有田哲文記者(朝日新聞経済部)
国会でずっと「郵政民営化」について話し合いをしてるみたいだけど、よくわかんないわ
郵便局はいま国がやってるんだけど、これをふつうの会社にしようというのが郵政民営化だ。小泉首相は二〇〇七年からの民営化をめざしてるんだけど、反対している国会議員が多いんだ。
どうして反対してるの。
住む人の少ない過疎地で郵便局がなくなってしまうと心配しているからだ。ふつうの会社になれば、お客さんが少なくてもうからない郵便局は、店じまいしなきゃならなくなるかもしれないからね。
郵便局を普通の会社に…反対する議員も多い
郵便・貯金・保険 バラバラに
もうからなければ「閉店」?
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「反対」の紙をかかげる議員もいる中、衆議院特別委員会を通った郵政民営化法案(7月4日)。次の日、本会議で五票差で可決されました。
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――みんなは、郵便局には何しにいくことが多い?
ポン 年賀はがきを出しにいくくらいかな。
ジャン お年玉を貯金してるわ。銀行と同じように、利子がつくんだって。
――郵便局の仕事は三つあるんだ。ひとつは手紙や小包を配達する郵便事業。お金を集めて利子をはらう郵便貯金事業。それから、亡くなったときなどにそなえて保険などを売る簡易保険事業だ。いまは国が経営する「日本郵政公社」が全部の仕事をしているんだけど、小泉首相は、バラバラにして民営化しようとしてる。
ケン ふつうの会社にしたほうがいいのかな。
――「自由に経営ができるので、サービスがよくなる」と政府はいっている。みんなも利用するJRだって、むかしは日本国有鉄道(国鉄)といって、国が経営していたんだよ。民営化のねらいは、ふつうの会社のほうが、商売のことをよく考え、お客さんを大事にするだろうという考えからだ。郵便局がコンビニみたいなお店になったり、旅行チケットや証券会社の商品などを売ったりできるようになる。
ポン いいことばっかりね。なんで反対する人がそんなにいるの。
――それぞれの郵便局が新しい商売を始めて、うまくいけばいい。でも、経営が苦しくなれば、もうからない店を閉めることになる。人口の少ない地域ほど、そんな心配が強い。だから国会の話し合いで、どんどん店じまいして利用者に不便をかけないようにしようと決めたんだ。それでも心配する人は少なくないけどね。
ジャン それで、民営化すると郵便局はへるの、へらないの。
――コンビニだって競争がはげしく、店じまいするところがあるでしょう。ほかの商売の経験がない郵便局がいきなり手を広げても、かんたんに成功するとは思えない。新しい経営者がどう考えるかによるけど、いま二万四千ある郵便局はだんだんとへっていくかもしれないね。
郵貯のお金使い景気回復?
否決されれば解散総選挙も
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ケン ぼくの郵便貯金はどうなるの。
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暑中見舞い用はがきを販売する郵便局員。みんなに身近な郵便局は民営化でどうかわるのでしょうか |
――郵便局がへってもへらなくても、すでにあずけている貯金は、国がかならず返してくれるという点はかわらない。ところで、政府が郵政を民営化させたい一番大きな理由は、この郵便貯金の問題なんだ。
ポン どういうこと?
――郵便局には国民の預金や貯金の四分の一が集まっている。でも、公社のままだと、このお金をだれにでもかすというわけにはいかない。結果として郵便貯金のお金はふつうの会社にはかせず、国の借金である「国債」を買うのにあてられている。郵貯を民営化して、もっとふつうの会社に資金を回せるようにしよう、そうすれば景気回復に役立つ、というのが政府の考えだ。
ジャン それで民営化は、予定通り実現するの。
――国会は衆議院と参議院のふたつがあって、両方で賛成してもらう必要がある。衆議院では賛成が反対をわずか五票上回って可決された。参議院での話し合いも始まったけど、反対している人は少なくない。国会は八月中旬には終わるけど、すんなりといくかどうかは何ともいえない。
ケン もしも反対の人のほうが多くなったらどうなるの。
――小泉首相は郵政民営化法案が否決されたら、衆議院を解散して総選挙を行い、国民の判断をあおぐといってる。賛成派と反対派でのはげしい話し合いがしばらくつづきそうだね。
(2005年7月15日)
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