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●ノーベル平和賞受賞 グラミン銀行って?●

吉武 祐記者(朝日新聞外報部)
 
ジャン

 ことしのノーベル平和賞に、バングラデシュのグラミン銀行と、創設者のムハマド・ユヌスさん(66歳)がえらばれたね。

ポン

 「グラミン」て、どういう意味?

吉武 記者

 グラミンは、バングラデシュのベンガル語で「農村」の意味だよ。まずしい人の多い農村で、特に女の人に、少しずつのお金を貸して、大勢の人の自立を助けたのが評価されたんだ。

ケン

 ほかの銀行と、どこがちがうの?

 

少額のお金貸し貧しい人の自立助ける

働く意欲ある人たちが
商売始められる資金に

 


 

 ――銀行はふつう、担保といって、土地や財産など、借り手がお金を返せなかったときに、かわりにもらうものを決めておく。つまり、担保にするものがない人は、お金が借りられず、新しい商売を始めにくいんだ。それに銀行は、きちんとお金を返してほしいから、安定した仕事のない人には貸したくない。

 ケン じゃあ、まずしい人にお金を貸すのは不安だね。

ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスさん(中央)。10月に会議に出席するため来日、広島市中区の平和記念公園をおとずれました

 ――でも、グラミン銀行は、まずしい人たちにも働く意欲や力があることに目をつけた。土地や財産がなくても、小さな商売なら始められるようにした。そこがほかの銀行とちがうところだね。
 たとえば、ニワトリを飼って卵を売る商売を始める人に、最初にニワトリを買うお金を貸す。商売がうまくつづけば、まずしさからぬけ出せるよね。この方法は「マイクロクレジット」(英語で、少ない額のお金を貸すことの意味)とよばれているんだ。貸すお金は、たとえば100ドル(1万円強)だ。

 ポン グラミン銀行をつくったユヌスさんは、どんな人?

 ――バングラデシュの港町、チッタゴンの生まれで、アメリカで勉強した経済学の先生だよ。

 ケン どうして銀行を始めたの?

 ――30年ぐらい前、バングラデシュでは大勢が飢えに苦しんでいた。そこでユヌスさんは勉強より、まずしい人のくらしに目を向けた。
 ある日、大学の近くの村で、竹でいすをつくるソフィアさんという女性に出会った。ソフィアさんは材料の竹を仕入れるお金がなく、仲買人から借りて、よけいな利子をはらわされていた。だから、ほとんどもうけられない。自由に使えるお金が少しだけあれば、安く竹を買えたのに。
 そこで、同じなやみのある村人42人にドルに換算して27ドルのお金を貸したのが、始まり。ユヌスさんはしばらくして大学の先生をやめ、自分で銀行をつくったんだ。

借り手は5人グループ
助け合って返すルール

 

 

 ケン お金をあげるんじゃないんだ。

 ――ユヌスさんは、ただお金をあげても、自分でがんばる気持ちのある人をかえって傷つけると考えた。人はまずしさからぬけ出す力がないのではなく、手段がないだけだって、いつもいっているよ。
 実際、グラミン銀行では、ほかの銀行より、きちんとお金を返す人が多いよ。
 借り手を五人のグループにして、全員がお金を返せるよう助け合うルールにしたのも成功した。
 いまでは、バングラデシュ国内で660万人が借りている。千葉県の人口(約608万人)より多い人数だよ。

 ジャン どうして借り手に女の人が多くなったの?

 ――バングラデシュはイスラム教の影響もあり、男の人が上に立つ社会なんだ。女の人は家で立場が弱く、食べ物が少ない時は食べずにがまん。外に働きに出るのはよろこばれないし、ふつうの銀行はお金を貸さない。
 でも、グラミン銀行では、商売をつづけてお金をきちんと返すのは女の人がとても多いって、だんだんわかってきた。それで女の人にばかり貸すことにしたんだ。
 男の人は、お金が入るとすぐ遊びに使うけど、女の人は子どもや家のことを考えて使う。いまは借り手の96パーセントが女の人だよ。

 ジャン 最初は反対されたんでしょ。

 ――そう。だから、村の夫たちを集めて説得するとか、差別とたたかう大変な努力が必要だった。

 ケン ほかの国でも、やるべきだよ。

 ――実は、1990年代からマイクロクレジットは世界につたわり、南アジアから中東、アフリカ、そしてアメリカなど先進国にも広まった。国連も、マイクロクレジットを進めようとよびかけている。
 世界からまずしい人をへらすためには、ユヌスさんの考えが大事なんだね。

【きょうのポイント】
 ▽ことしのノーベル平和賞に、バングラデシュのグラミン銀行と創設者のムハマド・ユヌスさんがえらばれた。まずしい人の多い農村で、特に女の人に少しずつのお金を貸して、大勢の人の自立を助けたのが評価された。
 ▽土地や財産がなくても少ない額のお金を貸す「マイクロクレジット」のしくみをつくった。借り手を5人のグループにして、全員がお金を返せるように助け合うルールもつくったことから、きちんとお金を返す人が多い。
 ▽1990年代から、マイクロクレジットは世界につたわり、中東、アフリカ、アメリカなど先進国にも広まった。国連もこのしくみを広めようとよびかけている 。

(2006年11月7日)


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