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南極観測隊のお仕事は?

桑山 朗人記者(朝日新聞科学医療部)

ジャン

 南極観測船「しらせ」が、14日に東京の晴海ふ頭を出発したんだってね。

桑山記者

 とちゅう、オーストラリアで第45次観測隊が乗りこみ、12月末に南極の昭和基地に着く予定だよ。

ケン

 南極で何をするの?

桑山記者

 気球をあげたり、氷をほったりして、観測するんだ。すると、いまや昔の地球のようすが見えてくる。その結果、環境問題の解決につながるかもしれない。

ポン

 すごーい! もっとくわしく話して。

 地球環境のいまと昔のようすを探る

 ジャン 観測基地にたどり着くまでが大変そうね。

 ――日本から南極へ隊員や物資を運ぶのは、年に一往復する観測船「しらせ」がたよりだ。今回初めて、一部の隊員が南アフリカからロシアの輸送機での南極入りをこころみるんだけどね。
 南極大陸は、ほぼ全部が分厚い氷(氷床)におおわれ、日本の面積の30倍以上、約1200万平方キロもある。昭和基地は、大陸から少しはなれた島にあるんだけど、夏も氷でおおわれていて、氷をくだいて航行する「しらせ」でも横づけすることはできない。ヘリコプターや雪上車で人や物を基地まで運ぶんだ。

昭和基地から東へ約600キロの湖で、底にたまった物をしらべる研究者=国立極地研究所提供

 ケン 昔は犬ぞりでしょう。

 ――おっ、よく知っているね。日本の観測は、1957年に昭和基地を開設した第一次越冬隊から本格的に始まった。そのときは犬ぞり。基地にのこされたそり犬のタロとジロが1年間、きびしい寒さの中、次の隊員が来るのを待ちつづけた話は有名で、映画にもなった。

 ジャン でも、どうして冬をこしてまで観測するの。

 ――自然が手つかずのままのこっているから、地球環境の歴史がいろんな形でわかる。いわば「地球環境データの宝庫」なんだよ。

 ポン たとえばどんな?

1983年から活躍している「しらせ」。「宗谷」(56年〜)、「ふじ」(65年〜)につづく3代目の観測船です

 ――大陸の氷は、平均2000メートルをこす厚さ。過去の雪が、当時の大気を閉じこめてかたまっている。この氷を調べれば、過去にさかのぼって地球の温度や大気の成分などを知ることができる。

 ケン 今回は、どんなことをするの。

 ――昭和基地から約1000キロはなれた内陸に95年に開設した「ドームふじ観測拠点」で、氷をほるんだ。今度の観測隊から3年がかりで岩盤まで約3000メートルをほり、80万年前までの地球のようすを調べる予定だ。

 ジャン どんなことがわかるの。

 ――氷の中からは宇宙からふってきた隕石もたくさん見つかっている。たとえば、火星からの隕石には水にふれてできたとみられる鉱物がふくまれていた。火星に水が存在した可能性をしめしている。こうした研究から宇宙のようすまで見えてくるんだ。

 ポン 調べるのは氷だけ?

 ――地面も調べているよ。貝の化石や土の中にふくまれる元素を分析すると、氷におおわれていた時期がわかる。

 ケン どんな結果が出たの?

 ――過去数万年の間に氷床の先端が前進したり後退したりしていた。氷床の標高も、海に近いところは500メートル規模で上下に動いていた。氷がとけたり雪がふりつもってふえたりして海水の量に影響をあたえるらしい。南極大陸の氷床が全部とけると、地球全体の海面を約70メートルも上昇させるというから、日本に住むぼくらにも関係がある。

 ポン へぇー。

 ――環境問題でたびたび話題になる温暖化の予測もめざしているんだ。氷のようすを調べれば、過去の温暖化の歴史がくわしくわかる。その一方で、いまの大気の観測もつづけ、将来の地球環境の予測に役立てようとしているよ。

 ケン 南極の空気から、地球全体のことがわかるの?

 ――大気は地球規模で動いているから、二酸化炭素がふえたり、オゾンがへったりすると、南極でも影響が出る。南極の空気はきれいだから、わずかな変化もはっきりと読みとれるんだ。南極のようす、変化をしっかり観測することは、地球環境の将来にとってとても大事なことだよ。

(03年11月15日)


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