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郵便局がなくなるの?

  政治編;曽我 豪記者(朝日新聞政治部)       

ジャン

知り合いのおじいちゃんから、誕生日のお祝いの手紙をもらったんだけど。

ポン

「……わしの村から郵便局が消えるかもしれんのじゃ」。そう書いてあったんだよ。

ケン

パパとママに聞いたら、小泉さんの改革の影響だろうって。郵便局がなくなっちゃうの?

曽我記者

ちょっと誤解があるなあ。じゃあ、きょうは「郵政改革」について勉強してみようね。

 

小泉さんの改革で変わる「郵便」の仕事

バイクで集配にむかう郵便局員さん。いまの国会で郵便に関連する法律が話し合われています=東京都中央区の京橋郵便局で

 ―はがきを友だちに出すとき、北海道でも東京でも一枚五十円だよね。距離がちがうのに、不思議だと思わない?


 ジャン そうねぇ。宅配便を出すとき、ママが「遠くだと料金を多く取られる」ってぶつぶついってたわ。

 ―民間の会社がお金もうけを考えれば、それは当然かもしれない。全国どこでも同じ料金で郵便を配達できるのは、国のお金でやっている仕事だからなんだ。都市部の郵便で利益を出して、費用がかかる地方の分をあなうめしている。

 ポン ぼくたちは助かるよね。

 ―でも、国が仕事を広げすぎると、民間の会社は商売のチャンスをうばわれてしまう。郵便貯金や簡易保険だと、銀行や保険会社が影響を受ける。郵便の仕事なら、宅配業者だね。じっさい、荷物だけでなく手紙やはがきの配達もしたいと考える会社もあった。
 それに、国も仕事をしすぎると予算がよけいに必要になる。そこで、小泉首相は、「民間の会社にできることは、民間の会社にまかせよう」と、いろいろな改革を進めている。

 ケン その小泉首相の改革と、「郵便局がなくなる?」っていうおじいちゃんの心配と、どういう関係があるの?

 ―郵便配達のほか、郵便貯金と簡易保険の三つの仕事は、国の役所のひとつ「総務省」の中にある郵政事業庁がやっている。来年の4月には、「日本郵政公社」という新しい組織に引きつがれることが決まった。国は公社に責任を持つけれど、経営には口出しせず、民間の会社のような形で運営させたいと考えている。

 ジャン いいことじゃない。

 ―ところが、むずかしい問題があるんだ。郵政公社が民間の会社みたいな考え方をすれば、もうけにならない地方の郵便局はなくそうとか、料金を値上げしようとか、思うかもしれない。JRやNTTも国営から民営化したとき、地方の鉄道や公衆電話をなくしたことがあった。外国でも、郵便を民営化したとき、郵便局がへってしまった例があるよ。

 ケン おじいちゃんのいう通りなのかな。

 ―でも、NTTはいろんなサービスを開発して収益がよくなって、電話料金を値下げできた。郵便局がなくなるかどうかは、郵政公社の努力しだいだ。

 ジャン まだまだわからないのね。宅配業者の方はどうなの。

 ―民間の会社も郵便の仕事ができるようにすることなど、さまざまな改革をもりこんだ郵政関連法案が、九日に衆議院本会議で可決された。今月末までの国会で成立するのは確実だ。

 でも、宅配業者が手紙やはがきをあつかうには全国に約十万個のポストを用意しなければならないとか、総務省の許可がいるとか、きびしい条件がついた。

 ポン たいへんだあ。

 ―だから、ある大きな宅配便の会社は「この仕事には参加しません」、つまり、小泉首相がやってほしくても、もうけにならないのでうちはその商売はしませんという反応になった。

 ジャン 結局どうすればいいの。

 ―国の仕事の一部を民間にうつすというやり方には、いい面もある。でも、地域によって郵便の料金がすごく割高だとか、出したくても窓口やポストがないなんてことじゃこまる。みんなのくらしに関係のある問題だから、話し合いを慎重に見守らないといけないね。

(2002年7月13日)


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