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アスベスト(石綿)って何?

桜井林太郎記者(朝日新聞科学医療部)
ジャン

 最近、新聞でアスベスト(石綿、石綿ともいう)が原因の病気で人がたくさん亡くなったというニュースを読んだけど。

桜井 記者

 6月の末に、大手機械メーカーのクボタの旧工場でこれまでに従業員ら79人が死亡したと発表されたのをきっかけに、ほかの会社でもアスベストによる被害が次々と明らかになっているね。

ケン

 こわいね。そもそも石綿ってどんなものなの?

防火や保温のため建物に…すいこんで死者も

肺がんなどの病気の原因に
扱う人や家族、住民に被害

 

 

スーパーの解体現場で、鉄骨にふきつけられていたアスベスト=東京都内で

――石綿は、天然の鉱石からとり出した繊維状のものなんだ。目に見えないくらい細くて、羽毛のようにやわらかい。熱などに強くて切れにくく、すりへりにくい。薬品に強く、電気も通しづらいので、あんだり樹脂でかためたりして使われていたんだ。

 ジャン いつごろから、何に使われていたの?

 

 ――第2次世界大戦前から軍で使うものなどに利用されていたよ。戦後は、セメントにまぜてじょうぶにした板やパイプなど、おもに建物をつくる材料として大量に使われた。校舎やビルでは、保温のためや燃えにくくするため、天井や壁に直接ふきつけられた。70年代、石油の輸入がへって省エネルギーがさけばれたころには、輸入量は年間35万トンにたっしたよ。

 ポン そんな便利なものが、どうして問題なの。

 ――石綿はじょうぶで変化しにくいので、すいこむと肺やその周辺の組織にささって、肺がんや中皮腫というがんなどを引き起こす可能性があるんだ。中皮腫は石綿特有のものだけど、有効な治療法がないんだ。

 ジャン どのくらいの健康被害が出ているの?

 ――国が石綿製品メーカーの従業員らの健康被害について89社に調査したところでは、374人が死亡し、88人が治療を受けているよ。下請けの労働者や、石綿製品を使っている造船や自動車、建設などの業界はふくまれていないので、実際はもっと多いだろう。作業着を洗濯した家族や、工場のまわりの住民でも中皮腫になった場合がある。

 ケン いつから問題になっているの?

 ――国際労働機関(ILO)などが70年代初めから発がん性を指摘していたよ。日本で社会問題化したのは87年で、学校や公営住宅の天井や壁でむき出しの石綿があいついで見つかったんだ。

08年までに全面禁止に
ビル解体など課題山づみ

 

ジャン 国内ではこれまで規制されなかったの?

 

アスベストの鉱石

――75年にまず建設現場でのふきつけが原則禁止された。毒性が強い青石綿・茶石綿の使用が95年に、白石綿も去年に原則禁止された。去年11月に輸入量はゼロになったよ。かわりになるものが見つからなかったものには一部、いまも使われているけど、国は2008年までに石綿の使用を全面禁止する方針だよ。被害が広がっているので、その方針も前だおしされるみたいだ。海外では90年代に、ドイツやフランス、イギリスなどで原則禁止になったよ。

 ポン じゃあもう安心だね。

 ――それがそうとはいかない。石綿はすいこんでから平均四十年近くたって中皮腫を発病し、「静かなる時限爆弾」ともいう。症状に気づいたときには病気が進行している場合が多い。輸入のピークは70年代なので、今後、患者が大はばに増加する心配があるんだ。

 ケン 70年代よりずっとあとに生まれたぼくたちには関係ないね?

――関係あるよ。石綿はこれまでに計約一千万トンが輸入されている。石綿をたくさん使ったビルが寿命をむかえ、多くがこれからこわされる。こわすとき、まわりに排出される可能性があるんだ。解体業者だけでなく、まわりの人々が気づかないうちにすいこんでしまう危険もある。十年前の阪神大震災では、たおれた建物の解体工事でとびちるのが問題になったよ。

 ジャン 今後、大切なことは何かな。

 ――ひとつは、建物の解体などで、まわりにアスベストをとびちらせないようなしっかりした工事をしてもらうしくみをつくること。もうひとつは、中皮腫などの早期診断や、有効な治療法を確立すること。それができれば、被害を小さくできるはずだよ。

【校舎へのアスベスト使用】
 天然の鉱石からとり出されるアスベスト(石綿)は繊維状(糸のような状態)で、かみの毛の5000分の1という細さ。燃えにくく、熱をつたえにくいなどの性質を持つことから、建物の材料や水道管などに広く使われていました。しかし、その粉塵(ふんじん=粉状のちり)をすいこむと、肺がんや、肺の近くの膜にできるがん「中皮腫」などの原因となるため、日本では1975年から段階をおって使える範囲がせばめられてきました。
 87年に文部省(いまの文部科学省)が学校の校舎や体育館への石綿の使用について調べたところ、全体の約3パーセントにあたる1337校で使われていました。その後、石綿をふくむ材料の一部が調査の対象からもれていたことがわかり、文部科学省は、あらためて調査をすることを検討しています。

 

(2005年7月23日)

 


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