東京大学大学院で |
生命科学の研究をのぞいてきました |
朝中読者がリポート/院生が説明 |
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| 野嶋さんから研究内容の説明を受ける中学生=いずれも東京都目黒区の東京大学駒場キャンパスで、撮影・市川博正 |
東京大学で科学の研究をしている大学院生らが執筆する朝日中学生ウイークリーの人気連載「サイエンス・ポット」。
執筆者のひとり、野嶋純さん(博士課程2年)が所属する東大大学院総合文化研究科生命環境科学系「石浦研究室」を、朝中読者が訪ねました。
朝中の「研究室見学リポーター募集」に応募して抽選で選ばれた8人です。どんな研究をしているの? 科学者になるにはどうしたらいいの?
参加者がリポートします。
どんな研究をしているの?
アルツハイマー予防など遺伝子レベルで研究
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| アルツハイマー病予防の「食物ワクチン」として研究中のコメをマウスに食べさせる。マウスに食べさせるコメは、食べやすいよう砂糖で甘くしてあります |
石浦研究室では、認知症の一種のアルツハイマー病、トリプレット・リピート病という難病などをテーマに、遺伝子変異が人間の認知機能にどのような影響を与えているか、という研究をしています。
今回案内してくれた大学院生の野嶋さんは、アルツハイマー病予防のための「食物ワクチン」の研究をしています。
アルツハイマー病の患者さんの脳には、「老人斑」と呼ばれるシミのようなものがみられます。
老人斑の正体は「アミロイドβ(Aβ)タンパク質」。これが集まって脳にたまることで、脳の神経細胞が死滅し、発病するという説が有力と考えられています。
野嶋さんらが取り組んでいる「食物ワクチン」は、遺伝子組み換えの技術でAβの入った食物をつくり、それを食べて体内にAβを取り入れることで、体内に抗体をつくろうというもの。
インフルエンザの予防のためにワクチンを注射するのと同じようなことです。
誰でもかかる病 近い将来に期待
青森・3年・石村さん
野嶋さんは、Aβが入ったコメを溶かして、砂糖水を少し混ぜたものをマウスに食べさせるところを見せてくれました。マウスの体内で抗体が作られているか調べているそうです。
いつか、野嶋さんが研究したコメが食物ワクチンとして使えるようになり、私たちが日常で食べることによって、アルツハイマー病の患者さんが少なくなるかもしれません。
認知症の患者は2005年には世界で2000万人以上いるといわれ、誰でもかかる可能性があるそうです。
お年寄りたちや家族が安心して暮らせる社会は、もう、すぐそこまで来ているような、そんな気がしました。
強い動機で研究 私もくじけない
東京・2年・宗さん
石浦研究室では、人の役に立つ研究を進めていました。
難しい研究を進めていく上でくじけたりしないのだろうかと思いましたが、教授の石浦章一先生からは「競争で新しいことを発見する意義の方が大きい」という答えが返ってきました。
実験が好き、自分で解明するのが好き、人の役に立ちたいというはっきりした動機をもって研究者を目指している人と話をしていたら、私も頑張ろうという気持ちが強くなってきました。
石浦研究室には女性の学生も多いそうです。将来を考えるにあたって、私の選択肢が増えました。 |
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| 中学生のインタビューに答える教授の石浦章一先生(中央) |
石浦章一先生にインタビュー
アルツハイマー病は治る?
治療では完治できず 若いときから健康に配慮
研究者になるには?
