こどもアサヒ

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エンサイクロペディア 太古の世界 恐竜時代
ロバート・サブダ、マシュー・ラインハート/作、わくはじめ/訳、大日本絵画

 おすすめする人 東大院生・かずみ

恐竜への探究心ポップアップ
 ページを開くとビックリ、目の前にティラノサウルスが現れる! これは精巧に作られた恐竜たちがページのあちこちから飛び出す、最新の恐竜情報が満載のポップアップ恐竜百科事典です。美しく彩られ、そして大迫力に満ちた恐竜たちの、まるで生きているかのような姿に、驚きと感動の連続です。

 私は、科学者が研究を進める根底には、まさしくここで感じるものと同じ、「自然に対する驚き、感動」があるのではないかと思っています。「なぜこうなるのだろう?」「どういう仕組み?」、そういう探究心が研究の第一歩なのです。それは恐竜に限らず、普段の生活にも散りばめられています。たとえば、なぜ空は青いのかな? これもやはり、約130年前までは不思議のひとつでした。不思議のひとつひとつを丁寧に研究し、積み重ねていった結果、今の科学技術があるのです。

 この絵本で感じる恐竜への畏怖や驚き、関心は、まさに探究心の小さな芽です。芸術作品のように眺めるもよし、英語版を辞書片手に解読していくもよし、そして恐竜の生きた時代、環境に思いをはせるもよし。様々な味わい方ができるすてきな本です。



メアリー・アニングの冒険
吉川惣司、矢島道子/著
朝日新聞社、1400円+税
 おすすめする人 作家・瀬名秀明

 これは13歳にして全長5・5メートルのイクチオサウルスの完全骨格の化石を見つけたメアリー・アニングというひとりの女性の物語だ。メアリーはイギリス南部の美しい町ライムに生まれ育ち、海岸沿いの白亜の岩肌からその後もすばらしい化石を次々と採取して、当時の考古学者たちに提供していった。まだダーウィンは『種の起源』を発表していないが、少しずつ人々の「進化」という考え方が受け入れられていった時代だ。メアリーは学者ではなく化石を売って商売する一般人で、しかも女性だったから、学者としての地位は認められなかった。それでもメアリーの化石で多くの学者が重要な研究を進めていった。いったい彼女はどんな女性だったのか?

 この本は、いわば幻のアニメ映画の解説本だ。著者のひとり吉川さんは『ルパン三世』などの脚本家・監督。彼は「メアリーの話をアニメにできないか?」と思い立ち、どんどんのめり込んでゆく。そして高校教諭の矢島さんと出会い、ふたりでメアリーに関する文献をくまなく調べてゆく。結果的にメアリーのアニメは製作されなかったが、まさに本書には良質な長編アニメを見たあと余韻に浸るような充実感がある。

 『ハウルの動く城』でも何でもいい、あなたのお気に入りのアニメを思い出し、その絵でメアリーを夢想してみよう。読みながらあなたのメアリーが動き出してくるはずだ。本書では実在の文献に描かれたメアリー像を補完するかたちで、吉川さんたちが彼女の言葉やふるまいを想像して加えている。そのシーンがいきいきと頭に浮かんでくる。

 クライマックスはメアリーがロンドンへ大旅行し、博物館で多くの化石や剥製を見学するシーンだろう。しかしその後もメアリーは学者あての手紙に聡明な知性を見せ、恋を語る。そして最後までひとりの人間としてプライドを持ち続ける。

 いつかぜひ、皆さんの中から本書をアニメ化する人が出てきてほしい。

(朝日中学生ウイークリー2008年1月20日号から)



