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●イスラム教徒がおこるのはなぜ?●

坂口 智記者(朝日新聞外報部)

 

ジャン

 最近、パキスタンなどのはげしいデモのようすがニュースでよくうつるけど、何に抗議しているの?

ケン

 そのハート何とかってどんな決まりなのかな。

坂口 記者

 ヨーロッパのいくつもの新聞が、イスラム教で一番大切な人をからかったまんがをのせたからなんだ。世界各地でイスラム教徒が抗議して、大問題になっている。

ポン

 どんなまんがなの?

 

大切な人「預言者」をまんがにされたから

ヨーロッパの新聞がのせる
各国ではげしいデモおきる

 


 

ムハンマドをかいたまんがに抗議し、香港でもイスラム教徒らによるデモが行われました〓十七日、香港で

 ――イスラム教の預言者ムハンマドを題材にしたまんが十二枚で、デンマークの新聞が去年九月にのせたのが最初だった。中には、爆弾の形をしたターバンを頭にまいたムハンマドをえがいたものもあったんだ。

 ジャン ずいぶん前のことなのね。

 ――このときには大きなさわぎにならなかったんだけど、ことし一月にノルウェーの新聞が同じまんがをのせ、さらに二月にはフランス、ドイツなどヨーロッパのいくつかの新聞がいっせいにのせたことで、一気に大問題になったんだ。

 ケン どんなことが起こったの?

 ――中東やアジアのイスラム教徒が多い国では、デモがくり返し行われ、シリアでデンマークとノルウェーの大使館に火がつけられるなど、一部には暴力的事件も起きている。アフガニスタンやリビアなどでは死者も出ているんだ。
 それに、デンマークの製品を買わない運動も広がっているし、イランはデンマークとの貿易を停止すると発表した。

 ポン どうしてイスラム教徒はそんなにおこっているの?

 ――「預言者」というのは、神のことばを人間につたえる人のことで、イスラム教では、ムハンマドは一番大切な預言者とされているんだ。その人がからかわれたことで、イスラム教が侮辱(けなすこと)されたと感じているんだよ。
 それに、イスラム教は人の形をした像や絵をおがむことを禁じている。だから、大切な預言者をえがかれたこと自体も不愉快に思っているようだね。

 ケン でも、「表現の自由」というのがあるよね。

 ――ヨーロッパやアメリカ、日本など、民主主義の国では、どんな意見でも表明することができる「表現の自由」が大原則だ。そのうち、新聞などの報道機関が、何をつたえるかについてだれからも指図されない「報道の自由」は、民主主義が成り立つために非常に大切だ。
 ただ、自由といっても、好き放題に何をいってもいい、ということではない。宗教に関係するものをふくめて、人を傷つけることになるような表現については、表現する方もよく考えなければならない。もちろん、結果的に人を傷つけることになっても、あえてつたえるべき場合もある。



 

世界にはいろいろな宗教
理解しあうことが大切



 ジャン これまでにも似たような事件はあったの?

 ――イギリス人の作家が書いた「悪魔の詩」という小説が、イスラム教をおとしめる内容だとして、イスラム教徒の反発を受けたことがある。一九八九年、当時のイランの最高指導者ホメイニ師が、この作者に「死刑」を宣告し、作者は人目をしのんでくらさなくてはならなくなった。日本では、この小説を翻訳した人が何者かに殺され、いまだに犯人がわかっていない。

 ジャン 今回のことはどうなの。

 ――まんがをのせた新聞には、確かに心づかいが足りなかった。人を傷つけることになってものせるだけの意味があるようなまんがじゃなかったようだしね。
 一方で、イスラム教徒の側にも、外国の大使館を焼き打ちしたり、まんがの作者やのせた新聞をおどしたりといった、ゆるされない行動がみられる。
 いくら傷つけられたとしても、表現に対して暴力で反撃することはみとめられない。「悪魔の詩」事件もそうだね。イスラム教の指導者には、このことをもっと広く信者によびかけてほしいね。

 ケン どうすればみんななかよくできるんだろう。

 ――世界にはいろいろな宗教を信じる人がいるし、場所によって文化や習慣もずいぶんちがっている。自分と考え方がちがう人もいるということをみんなが理解して、おたがいに敬意を持つことが必要じゃないかな。





【きょうのポイント】
 ▽ムハンマドのまんがをヨーロッパなどの新聞がのせたことに、イスラム教徒が抗議。各地ではげしいデモが起こり、一部では暴力事件になっている。
 ▽イスラム教徒にとってムハンマドは、神のことばをつたえる大切な預言者。またイスラム教は、人の形をした像や絵をおがむことを禁じている。
 ▽「表現の自由」は民主主義の大きな柱だが、人を傷つけるような表現については、よく考えなくてはいけない。おたがいの宗教や文化のちがいをみとめ、敬意を持つことが大事。

 

(2006年2月25日)


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