に置かれると実際より明るく見えて、白色の前だと暗く見える。だがそれだけでは面白くならない。ここからいかに人を驚かせ、楽しませる作品をつくり上げるか? 科学の知識だけでなく芸術的センスも問われる。

 北岡さんは本書でひとつずつ有名な錯視効果を紹介し、そこからいかにオリジナルの作品が出来てゆくかを説明してゆく。そして興味のある人は自分でもパソコンで創作してみてほしいとハッパをかけるのだ。

 ぼく自身はこの本を読みながら、エッシャーや福田繁雄、安野光雅らの作品に夢中になっていた子どもの頃を思い出した。やはりぼくもエッシャーを真似てだまし絵をよく描いていた。

 現在、錯視デザインのプロアーティストは世界で北岡さんただひとり(と本人がいっている)。でもこれを読んだきみが、世界で2番目になるかもしれない。科学と芸術の根はひとつ。心の謎は、アートなんだ。

(朝日中学生ウイークリー 2007年2月18日号より)

わたしも読みました!

東大院生・かむかむ
 まずはこの本の著者、北岡さんのウェブサイトを僕も覗いてみた。北岡さんの代表作である「蛇の回転」の錯視には圧倒される。パソコンの画面で見ると、実際に回転しているのではないか、と疑いたくなる。しかし、紙に印刷されたものを見ても回転して見えるので、錯視であることにやっと納得できる。

 錯視はなにも特別なことではない。例えば、日の出や日の入りに水平線に見える太陽は、昼の空に見える太陽に比べて大きく感じる。これも錯視である。では、錯視はなぜ起きるのか。その原因については、この本にはほとんど書かれていない。なぜなら、錯視の原因となる脳や神経活動の仕組みが、まだほとんど分かっていないからである。しかし、原因が分からなくても、見て楽しむことはできる。そして、作ることもできるのである。それが、「究極の錯視ガイドブック」とうたっている本書の最大の特徴だ。

 そこで、実際に僕もひとつ作ってみた。ホワイト効果と呼ばれる明るさの錯視だ(ちなみに、『ホワイト』は研究者の名前だそうだ)。上下の「朝中」という文字は同じ明るさだが、下が上よりも明るく見える。自分で作ってみると、見るときとはまた違った面白さを実感できる。錯視作りは間違いなくお勧めである。



だまされる脳 バーチャルリアリティと知覚心理学入門  
講談社ブルーバックス
 おすすめする人 東大院生・細川研知

 もし火星にいけるとしたら何をしてみたいですか?

 私たちが火星に行けるのは当分先になりそうです。現在の技術では火星に行っても帰ってこられません。でも、ロボットなら行けます。ロボットが火星で見たこと、触ったことを私たちの脳に伝え、脳をうまく「だます」ことができれば、ロボットを通じて火星旅行ができるかもしれません。

 脳を「だます」ためには、私たちの脳が何を感じて、どのような情報を送れば現実感のあるだまし方ができるか調べる必要があります。脳を「だます」技術をバーチャルリアリティーと言い、脳が何を感じているか調べるのが知覚心理学や脳科学です。

 この本では、その両方を紹介しています。

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