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おすすめする人 作家・瀬名秀明
まずはこの本の著者、北岡さんのウェブサイトを覗いてほしい。いきなりとぐろを巻いたヘビのような模様が現れて、それがぐるぐる回転しているように見えるだろう。これは「錯視」、つまり目の錯覚だ。でもこれほど強烈な錯覚に、きみはびっくりするに違いない。いったいどうやったらこんな図が描けるんだ?
ぼくたちの脳は騙されやすい。でもなぜ騙されるのかはいまだに難しい科学の問題だ。著者の北岡さんは大学で知覚心理学という分野を研究し、その成果をもとにたくさんの錯視図をデザインし、『トリック・アイズ』という本をつくった。模様が揺れ動いて見えたり、光がぱちぱちと点滅して見えたり、ぼくもだまし絵や錯覚の絵は大好きでよく画集を買うのだが、北岡さんのデザインはちょっと他では見かけないほどダイナミックで、圧倒させられる。
本書は世界初の錯視デザインの指南書だ。錯視の研究は19世紀から盛んにおこなわれて、さまざまな効果が発見された。例えば、灰色の四角は黒い背景の前に置かれると実際より明るく見えて、白色の前だと暗く見える。だがそれだけでは面白くならない。ここからいかに人を驚かせ、楽しませる作品をつくり上げるか? 科学の知識だけでなく芸術的センスも問われる。
北岡さんは本書でひとつずつ有名な錯視効果を紹介し、そこからいかにオリジナルの作品が出来てゆくかを説明してゆく。そして興味のある人は自分でもパソコンで創作してみてほしいとハッパをかけるのだ。
ぼく自身はこの本を読みながら、エッシャーや福田繁雄、安野光雅らの作品に夢中になっていた子どもの頃を思い出した。やはりぼくもエッシャーを真似てだまし絵をよく描いていた。
現在、錯視デザインのプロアーティストは世界で北岡さんただひとり(と本人がいっている)。でもこれを読んだきみが、世界で2番目になるかもしれない。科学と芸術の根はひとつ。心の謎は、アートなんだ。
(朝日中学生ウイークリー 2007年2月18日号より)
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