|
佐藤 実千秋記者(朝日新聞生活部)
栃木県小山市でおさない兄弟が誘拐されて川で亡くなっていた事件、とてもかわいそうだった。
いっしょに住んでいた男が犯人だって聞いたけど。
そう。兄弟は父親とともに、父親の後輩の男のアパートに住んでいた。兄弟は以前から、その男になぐったりけったりされていたというんだ。一時は児童相談所というところにあずけられていたんだけど、そのとききちんと対応していれば、ふたりを救えたかもしれない。
児童相談所って?
18歳までの子どもの幸せを守る施設
親や大人の虐待から保護
昨年度は2万6千件対応
 |
| 児童虐待のあった家庭のケアを受け持つチームをつくった児童相談所もあります=神奈川県藤沢市の県中央児童相談所で
|
――児童相談所は、きみたち18歳までの子どもの福祉を守るための施設なんだ。児童福祉法という法律にもとづいて、都道府県や大きな市が置いている。
ケン 福祉って?
――健康でのびのびと幸せにくらすことかな。みんなはどんな時に、幸せじゃないって感じる?
ポン お父さんにげんこつされた時、ご飯を食べさせてくれなかった時、お兄ちゃんばかりかわいがられる時……。
――そうだね。悪いことをしたら、しかられるよね。でも、悪いことをしなくても、ひどいことをつづける親や大人が、たまにだけれどいるんだ。ひとりで子育てに一生懸命になりすぎていらいらしたり、仕事がなくなって暮らしていくお金がなくなったり。
ポン ふーん。
――児童虐待っていうんだけど、そういう時にお父さんやお母さん、あるいはそれに気づいた保育園や学校の先生たちからの相談を受けて、きみたちの命や心を守ることは児童相談所の大切な役割なんだ。
ジャン 具体的に何をするの?
――直接行って親や近所の人に聞いたり、心の動きの専門家が子どもの様子を判断したりする。子どもを守る制度の専門家や、心を診断する専門家がいるんだ。そして必要な場合は、親から一時はなして保護したり、施設に入れたり、代わりに育ててくれる里親さんをさがしたりするんだ。
ジャン 栃木県小山市の事件では、児童相談所の所長さんがあやまっていたけど、どうして?
――おさない兄弟が男に虐待されていると知らされて、一度は保護した。しかし、兄弟はまた、男といっしょに住むようになり、事件をふせげなかった。児童相談所がふたりの安全を真剣に考えていたら救えたのではないか。多くの人がそう感じている。
ケン そうなんだ。児童虐待ってそんなにあるの?
――全国に182か所ある児童相談所で、昨年度に対応した虐待の相談は2万6573件。前の年より約2800件もふえていて、年々過去最高を更新しているんだ。
ポン そんなに!
悪い事をした子の指導や
不登校児らの相談受ける
――児童虐待防止法っていう法律が4年前にできてから、どんどんふえている。それまで「しつけのひとつ」ととらえられがちだったのを、みんなが虐待だと気づくようになったんだね。
ケン そんなにふえていたら、児童相談所もたいへんだ。
――うん。この10月からスタートする、改正された児童虐待防止法では、今回の事件のように、いっしょに住んでいる大人の暴力を放っておくことも虐待と明記される。また、子どもが虐待されているといいきれなくても、虐待かもしれないと思ったら、まわりの先生やお医者さんたちは児童相談所などに知らせなければならなくなる。相談はさらにふえそうだよ。
ケン そういえば、長崎県佐世保市の小学校で、6年生の女の子が同級生にナイフで刺されて亡くなった事件でも、児童相談所って出てきたような。
――うん。14歳未満の子どもが犯罪に当たることをした場合は、大人とちがって警察が事情をきいたうえで、児童相談所に送られて指導するんだ。大きな事件だとそこから家庭裁判所に送られることもある。まだ成長の途中でいいことと悪いことの判断も十分につかないし、本人以外に家庭環境に問題がある場合もある。だから罰するよりも健全に育つように保護しようという考え方だね。
ジャン いろいろな役割があるのね。
――ほかにも、身体障害や知的障害のある子についての相談や、不登校の子についての相談にも乗っているよ。子どもを守る大事な仕事ばかりだね。ただ、そうした仕事にあたる専門家の人数が、国の基準に満たない児童相談所が多いなど、課題もあるんだよ。
(2004年9月25日)
|