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谷口哲雄記者(朝日新聞北海道報道部)
こんどの夏休みは北海道の知床に行きたいなあ。
急にどうしたの。
知床は世界遺産になるんでしょ。きっとすてきなところなんだよ。
世界遺産って何なの。
世界各地のすぐれた自然や文化財を、みんなの宝物として守りつたえていこうとするものだよ。七月中旬に南アフリカで開かれる世界遺産委員会という会議で、知床も世界自然遺産に決まる予定なんだ。
様々な動物が集まり貴重な植物もいっぱい
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ヒグマは世界でも高い密度
冬には数千羽の大型のワシ
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ケン どういう場所が世界遺産にえらばれるの。
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| 知床では野生のヒグマがよく見られます。母グマの胸に顔をうずめてねむる子グマ |
――世界遺産には三種類ある。美しい景色を楽しめたり、絶滅のおそれがある生き物がいたりする自然遺産、歴史的な価値をもつ古い建物や遺跡などの文化遺産、それに自然と文化の両方にまたがる複合遺産だ。
一九七二年のユネスコ総会で採択された「世界遺産条約」にもとづいて決められる。現在は百三十四か国に全部で七百八十八件あるよ。
ケン たとえば、どんなところ?
――自然遺産はアメリカのグランドキャニオンや南アメリカのガラパゴス諸島、文化遺産は中国の万里の長城やエジプトのピラミッドなどが登録されている。
ジャン 日本にもあるのかしら。
――自然遺産は白神山地(青森県、秋田県)と屋久島(鹿児島県)が登録されている。知床が決まれば国内では三番目。文化遺産は京都や奈良の文化財(寺や城)、広島の原爆ドームなど十件ある。
ケン どうして知床がえらばれたの。
――知床は北海道の東のはしから海に向かってつき出た、長さ七十キロくらいの細長い半島なんだ。ここでは、さまざまな動物や植物が見られるんだよ。
ポン へえ、どんな動物がいるの。
――たとえばヒグマは世界でも高い密度ですんでいる地域のひとつなんだ。知床半島の斜里町では、ヒグマを見た住民や観光客からの通報が毎年五百〜六百件もある。地元のウトロ小中学校では、児童・生徒の半分が野生のヒグマを見たことがあるそうだよ。
ポン ひゃあ、ぼくは動物園でしか見たことないよ。
――ヒグマだけじゃない。羽を広げると二メートル以上もあるオオワシやオジロワシはロシアから数千羽がとんできて冬をこす。アザラシやトド、クジラやイルカなども多いんだ。
ポン ふーん。
――エゾシカやキタキツネは、道路わきなどでよく見かけるよ。秋になると、サケやマスが卵を産むため川を上るところが観察できる。高山植物など貴重な植物もたくさんある。動物や植物をひっくるめた大自然が、世界遺産にふさわしいと評価されたんだ。
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きびしい地形と気候が幸い
保護するため五つの「宿題」
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ケン どうして知床にはそんなに自然がのこっているの。
――知床半島にはとちゅうまでしか道がなく、まわりは切り立ったがけになっている所も多い。先端の知床岬には船で行くしかないし、冬には流氷が海をうめて船も使えなくなる。それに冬はオホーツク海から冷たい風がふいて猛烈な寒さにさらされる。きびしい地形と気候でなかなか人が近づけず、貴重な自然が守られてきたんだ。
ジャン 世界遺産になると、何かいいことがあるの。
――世間の注目が高まり、これまで以上に知床を守ろうという動きがさかんになるだろうね。ただ有名になると観光客がふえ、植物があらされたり、ヒグマとであって事故が起きたりする心配がある。それにいろいろ「宿題」もあるんだ。
ジャン 宿題?
――自然遺産の候補地になると、国際自然保護連合という団体が調査をして報告書にまとめる。知床については、ゆたかな自然を高く評価する一方、五つの注文をつけたんだ。
ジャン それが宿題なのね。
――そう。たとえば、知床では世界遺産となる地域内に五十か所もダムがある。サケやマスがダムのせいで川を上れない場所があるので、きちんと対策を立てるようもとめている。
日本の世界遺産登録地
●自然遺産 白神山地(青森県・秋田県)/屋久島(鹿児島県)
●文化遺産 法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)/姫路城(兵庫県)/古都京都の文化財(京都府・滋賀県)/白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県・富山県)/原爆ドーム(広島県)/厳島神社(広島県)/古都奈良の文化財(奈良県)/日光の社寺(栃木県)/琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄県)/紀伊山地の霊場と参詣道(和歌山県・三重県・奈良県) |
ケン ほかには。
――知床の海は地元の漁師の人たちには大切な漁場なんだ。でも魚がへると、その魚をえさにするトドなどの動物にも影響が出るおそれがある。魚を取りすぎずに漁業をつづけていくための計画づくりも急ぐ必要があるね。
(2005年7月2日)
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