|
おすすめする人 作家・瀬名秀明
エジソンというと、1%のひらめきと99%の努力だとか、有名な逸話はいろいろあるが、どうも全体像のつかめない人だ。特許に固執して金儲けばかりしていた人、と悪くいわれることもある。
この本を読んで、エジソンに対する印象が変わった。エジソンの真の想像力とは、たくさんの発明をまとめあげて、社会へつなげてゆくことの想像力だったのだ、とこの本はいう。ものをつくるのが好きな人なら誰でも、自分の発明で世の中をよくしたいと夢を描くだろう。でも白熱灯ひとつを発明したからといって、すぐに社会が変わるわけではない。ではどうすればいいんだろう。ものづくりのシステムと、社会のシステムを考え抜く必要がある。
この本は「理想の教室」というシリーズの1冊だ。エジソンの発明スケッチや当時の文献をたくさん紹介しながら、エジソンが実際には何をやろうとしていたのか、何に成功して何に挫折したのかを、読者と一緒に考えてゆく。白熱灯を売るためには街や家庭への配電システムをつくらなければならない。ではそのシステムがよいか悪いかどうやって判断する? エジソンは円筒型の蓄音機をつくったが、円盤型(レコード)に負けた。なぜエジソンは円筒型にこだわったのか。
どんなにいい技術でも社会に受け入れられないと普及しない。映写機を発明したエジソンはたくさんの特許を取って、自分たちの規格を使わない業者を閉め出そうとした。発明をシステムとして売るためには大切なことだったかもしれない。でもそれは差別を生み出す。
ぼくたちはエジソンの成功と失敗を超えることができるだろうか。理系の想像力は、社会をどのように変えてゆけるのか。平易な言葉で書かれているのに、この本の問いかけは重い。でも本当にものづくりが好きな人なら、きっとこの本から強いメッセージを受け取るだろう。もしきみが技術者志望なら、大人になってから読み返してみてほしい。大切な一冊になるはずだ。
(朝日中学生ウイークリー 2006年11月19日号より)
|