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大野 宏記者(朝日新聞スポーツ部)
アテネ五輪で日本のとった金メダルは16個。これまでで一番多かったんだってね。
その16個目がよくわからなかったな。男子ハンマー投げの室伏広治選手、おしいところで「銀」だったじゃない。なのに閉会式の日に、金メダルになったんだよ。
1位だったハンガリーのアヌシュ選手が、ドーピング違反で失格になって、2位だった室伏選手がくり上がったんだ。
禁止されている「強くなる薬」を使う
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| 表彰台に立つアヌシュ選手と室伏広治選手(左) |
【過去の五輪のドーピング数】
年 大会 件数
1968 メキシコ 1
72 ミュンヘン 7
76 モントリオール 11
84 ロサンゼルス 12
88 ソウル 10
92 バルセロナ 5
96 アトランタ 2
2000 シドニー 11
04 アテネ 24
(IOCなどによる。アテネ五輪は検査拒否の失格などをふくむ) |
試合の後おしっこをとり
上位3人らを厳密に検査
ポン 「ドーピング」って何?
――日本語にすると「禁止薬物使用」。使っちゃいけない薬を使うことだよ。もとは、アフリカのある部族の人たちがお祭りや戦争の前に飲む、興奮してくるお酒を「ドープ」といったんだけど、19世紀になって、競走馬に興奮する薬を飲ませることを指すことばになった。これが人間にも広まったわけ。
ケン 薬を使ったかどうかは、どうやって調べるの?
――試合の後でおしっこをとるんだ。上位3人と、無作為にえらばれた選手が検査室へよばれ、立会人が見ている前で容器に入れなきゃいけない。試合のないときでも、ぬき打ちで検査に来ることもある。検査の正確さはいろんな説があるけど「25メートルプールに1滴、何かの薬を入れても、何が入ったかわかる」といわれてるよ。
ジャン どんな薬がダメなの?
――最初に使われ出したのが興奮剤。痛みや疲れをごまかすための薬だ。1960年のローマ五輪
では、デンマークの自転車選手が、いまだと「覚せい剤」として持ってるだけで警察につかまるアンフェタミンという薬を使いすぎて競技中に死んでしまった。これがドーピング検査をするきっかけになったんだ。
ポン ふーん。
――つぎに問題になったのは「たんぱく同化ステロイド」。いわゆる「筋肉増強剤」だ。もともとは事故や大きなけがをした人のため、筋肉を早くもとにもどすためにつくられたんだけど、競技で強くなるために使うと、おこりっぽくなるなど副作用がすごいんだ。心臓が止まっちゃうこともある。
ケン それでも使う人がいたんだ。
――検査がむずかしいということもあってね。試合の直前に薬を使うのをやめると見つからなかったこともあった。ただ、88年のソウル五輪から検査の技術が進んで、陸上男子100メートルで9秒79の世界記録で優勝したベン・ジョンソン選手(カナダ)が失格する大事件が起きたんだ。
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【アテネ五輪でのドーピング】
国際オリンピック委員会(IOC)のまとめによると、大会期間中のドーピング(禁止薬物使用)違反件数は史上最多の24件。これまで最多だった1984年ロサンゼルス大会の「12」から倍増した。
メダルをうばわれたのは、アヌシュ選手らの3つの「金」をふくむ7件。違反が急増した背景には、検査を行う回数をふやしたことや、検査技術の向上があげられる。
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再検査拒んだので金失格
大切なのはフェアの精神
ジャン それでドーピングはへったの?
――いや、別の手口がふえた。酸素がいっぱい入っている自分の血を保存しておいて、試合の直前に輸血して持久力を高める「血液ドーピング」というのも出てきたんだ。それに対抗するため、2000年のシドニー五輪からは血液検査も始まった。
ポン それで、アヌシュ選手はどんな薬を使ったの?
――まだわかってないんだ。
ジャン それなのに金メダルを取り上げられちゃうの?
――ドーピング違反の中には「検査に協力しない」ことも入っている。アヌシュ選手はいっしょに指導を受けている円盤投げの選手がドーピングで失格になったから、もう一度おしっこを検査に出すようもとめられたけど、したがわなかった。
ふたりとも最初の検査に出したおしっこの量がすごく少なかったので、ほかの人のおしっことすりかえて検査をごまかそうとしたうたがいがかかっている。前にアヌシュ選手からとったおしっこと、競技の後で出したおしっこは別人のものだという検査結果も出た。
ケン そうなの。
――いまのドーピング検査は、ただ「体に悪いから」じゃなく、「ずるをしてはいけない」という考えで行われている。アヌシュ選手は薬を使ったかどうかより、フェアにふるまわなかったことで失格になったんだ。
(2004年9月11日)
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