政治編;福田宏樹記者(朝日新聞政治部)
アメリカの大統領が、日本に来ていたわね。
ブッシュさんが大統領になって、初めての来日だ。アメリカでは去年9月に同時多発テロが起きて、大変ないそがしさになった。今回、ようやく日本や韓国、中国を回ったんだ。
小泉首相と話し合いをしたんでしょ。
そう。18日の会談では、日本の経済の立て直しや、「テロとの戦い」が大きなテーマになった。
お馬さんもいたよ。
流鏑馬(やぶさめ)のことだね。明治神宮で、ブッシュ大統領と小泉首相がならんで見た。ふたりは、馬に乗って矢を射る姿に「テロとの戦い」をダブらせたかったようだ。
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流鏑馬を干渉する(前列左から)小泉首相とブッシュ・アメリカ大統領夫妻=18日、東京都渋谷区の明治神宮で(代表撮影) |
ジャン;ふたりは仲良しみたい。
―そう見えるように、いろんな工夫をしたんだ。流鏑馬を見たり、居酒屋で飲んだり食べたりしてね。でも、話し合ったのはむずかしい問題で、ニコニコしてばかりもいられなかったようだよ。
ケン;経済のことを話したの?
―日本の経済はひどい状態だ。アメリカは早く、会社がかかえるたくさんの借金をなくして、立て直しをしてほしいと思っている。小泉首相は「構造改革の手綱はゆるめない」と約束した。
そんな小泉首相を、ブッシュ大統領は「イチローのようだ。どんな球も打ち返すことができる」「偉大な改革者」とさかんに持ち上げた。
ポン;小泉首相はそんなにすごいの?
―全部をことば通りには受けとれないよ。アメリカは小泉首相に「早くやれ」とネジをまくより、はげます方がいいと考えた。
ジャン;「ヨイショ!」したのね。
―そうそう。でも、日本経済のひどい状態に、アメリカの不安はすごく大きい。アメリカで大きな会社を経営するような人たちは、「日本の改革はおそい」とおこっているよ。
ケン;よその国のことなのに?
―日本の経済がめちゃめちゃになったら、日本の中だけの話じゃすまなくなるんだ。アメリカはもちろん、世界中の経済を混乱させるかもしれない。
ポン;ブッシュ大統領は大勢の前でも話していたけど。
―国会演説のことだね。そこでも大統領は、日本について「世界でも有数の競争力を持つ会社があり、高い教育を受けた意欲的な働き手にもめぐまれている」とほめて、元気を取りもどすようによびかけた。
ジャン;「テロとの戦い」はどうだったの。
―ブッシュ大統領は日本の協力に感謝し、これからもいっしょにやっていこうと小泉首相にいった。大統領はアフガニスタンへの攻撃にくわえて、こんどはイラクへの攻撃も考えているようだ。
ポン;えっ、もう戦いはいやだよ。
【ブッシュさんって、どんな人?】
1946年生まれの55歳。双子の娘のお父さんです。2001年1月、第43代のアメリカ大統領になりました。父親も2代前の大統領でした。親子で大統領をつとめたのは、アメリカではふた組目です。
アメリカのテレビ局が先月発表した就任後1年の支持率は82パーセント。人柄は、好ききらいがはっきりしていて、勉強や読書はきらい。趣味は、野球のサインボール集めと釣りなどだそうです。
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―そうだね。でもアメリカは、イラク、イラン、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の3つは世界の敵だといっている。これには、一方的で乱暴な決めつけだとあちこちの国から批判も出ている。
小泉首相は「テロに対する大統領の強い決意と受け止めている」とかばった。
ジャン;小泉首相はブッシュ大統領と話して、よしやるぞって感じなの?
―「よりいっそう改革路線を進めていく」と記者たちに話した。でも、いまのように景気がわるいと、改革はむずかしい。「テロとの戦い」にしても、アメリカがもしイラク攻撃を始めたら、日本がどこまで手つだうのか、もめるだろう。むずかしい宿題がのこったよ。
(2002年2月23日)
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