|
中村 浩彦記者(朝日新聞科学医療部)
日本人宇宙飛行士野口聡一さんたちが乗る予定のスペースシャトルの打ち上げが延期になったんだってね。
そうなんだ。スペースシャトルは、アメリカの航空宇宙局(NASA)が打ち上げる。フロリダ州にあるケネディ宇宙センターから5月15日に出発する予定だったんだけど、最終点検に時間がかかって打ち上げが2度のび、7月13日以降に延期されたんだよ。
慎重なのね。そもそもスペースシャトルは、どんな乗り物なの?
地球と宇宙を行き来、ステーションの建設になう
――宇宙飛行士が乗りこむスペースシャトルの本体は全長約37メートル、翼のはばは約24メートルもある。これに外部燃料タンクと2本の固体補助ロケットをくっつけて打ち上げるんだ。途中で固体補助ロケットと外部燃料タンクを切りはなし、本体だけが宇宙に行くんだよ。
ポン どうやって宇宙から帰ってくるの?
――マッハ25(音速の25倍。音速は秒速約330メートル)の速度で大気圏に再突入して、グライダーのように空中をすべって、発射地点のケネディ宇宙センターにもどってくる。飛行機と同じように滑走路にすべりこむように着陸するんだよ。
 |
| 「ディスカバリー」に乗る予定の宇宙飛行士野口聡一さん=アメリカ・テキサス州ヒューストンで |
ケン 21世紀の最新の乗り物なんだね。
――じつは、スペースシャトルは20年以上前に開発されたんだ。本体には名前がつけられている。いま活躍しているのは「ディスカバリー」「アトランティス」「エンデバー」の3機だ。
ケン 前は?
――5機あったんだけれど、残念ながらこれまでに2回大きな事故があって、とうとい人命とともに、「コロンビア」と「チャレンジャー」はうしなわれてしまった。
ジャン どんな事故だったの?
――最初の事故は1986年1月。「チャレンジャー」が発射73秒後に爆発して7人の宇宙飛行士が亡くなった。固体補助ロケットの燃焼ガスがもれて外部燃料タンクに火がうつって燃えたのが原因だった。
ジャン 悲しい事故ね。同じような事故がまた起きたの?
――2回目の事故は2003年2月。地球にもどるため大気圏に再突入した「コロンビア」が爆発した。外部燃料タンクをおおう断熱材のかたまりが打ち上げたときにくずれ落ち、左の翼を直撃したことが事故の引き金になったとされている。翼の前のへりの部分が傷つき、大気圏に再突入したときに機体との摩擦で1500度にもなった空気が翼の中に入り、空中分解を引き起こしたとみられている。この事故で、7人が亡くなったんだ。
ポン 日本人の宇宙飛行士は乗ったことがあるの?
――もちろん。現在、日本人宇宙飛行士は8人いて、そのうち4人がスペースシャトルで宇宙に行ったんだ。毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さん、若田光一さんの四人だよ。今度の「ディスカバリー」には野口聡一さんが乗りこむんだよ。今回、野口さんはシャトルの外に出て、耐熱タイルの修理方法を実験するなど、大切な任務をこなすよ。
ケン 「ディスカバリー」は安全なの。
――「コロンビア」の事故の後、事故調査委員会は飛行を再開するまでに対応が必要な15の改善項目をしめした。シャトル表面の耐熱タイルの傷を調べる方法や補修方法を開発することなどだよ。NASAはいっしょうけんめいに対応して、やっとここまでこぎつけたんだ。今回の打ち上げが、飛行再開の1号機になる。でも、実際は、15項目のうち8項目しか対策を実施したとみとめられていないんだ。
ポン それで2度も延期になったの?
――コロンビア号の事故のきっかけになった外部燃料タンクが安全かどうかの最終点検で手間取っているんだ。
ジャン 危険をゼロにするのはむずかしいのに、どうして打ち上げをつづけるのかしら?
――現在、宇宙では国際宇宙ステーション(ISS)の建設が進んでいるんだ。アメリカやロシア、カナダ、欧州、日本の15か国が参加するプロジェクトで、ふたりの宇宙飛行士が長く滞在している。建設物資の輸送をスペースシャトルが担当するので、飛行が再開されないとISSの建設も進まない。長期の宇宙飛行に必要となる医学・生物学の研究もできなくなってしまう。ISSが完成するまでは、スペースシャトルの力が必要なんだ。
(2005年5月7日)
|