専門外の知識も増やす 経験が実験にいかせる
長野・2年・北原さん
福祉施設で働いている母からいろいろな話を聞いて、「もし、祖父や祖母、周囲の人がアルツハイマー病にかかったらどうしよう?」と考えました。原因はわかっているのか、完治するかどうか、予防はできるのか、どういう予防法があるのか、といった疑問を質問しました。
石浦教授は、治療では完全に治らないため、若いときから健康に気をつけることが大切だとおっしゃいました。私たちが心がけなければならないことは、アルツハイマー病の正しい知識と理解を持つこと、発達した交通手段やインスタント食品など便利さだけを追求しないこと、自分の健康に関心を持って生活することだと思いました。
栃木・3年・大塚くん
食物ワクチンは遺伝子組み換え食物なので、人々に不安があるそうです。僕も正直不安です。でも、先生方は、一刻も早くアルツハイマー病をなくそうと頑張って研究していることがわかりました。
石浦先生は、隣りに座っているだけでオーラのようなものを感じました。僕も将来はそういう人になれるように、がんばっていきたいです。
東京・2年・東さん
インタビューで印象に残ったお話がありました。それは「研究者になるにはどうすればいいのですか?」とうかがった回答です。
「自分の専門以外の本もたくさん読むことや、いろいろな経験を積むことが大切。たくさんの知識を持っているということは、研究者になる前も、なってからも本当に大切である。実験をする時に、その手段が正しいか否かを判断するにも、知識や経験が必要になる」とおっしゃっていました。全く関係ない分野の経験や知識の量は、何物にも代え難く、学問をより活発にするために大切だということだと思います。
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実験・DNAを取り出してみよう!
遺伝子による遺伝情報は、細胞の中の「DNA」に入っています。
自分の細胞からDNAを取り出す簡単な実験をしてみました。
(1)水を少し口に含み、ほおの内側を歯で20回程度軽くかんでコップに出します。
(2)その水を容器に移し、界面活性剤というせっけんのようなものを入れ、あわ立たないようにゆっくり混ぜます。
(3)プロテアーゼという酵素を入れ、ゆっくり混ぜます。酵素にはタンパク質を分解する作用があり、これでDNAを取り巻くタンパク質を分解します。
(4)60℃の水温のウオーターインキュベーター(保温器)に入れ、5分から10分おきます。酵素には、その酵素がよく働く温度があるのです。
(5)この状態では、まだDNAは水に溶けていて目に見えません。アルコールを入れてゆっくりと混ぜて水分をなくすと、DNAが見えます。
自分のDNA見て感激
壊れて消えてショック
神奈川・2年・木村くん
白い糸くずみたいなものが液体の中に出てきます。その白い糸くずこそが、DNAです。僕もていねいに混ぜた結果、とても大きなDNAがとれたのですが、何回も混ぜていたら壊れて消えてしまいました。ショックで一瞬魂が抜けてしまいました……。でも生まれて初めて自分のDNAを肉眼で見られたので良かったです。生命科学にとても興味がわきました。
感動のご対面!だけど
なんとなく恥ずかしい
静岡・2年・永川さん
DNAは玉のようにまとまっていました。本当は、DNA自体は細い糸で、それがたくさん集まって目に見えているそうです。「これが自分のDNAなんだ!」と感動してしまいました。しかし、自分のDNAだけあって、なんとなく恥ずかしいような気もしました。
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学生も大学もさすが日本一
栃木・1年・大塚くん
初めて東大を見たときは、大学の大きさや広さに驚きました。さらに大学院生の野嶋さんの教え方がとてもわかりやすく、さすが日本一の大学だと思いました。研究室のある建物には、危険な薬品をかぶった時の緊急シャワーなど、危険な時に役立つ工夫もされていました。
石浦教授は、どんな質問にもわかりやすく熱心に答えてくれました。僕も先生のように、人の話をよく聞き、人のことをよく見て、読書をして知識を増やそうと思いました。
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大学院生の野嶋純さんから一言
患者増加に歯止めかけよう
アルツハイマー病は誰でもかかる可能性がある病気です。
しかし、生活習慣などの改善により病気の発症を遅らせることが出来るといわれています。
見学で学んだアルツハイマー病についての知識をさらに深くして患者数の増加に歯止めをかけましょう。
そして、さらに興味を抱いて、大学などで病気の研究をしてくれることを期待しています。 |
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