谷口 哲雄記者(朝日新聞科学医療部)
こないだ東北で大きな地震があったね。
東京でもずいぶんゆれて、びっくりしたよ。
うん。幸い亡くなった人はいなかったけど、約170人がけがをした。東北新幹線の線路をささえる柱のコンクリートがはがれるなどの被害もあったね。日本は「地震大国」で、いつどこに次の大地震がくるかわからないんだ。
えっ、心配だなあ。もう少し教えて。
ジャン そもそも地震はどうして起きるの。
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イラスト・永田修康
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――地球の表面は、プレートという巨大な岩の板でおおわれている。プレートは全部で十数枚あって、それぞれ別の方向に毎年数センチずつ動いているんだ。
プレートどうしが近づくところでは、プレートが押しあうなどして力がかかり、地震のもとになる力がたくわえられる。
ケン どうして日本には地震が多いのかな。
――日本列島のまわりでは、図のように4つのプレートがぶつかりあっているんだ。さかいめが海面から深いと「海溝」、浅いと「トラフ」というよ。
それぞれのさかいめでは、陸のプレートが海のプレートに引きずられていっしょにしずみこみ、だんだんゆがんでいく。でも、やがてたえられなくなって、ポーンとはね上がる。このとき地震が起きるんだ。
ジャン 東北の地震もそうだったの。
――いや、今回はプレートのさかいめではなく、太平洋プレートの中で起きたんだ。プレートのゆがみがたまってバリッと割れ、その衝撃が地表につたわったとみられている。震源が地下71キロと深かったため、地震が大きかった割には被害が少なくてすんだんだ。
ケン 力が出てしまったのなら、このあたりでは、とうぶん地震の心配はないのかな。
――いやいや。宮城県沖では、プレートのさかいめで大きな地震が30年から40年に1回のペースで起きている。最後に起きたのは1978年だったから、そろそろ次の地震に注意する時期がきているね。政府の地震調査委員会は「今後30年の間に起こる確率は98パーセント」と予想しているんだよ。
ポン ひゃあ、そのうち、かならずくると思っておかなくちゃいけないのか。
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小学校での防災訓練。地震が起きたらどうするか、ふだんから確認しておこうね |
【地震へのそなえ】
1 地域の避難場所、避難 道路を確認する
2 非常持ち出し品を点検 し、おき場所を確認す る
3 わが家の耐震度を測定、ブロックべいなど をチェックしておく
4 たんすや食器だな、冷蔵庫などの家具を固定する
5 消火器具などの安全を点検し、おき場所を確認する
(政府の地震調査研究推進本部ホームページから) |
――そうなんだ。ほかに、南海トラフぞいに起きる東南海地震や南海地震も、30年以内に起こる確率が40―50パーセントといわれている。駿河湾周辺を震源とする東海地震も、いつ起きてもおかしくない。それに、1995年の阪神大震災のような、陸の浅いところで起きる「活断層型」の地震にも気をつけなくちゃいけない。
ケン 活断層?
――プレートにできた「きず」で、両側の岩がたびたびずれ、地震が起きる。日本にはわかっているだけで約2000か所もあるから、絶対に安心な場所はないと考えたほうがいい。
ジャン 日本ではどのくらい大地震が起きているの。
――全国では平均して12年に1回の割合で、大きな地震災害が起こるといわれている。中でも被害の大きかったのが1923年の関東大震災で、10万人以上が亡くなった。お昼時に起きたので、広い範囲が火事になったんだ。最近では阪神大震災で6400人以上が亡くなった。
ジャン 地震がくることが、前もってわかればいいのに。
――地震の予知だね。残念ながら「いつ、どこで、どのくらいの大きさの地震がくるか」をきちんと予測することは、いまの科学ではむずかしいんだ。
ケン じゃあ、どうすればいいの?
非常食とか飲み水なんかを用意しておけばいいのかな。
――それも大事だけど、阪神大震災では、亡くなった人の9割は、つぶれた建物の下敷きになった。建物を補強して、地震でもこわれないようにすることがいちばん大切だね。
ケン 政府はどんな対策をとっているの。
――東海地震については、1978年に「大規模地震対策特別措置法」がつくられ、予知ができるという見通しにもとづき、防災対策が決められてきた。でも、ことし5月に決まった「対策大綱」では、やっぱり予知はむずかしいという考えから、建物の耐震化を急ぐことにした。
東南海地震と南海地震についても「特別措置法」がことし7月にスタートする。国や地方の役所が協力して、観測や避難計画づくりに本腰を入れることになるよ。
(03年6月7日)
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