もっと!ドラえもん
小学館 1300円+税
 おすすめする人 作家・瀬名秀明

 小学校を卒業した春に観た『のび太の恐竜』は、26年経ったいまも、ぼくのいちばん好きな映画だ。
 「『野性のエルザ』という本を、知っていますか。まだ乳ばなれしていないライオンの孤児エルザを、一人前に育てあげ、ふたたび大自然の中へ帰してあげる、というお話です。ぼくは、これを読んで、たいへん感動しました。そこで、この感動を、なんとかドラえもんの世界に再現できないものかと思いました」と藤子・F・不二雄先生は語っている。フタバスズキリュウの卵を発見したのび太は、生まれてきた子をピー助と名づけて育てる。そして白亜紀の日本に送り帰すため、のび太たちは大冒険をする。
 この26年間で恐竜学はめざましく進歩した。今年公開された『のび太の恐竜2006』のティラノサウルスはもはやゴジラのようには歩かない。前作でのび太たちを襲った翼竜プテラノドンも、実は華奢な体つきであることがわかってきた。だから今回の映画ではもっと大きなクェツァルコアトルスに役を奪われている。
 フタバスズキリュウの化石が福島県のいわき市双葉層群で見つかったのは1968年、ぼくが生まれた年だ。発見者の鈴木直さんは、そのとき高校2年生だった。雑誌『もっと!ドラえもん』の第5号に鈴木さんの記事が載っている。鈴木さんは中学生の頃から地元の地層を掘っていたそうだ。いまは恐竜学者になり、ピー助の卵の模型を手に取材を受けている鈴木さんは、とても嬉しそうな顔をしている。
 フタバスズキリュウが恐竜でないといったら皆さんは驚くかもしれない。首長竜は爬虫類の仲間なので、厳密にいうと恐竜には分類されない。でも映画を観たら、きっときみもピー助が愛しくてたまらなくなる。のび太やぼくたちにとってピー助は、いつまでもかけがえのない「恐竜」だ。
 『のび太の恐竜』に感動した皆さんの中から、未来の恐竜学者が生まれるだろう。それが物語の力と科学の夢なんだとぼくは思う。

(朝日中学生ウイークリー 2006年4月16日号より)

わたしも読みました!

東大院生・かずみ
 あなたは、映画「のび太の恐竜2006」をもう見ましたか?私は、元祖「のび太の恐竜」の大ファンでした。だからなんとなく、リメイクされたものを見るのには抵抗があって、見そびれてしまいました。けれど、ここで瀬名先生が紹介している『もっと!ドラえもん No.5』を読んだら、映画館で見なかったことをとっても後悔しました。
 『もっと!ドラえもん No.5』には、「のび太の恐竜2006」に関わる色んな人の記事が載っています。主題歌を歌うスキマスイッチのドラえもんへの思い。藤子・F・不二雄さんが語る「ぼくの恐竜」。そしてフタバスズキリュウの名前のもとになった、化石発見者である鈴木直さんのインタビュー。「自分の名がついた海竜が映画に登場し、ドラえもんと一緒に冒険をしている。とても素敵なことですよね」そう語る鈴木さんの顔には少年時代の面影が表れていました。この本を読むと、「のび太の恐竜2006」にこめられた、たくさんの人の情熱がビシビシ伝わってきます。映画と本、セットで楽しみたい作品です。



失われた世界
コナン・ドイル/著・創元SF文庫など

 おすすめする人 東大院生 たっけー

 「おじいちゃんの子供のころって、恐竜いたー?」
 小学校低学年のころの話だ。祖父母の家に遊びに行ったぼくは、いきなりこんなことを聞いたそうだ。今では笑い話だが、当時のぼくにとっては大真面目な質問だった。
 もちろん、おじいちゃんが子供のころはおろか、人類が誕生したときにはすでに恐竜は絶滅していたというのが科学の常識だ。でも、もしかしたらどこかにまだ恐竜が生き残っているのでは・・・。たまにはそんな空想に浸ってみるのも、とっても楽しいことだ。

  『失われた世界』は、生き残った恐竜を捜し求める冒険小説だ。南米の奥地に恐竜が生き残っている台地がある!――― 動物学者・チャレンジャー教授がこう言い出すところから、物語は始まる。こんなとんでもないことを言う科学者を、周囲の研究者やマスコミが嘲笑(あざわら)うのも当然だ。そこで真実を証明しようと考えた教授は、探検隊を結成し命がけの旅に出る。ようやく台地の上に登ったと思いきや、すぐに帰り道を失い台地に取り残されてしまう。そんな状況でも、必死に標本採集や議論に熱中している科学者たち。そうこうしているうちに、何者かにキャンプが襲われる。肉食恐竜をはじめ、いろいろな危機も訪れる・・・。
 ぼくがこれを初めて読んだのは、中学に入る前だった。すでに、人間と恐竜は同じ時代を生きていないことを知っていた年齢だ。それでも、手に汗をにぎりながら読み進めた記憶がある。探検隊は、無事に祖国に帰ることができるのだろうか。そして、恐竜が生きているということをみんなに信じてもらえるのだろうか。胸を高鳴らせながら、ページをめくった。それもあってか、物語の中で闊歩(かっぽ)していた恐竜のイメージは、今でもぼくの中に鮮明に残っているのだ。

 「おじいちゃんの子供のころって、恐竜いたー?」
 何十年後かに孫にそう聞かれたら、ぼくは自信を持って答えるだろう。
 「恐竜はとっくの昔に死に絶えたけれど、物語の中では生き続けているんだよ。もちろん今も」って。

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