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対立イメージぬぐう 協力関係を構築へ
中国の習近平国家主席が3月の就任後初めて訪米し、7、8日に米国のオバマ大統領と首脳会談を行いました。サイバー攻撃や尖閣諸島問題、北朝鮮情勢などで意見を交わしたようですが、「世界のビッグ2」ともいえる米中の指導者の対話はどんな成果を生んだのでしょうか。
Q 最高指導者として初会談となった2人の相性はどうだったんだろう。
A 今回は会うこと自体に意義があった会談。お互いお手並み拝見という意味が強かった。会談場所に米西海岸の保養地を選び、リラックスした雰囲気を演出したのも、最初の顔合わせでこじらせては米中関係の将来に響くという判断があったようだね。ホワイトハウスの関係者も「両首脳の個人的な信頼関係づくりを重視した」と朝日新聞の取材に語っていたよ。
米側も夕食会や朝食会などを含めて8時間の会談時間を作ったり、2人で1時間近く散歩したりして、親しくなれるような演出を心がけていたね。
習氏はこれから最低5年、オバマ氏もあと3年半の任期がある。これから2人は世界のいろんな場で会談を重ねるはずで、お互いを深く知ることは確かに大切だ。
米中間には懸案事項が多く、軍事や経済で利害関係がぶつかるところも多い。ここ数年、どこかぎすぎすした関係が続いていた。相性まではわからないけど、米中関係の再構築へ向けてスタートを切った、という理解でいいんじゃないかな。
Q 習氏はどうしてこの時期に訪米することを選んだのかな。
A 対米関係への強い危機感があったようだね。江沢民氏や胡錦濤氏など過去の指導者は就任から数年後にしっかり準備してから訪米していたけど、習氏は就任してまだ3カ月だ。できるだけ早く米国と意思疎通をしたいと考えたようだ。
加えて、中国では最近、大国意識の高まりで「米中で世界を管理すべきだ」という議論が強まっている。米中関係を固めれば、領土問題で日本や東南アジアとの間でいくら摩擦が起きてもカバーできると踏んでいるかもしれないね。
Q サイバーテロの問題は何か進展はあったのだろうか。
A 事前に最も注目が集まった問題だね。オバマ政権は米企業などを狙ったサイバー攻撃の一部は中国が発信源だと主張している。自分たちがサイバー攻撃をしているなどと中国が認めるはずがないけど、習氏は「中国からの脅威との印象を人々に与えているかもしれない」と語った。「中国もサイバー攻撃の被害者だ」という主張一辺倒だった過去に比べ、それなりに歩み寄った印象を与えたと思うな。
Q 尖閣諸島問題も話し合われたようだけど、隔たりは大きかったらしいね。
A 「長時間にわたって協議した」というわりには、実質的な進展はなかったようだ。オバマ氏が「挑発的な行動の停止」や「外交ルートでの解決」を求めたのに対し、習氏も「領土と主権は守る」と主張しつつ、「対話を通じて問題の処理」と語ったらしい。この問題は一義的には日中間の問題なので、米国も口を挟みにくいところがあるね。
Q じゃあ会談に具体的な成果はなかったの?
A そうでもないよ。環太平洋経済連携協定(TPP)では習氏が情報提供を求め、オバマ氏も協力する姿勢を見せた。現時点で中国がTPPに入ることは条件的にも時間的にも難しい。それでも習氏がTPPを提起したのは、TPPをめぐって米中が対立しているというイメージを避ける狙いがあったようだ。
北朝鮮問題でも朝鮮半島の非核化に向けて制裁の強化で合意しているから、成果はゼロではないだろう。2人の関係が深まったことを含めて、合格点じゃないかな。
朝日新聞国際編集部 野嶋剛
1968年生まれ。92年に朝日新聞入社。シンガポ ール支局長、政治部、台北支局長などを経て、現在、国際編集部次長。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)「ふたつ の故宮博物院」(新潮社)など。
2013年6月16日 |