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Winnyの開発者逮捕って?

上田 俊英 記者(朝日新聞科学医療部)
ジャン

 Winnyっていうコンピューターのプログラムをつくった人が警察に逮捕されたって聞いたけど、何に使うプログラムなの?

上田記者

 インターネットを使って、知らない人同士が音楽や映画などさまざまな情報を、かんたんに交換できるようにするプログラムなんだ。

ケン

  CDを買わなくても、好きな曲が手に入るってこと? ぼくも使ってみたいな。

上田記者

 ちょっと待って。他人がつくったCDやビデオを勝手にコピーして配ったり、売ったりしちゃいけないことは知っているかい。

ポン

 聞いたことがあるような気もするけど……。それが今度の事件と関係あるの?

 ネット上の著作権侵害を助けた疑い

Winnyの画面。「検索単語」の欄にキーワードを入力すると、そのときインターネットにつながっている世界中のWinny利用者のパソコンの中が検索されます。画面には、入力したキーワードをふくむファイルのリストが表示され、すきなファイルをえらんでコピーできます

 音楽・映像の勝手な複製
 作者の権利・利益を侵す

 ――「著作権」ということばを聞いたことがあるかい。

 ポン 何、それ?

 ――本や絵を書いたり、作曲したり、映画をつくったりした人は、作品を他人に見せたり、聴かせたり、売ったりする権利を持っている。この権利を著作権というんだ。

 ケン なぜ、そんな権利があるの。

 ――たとえば作家を考えてごらん。本を売って、その収入でくらしている。だれかがその本を大量にコピーして配ったら、どうなる?

 ジャン 本が売れなくなっちゃう。

 ――そう。著作権が守られないと、どんなにいい作品を書いても、作家は生活できなくなる。そうなれば、文化や芸術はすたれてしまう。

 ポン 大変だ。

 ――だから、世界中の国々が法律で著作権を守っている。最大の目的は「文化の発展」なんだよ。

 ケン それが事件とどう関係するのかな。Winnyをつくった人はCDや映画を勝手にコピーして配ったの?

 ――配ってはいない。でも、考えてみて。Winnyを使う人が、自分のパソコンに映画を記憶させたとする。Winnyを使う人同士はかんたんに情報交換できるから……。

 ジャン だれでもインターネットを通じて、その映画を手に入れられる。

 ――これは映画を勝手にコピーして配るのと同じだ。だから法律は、作品をインターネット上に置いて、みんなが手に入れられるようにすることも、作者の著作権のひとつと定めている。作者以外が勝手に置くと「著作権侵害」という犯罪になる。

 ケン それなら、映画を最初にインターネット上に置いた人が罪になるんじゃないの。Winnyをつくった人は関係ないと思うけど。

 ――警察の考えはちがう。Winnyをつくった東京大学大学院助手(33歳)は、Winnyが悪用されることを知りながら、プログラムを改良するなどして、犯罪を手助けしたうたがいがあるというんだ。犯罪を手助けした人も罪になるんだよ。

 ポン じゃあ、Winnyをなくしちゃえばいいのに。

 使い方によっては利点
 「罪といえるのか」の声も

検索した情報はネットワーク上を自由に行きかい、さがし出したファイルも別の経路で検索した人のパソコンにとどくこともあります

 ――Winnyはいいことにも使えるんだ。一番の利点は情報をだれがインターネット上に置いたかがわかりにくいことだ。だから、たとえばだれかが悪いことをしようとしていると知ったとき、みんなにこっそりつたえるのにも使える。

 ジャン それでも罪になるのかな。

 ――犯罪といえるのかとうたがう声もあるよ。ただつかまえるだけでは、社会に役立つ技術までうしなわれると心配する専門家もいる。

 ケン Winnyのように情報を交換するプログラムは、どのくらい使われているの?

 ――使ったことがある人は日本だけで186万人、という調査結果がある。

 ポン どんな情報を交換しているの。

 ――音楽、写真、映像が中心だ。計算上は、これまでに1億1221万の音楽と4266万の映像が交換されたことになるらしい。残念なことに、この中には多くの違法な交換もあるとみられている。

 ジャン 作者の許可をえないで交換し合っているのね。

 ――みんなもインターネットを使うことが多いかもしれない。いろいろな情報がかんたんに手に入るし、とても便利だけれど、その情報が作者の了解を得て流されているものなのか注意しないとね。

(04年5月22日)


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