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●ハートビル法って何?●

桂 禎次郎記者(朝日新聞社会部)

 

桂 記者

 東横インというホテルのニュースを見たかな。

ケン

 見たよ。社長があやまっていたけど……。

桂 記者

 東横インは全国で120以上のホテルを営業していた。でも、半分以上の建物で法律に違反していたんだ。

ジャン

 何の法律に違反したの?

桂 記者

 身体障害者に配慮して定められたハートビル法や、建物の最低基準を定めた建築基準法などだよ。

ポン

 そのハート何とかってどんな決まりなのかな。

 

体の不自由な人が使いやすい建物を、と法律

もうけ優先だったホテル側
検査合格のあと秘密の改造

 


 

東横イン宇都宮駅前の車いす使用者用の駐車場。右側のかべには、午前中までゴミ置き場になっていたあとがのこっていた〓1月30日午後3時、栃木県宇都宮市で

 ――車いすをおしたことがあるかい?

 ケン ないけど、見たことはあるよ。駅員さんが、駅のホームで車いすを電車にのせていた。大変そうだったなぁ。

 ――歩ける人にはなんでもない段差でも、車いすだと動くのがむずかしいんだ。

 ジャン でも、本当はいろんなところへ行きたいでしょう。

 ――その通り。障害のある人も乗り物で遠くに出かけて、ホテルにもとまりたい。でも、彼らが安心して利用できる施設はまだまだ少ない。そこで、大きなビルを建てるときに、その中の設備を使いやすい形にしてもらうように定めたのがハートビル法なんだ。

 ケン ハートビルってどういう意味?

 ――かんたんにいうと、ハート(思いやりの心)のあるビル(建物)という意味。身体障害者や足が不自由なお年よりの声を受けてできたんだ。
 ホテルやデパート、劇場などを建てるとき、手すりをつけたり、駐車場やトイレ、エレベーター、出入り口などを広くしたりして、車いすの人などが移動しやすくなるようもとめたんだ。東横インは、いったん法律を守った建物で検査に合格したあと、こっそり改造して障害者用の駐車場などをなくしていたんだ。

 ポン なぜ、そんなことをしたの。

 ――社長は記者会見で「利益追求でした」とあやまっていた。障害者用の駐車場や部屋(客室)はふつうのものよりも広い。多くのビジネスマンを集めるには、それより、別の設備にした方が効果的、と考えたらしいんだ。

 ケン 少しでももうかるようにしたかったんだね。

 ――そうだけど、法律や条例をやぶるのはルール違反だよ。

 ジャン 法律だけじゃなく、条例にも違反していたの?

 ――そう、条例は国ではなく、都道府県や市などが議会で定める決まり。ハートビル法より細かな基準をしめして、障害者やお年よりが利用しやすい建物や道路などをめざすもので、「福祉のまちづくり条例」という名前がついていることが多い。この条例違反も多かった。

 

だれでもが使いやすく
ユニバーサルデザイン



 ケン 車いすを使っている人は、このニュースをどう思っているの?

 ――東横インのような大きな会社がこんな違反をしたことをすごく残念に思い、おこっている。ハートビル法や福祉のまちづくり条例は、障害者たちが長年うったえつづけて、やっとできたものだからね。社長は「障害者用の客室(部屋)は、一般の人には使い勝手が悪い」ともいったけど、障害のある人たちは、これにも反論してるんだ。

 ジャン なぜ?

 ――「ユニバーサルデサイン」っていうことばを聞いたことがあるかな。「ユニバーサル」は「すべてのものに共通の」という意味。だれでも使いやすいデザインということだ。

 ケン 「バリアフリー」なら聞いたことがあるけど。

 ――「バリア」とは壁とか段差のこと、「フリー」は「ない」の意味。両方で「段差や仕切りがない」ということだ。障害者がつまずかないで移動できる状態をさす。バリアフリーも大事だけど、ユニバーサルデザインは、もっと広い意味を持つんだ。

 ケン どう広いの?

 ――「障害がある人にもない人にも使いやすい形」をめざすことばなんだ。それなら、障害者用の設備は特別のものではなくなるよね。障害のある人たちがのぞんでいるのは、そんな考え方の建物がもっと街にふえていくことだというんだ。

 ポン 早くそんなふうになったらいいのにね。




【きょうのポイント】
 ▽ハートビル法は、身体障害者らに配慮した建物を建てるよう定めた法律。大きなホテルやデパートに、車いすでも使いやすいトイレなどをつくるようもとめている。
 ▽さらに細かな基準を条例で決め、障害のある人が生活しやすい街づくりをめざす都道府県や市もある。
 ▽障害のあるなしに関係なく、だれでも使いやすい形という意味で、「ユニバーサルデザイン」ということばが使われる。

 

 

 

 

 

(2006年2月18日)


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