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田岡 俊次記者(軍事ジャーナリスト)
アメリカのブッシュ大統領が施政方針演説で、イラクにまた2万人以上もの兵士を送るっていったよ。国民の大部分が反対しているのに、何を考えているのかしら。
去年11月のアメリカ中間選挙では、大統領が属している共和党が負け、民主党の方が議会で多数になった。イラク戦争への反対が強いんだ。「早く兵士を引きあげろ」という要求がはげしいが、大統領としては、イラクが大混乱のまま引きあげれば、敗戦が決まる。一方、来年11月に大統領選挙がある。
イラクへ兵士を送ることと、そんな先の選挙が関係あるの?
早く引きあげるため一時的にも治安回復を、と
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イラクで戦死した兵士の墓標のように、軍用ブーツがならべられた教会の集会所。ブッシュ大統領は今月、さらに2万人の兵士をイラクに送ることを決めました=2006年10月、アメリカ・ペンシルベニア州で
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――月平均約70人のアメリカ(米)軍兵士が死に、月に1兆円以上もの費用がかかる戦争をダラダラつづけていては、共和党の大統領候補は勝てない。兵力をふやし、一時的に首都バグダッドだけでも治安がよくなったかっこうをつけ、イラク政府に「後はまかせた」として、米軍の大半を帰らせたいんだ。「たたいてにげる」戦略だ。
ケン そうはいっても、イラクではイスラム教のシーア派とスンニ派の対立がはげしく、内戦になっているんでしょ。兵士をふやして、どっちを攻撃するつもりなの。
――バグダッド市内にシーア派民兵の支配する地域がある。それを攻撃すると同時に、首都の西にスンニ派のゲリラの拠点が多いので、そっちも攻撃する、と大統領はいう。内戦の中に入りこんで両方と戦う形になる。
中東担当の米軍の司令官は「2万人くらいふやしても役に立たない」と反対して交代させられた。イラク戦争を始める前にも、米陸軍のトップ、日系人の参謀総長が議会で「もし攻撃するなら、何10万人も派遣しなくてはなりません」と正確な予測をいってクビになった。現実論をいう軍人をおさえつけて戦争につき進む大統領には、こまったものだよ。
ポン アメリカ軍は強いんでしょ。もっといっぱい兵士を送ればおさまるんじゃないの?
――いま13万8000人送っているが、精いっぱいなんだ。陸軍は全部で49万人いるけど、前線(戦場)で戦う部隊は3分の1、16万人ていどなんだ。軍隊には弾や食料、燃料などを注文し、前線へ送る「補給部隊」とか、病院、学校、事務所などがあり、銃を持って戦う人は意外に少ない。
イラクだけでなく、アフガニスタンでも戦争しているし、ドイツや韓国などにも出しているから兵士がたりない。普通は前線部隊は六か月交代なんだが、交代が出せず、1年もイラクにのこされる部隊が多い。
ジャン じゃあ、新しく送るのは?
――そこで、州兵を10万人も召集してイラクに送っている。これはほかに仕事を持っている人が、月に一度集まって訓練する。日本の消防団みたいなもので、シロウト同然だ。米陸軍は新たな入隊希望者も、州兵に志願する人もへって、ガタガタになっている。
イラク人を集めて、約10万人のイラク軍もつくったが、占領軍がつくる軍隊に入る人は金だけが目当てだ。イラク人相手に戦う気はない。戦闘になると逃亡したり、米軍に向けて発砲したりする。銃をゲリラに売ることも多く、ほとんど役に立たない。
ケン へえー、アメリカは負けそうなんだ。するとその後、イラクとか世界はどうなるの。
――アメリカはすでにイラクとアフガニスタンの戦争で約60兆円、つまりアメリカ政府が1年に集める税金の約4分の1も使って、財政がもたない。だが平和交渉をする相手がだれかもわからないから、何年かくるしい戦いをつづけ、けっきょくメンツをすてて、退去することになる可能性が高い。
イラクは大混乱になる。だが、10年もすれば自然にまただれか強い指導者が登場し、国をまとめることになるだろう。
ジャン アメリカはどうなるの?
――ソ連が1979年から88年のアフガニスタン戦争でやぶれて、当時の東ヨーロッパの指導者としての地位をうしなったように、イラクでたぶん敗戦国になるアメリカは、世界の指導者の地位をうしなうだろう。
経済、財政が混乱し、アメリカ国民の関心は、極端な貧富の差をちぢめたり、日本やヨーロッパのような健康保険制度をもうけたりするなど、国内の問題に向かうのでは、と考えてるんだ。
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【きょうのポイント】
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▽アメリカのブッシュ大統領は、イラクのアメリカ(米)軍兵士を2万人ふやすことにした。バグダッドの治安を一時的にでもよくし、戦いに「勝った」かたちをつけて、軍を引きあげるのが目的。
▽イラク政策に対する国民の強い反対から、ブッシュ大統領の共和党は、去年の中間選挙で民主党に大きく負けた。来年の大統領選挙をにらんで、軍を早く引きあげることに。
▽米軍は兵士が不足し、訓練を受けた一般人やイラク人を兵士にしているが、戦力にはならない。敗北すれば、イラクは混乱し、アメリカは国際社会で地位をうしなう可能性も。
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【イラク戦争】
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| 2003年3月から5月にかけて、イラクに対してアメリカとイギリスが強行した戦争。サダム・フセイン政権がたおされ、国民議会選挙をへて、06年5月にシーア派を中心とする正式政府が成立しました。アメリカ・イギリス軍を中心に治安を保つための軍隊が送られていますが、いまだにテロなどによる犠牲(ぎせい)がたえません。 |
(2007年1月27日)
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