秋風のコンサート
コンコン山のふもとのコンコン森は、深い森ではありません。
森をぬけてから、なだらかな草の道を海に向かっておりていくと、すぐににぎやかな港町です。
ユカのおじいさんの家は、その港町にあったので、ユカはおじいさんのところへ行くときは、いつもコンコン森をぬけていきました。
通いなれた道なので、鼻歌を歌いながらでも道に迷ったりすることはなかったのです。
この日は、何だかヘンでした。
どうしても森から出られません。
そのうちに大きな木の切りカブがある草地に出たので、切りカブの上にあがってみました。
すると、「こらこら、すぐおりてコン。そこは、わたししかあがれないコン」と、かん高い声でいいながら、タキシードを着た大きなキツネが出てきました。
ユカは、「あなたはコンコン森のキツネなのね。イタズラしないで、わたしを森から出してください」。
キツネは、手に持っていた細い指揮棒で切りカブをコンコンとたたいて、「わたしはコンコン森のコンコンオーケストラのコンダクターのコンコンスキーだコン。1曲演奏したら森から出してあげるコン」というと、切りカブの上にとびあがってきました。
「人間は何もわかっていないコン。コンサートも、コンダクターも、みんな『コン』がついているのは、人間がマネしているんだコン。コンコン森のコンサートが、本当の音楽だコン」といって、指揮棒をふりあげました。
ユカは、しかたなしに切りカブからおりて、コンコンスキーのコンサートを聴くことにしました。
それは、何ともいえないふしぎなコンサートでした。
風が歌いながらふいていくと、それに合わせて草や木も、音楽を演奏している感じで、さわやかでいい気持ちになりました。
演奏が終わるとコンコンスキー氏は切りカブからおりてきて、「道はかんたんだコン」といいながら指揮棒で草をかきわけて「ほらね」といいました。
なるほど、港町へおりていくいつもの道がそこにありました。
おじいさんの家に着いたユカは、つかれていたのでぐっすりねむり、朝になってコンコン山の方を見てびっくりしました。
コンコン森は、キツネ色の美しい秋の色に変わり、さわやかな秋風がふいていたのです。
ユカの胸は熱くなり、コンコン森の方に向かって、「コンコンスキーさん、すてきな秋風のコンサートをありがとう」と、大声でお礼をいいました。
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