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佐藤 久恵記者(朝日新聞大阪本社科学医療グループ)
人間の「万能細胞」づくりに成功したって、ニュースで聞いたよ。
京都大学の山中伸弥教授らが世界で初めてつくった細胞だね。この細胞を使って皮膚や腎臓、神経などを自由につくれるようになれば、事故で失った神経や病気の臓器のかわりをつくって体にもどす「再生医療」が夢ではなくなる。
何か、すごそうな話だね。
くわしく聞かせて。
何にでもなれて、臓器の再生が可能になる
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大人の皮膚の細胞からつくる
受精卵を使わないのが画期的
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| ヒトの皮膚の細胞から万能細胞をつくることに成功した京都大学の山中伸弥教授。受精卵を使わずに万能細胞をつくる方法は、ずっと求められていました |
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――いったん皮膚になったら、ずっと皮膚のままでいるはずなのに、もう一回、何にでもなれる能力をよみがえらせた。まず無理だと思われていたことができたんだ。
ポン 万能細胞とふつうの細胞はどうちがうの。
――わたしたちの体はおよそ六十兆個の細胞でできている。でも、それはたった一個の細胞から始まったんだ。最初の一個は、お父さんの精子とお母さんの卵子が一つになった受精卵という細胞で、体中の何にでもなれる能力を持っている。それからできた皮膚や心臓などの細胞も、同じように何にでもなれる能力をかくし持っている。
ジャン でも皮膚や心臓は形も場所も全然ちがうよ。
――そう。細胞が増えていく途中の段階で、皮膚になる細胞、筋肉になる細胞、神経になる細胞というふうに仲間ができて運命が分かれていく。そして、あともどりできなくなる。
ケン 目がさめて皮膚が心臓になってたらびっくりするもんね。
――ところが、山中教授らは大人の皮膚の細胞に特別な処理をして、何にでもなれる能力をよみがえらせた。どんな細胞にもなるから、万能細胞っていうんだ。
実は受精卵を使えばもっと楽に万能細胞をつくることができるんだけど、これは「禁じ手」になっていたんだ。
ポン どうして。
――受精卵はお母さんのおなかの中で育てていくと、赤ちゃんが生まれる命の始まり。それをこわして別の目的に使うことに反対の人が多くて、ヨーロッパでは禁止している国もある。アメリカでは大統領が強く反対した。受精卵を使わないで万能細胞をつくる方法が求められていたから、山中教授らの成功を聞いて、反対していた国の人たちは「すばらしい」とほめたんだ。
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腎臓や筋肉など自由につくる
実現するにはまだ研究が必要
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ジャン 世界中の競争を勝ちぬいたんだね。
――アメリカの大学チームも同じ時期に成功したんだけど、大人の細胞じゃなくて、おなかの中の赤ちゃんの細胞を使った。年をとるほど、何にでもなれる力を取りもどすのは難しいうえに、大人の細胞でないと治療に使いにくいこともあり、山中教授らの研究の方がすぐれている。
ケン 万能細胞って何に使うの。
――たとえば、心臓の病気の人の皮膚の細胞をとって万能細胞をつくる。それを心臓の筋肉の細胞に変えて、弱った心臓に移して元気にする治療も考えられる。事故で失った神経を増やしたり、治すのが難しい病気の臓器のかわりをつくったりすることも夢ではなくなった。いたんだ体を健康にもどす「再生医療」がぐんと近づいてきた。
ポン すごい! 心臓とかもできちゃうの。
――可能性はあるけど、そう簡単にはいかない。細胞に特別な処理をするときに、いまはがんを起こすおそれのある材料を使っている。人の体に使うにはもっと安全な方法を見つける必要がある。
何にでも変わるだけに、神経なら神経の細胞だけに変えられる技術もつくらないといけない。心臓や腎臓など形のあるものができるのは、もっと難しい。
ジャン 何だ、先の話なのね。
――世界中の研究者が知恵をしぼってがんばっているから、意外に早いかもしれないよ。
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【きょうのポイント】
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▽大人の皮膚の細胞から、何にでもなる能力を持つ「万能細胞」をつくることに、京都大学の先生が成功した。
▽受精卵からも万能細胞をつくることはできるが、命の始まりの細胞を別の目的に使うことに反対の声が強かった。受精卵を使わない方法が望まれていた。
▽万能細胞から形のあるものをつくるにはまだ時間がかかるが、可能になれば、治療の難しい病気の人にかわりの臓器をつくったり、失った神経をつくったりする再生医療が実現する。 |
(2007年12月15日)
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