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尾関章記者(朝日新聞科学医療部)
日本から同じ年にふたりもノーベル賞にえらばれるなんて、すごいね。物理学賞の小柴昌俊さんも、化学賞の田中耕一さんもうれしそうだったわ。
でも、ふたりの研究について新聞で説明してあったけど、よくわからないなぁ。
たしかにむずかしいかもね。でも、小柴さんの成果は天文学、田中さんの研究は生命科学に新しい道を切りひらいたんだ。これから、みんなの知識や暮らしをゆたかにしてくれると期待されているよ。
もっとくわしくおしえて。
宇宙と人体、新しい世界を切りひらく
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| ノーベル賞受賞の記者会見で、笑顔を見せる物理学賞の小柴昌俊さん(左)と化学賞の田中耕一さん(右) |
ジャン 新聞に書いてあった、小柴さんの「ニュートリノ天文学」って?
―天文学は、星空を見て宇宙のなぞをとくこと。夏休みに星を観察した人もいるだろう。
ケン ぼくは高原で夜空を見上げたよ。
―でも、小柴さんは、岐阜県の神岡鉱山の地下で観測した。みんなとちがうやり方だね。
ポン どうちがうの?
―人間は大昔から、目で星を見てきた。十七世紀にガリレオ・ガリレイというイタリアの科学者が望遠鏡を使ってから、目に見えない星も観察できるようになったけれど、星からの光を見ていることでは同じだった。ところが二十世紀になって、電波やX線などを使う、いろんな方法が始まった。
ポン ふーん。
―でも、電波もX線も、光と同じ「電磁波」の仲間なんだ。
ケン へえー。じゃあ、小柴さんは?
―小柴さんは、ニュートリノという粒子で宇宙を見たんだ。ニュートリノは、原子なんかよりずっと小さな粒のひとつだけど、めったにほかの物質と反応しないので、観測がとてもむずかしい。なんでも通りぬける。
ポン ぼくの体も?
―うん。太陽からとんできたニュートリノが、みんなの体を一秒間に300兆個も通りぬけているらしい。
ジャン えっ、そんなに! でも、そのニュートリノが天文学に役立つの。
―天体からはなたれたニュートリノは、そのままとんでくる。物質に吸収されやすい光にくらべ、ずっとよく天体の中のようすをおしえてくれるんだ。
ケン それをつかまえたのがカミオカンデだね。
―そう。地下千メートルにある水タンク型観測装置だ。1987年に世界で初めて、遠い宇宙で起きた超新星爆発のニュートリノを観測した。
ケン 超新星って、新しい星?
―急に明るくなるから新しい星に見えるけど、年老いた星が一生の終わりに大爆発を起こした姿なんだ。星の理論で、この爆発はニュートリノを出すといわれていた。小柴さんは、科学者が頭の中で考えていたことの証拠をとらえたわけだね。
ケン ほかにも、ニュートリノでいろいろわかるのかな?
―たとえば、宇宙がうまれたときの大爆発「ビッグバン」。その直後に出たニュートリノをつかまえれば、この宇宙がどうしてできたのかがわかるかもしれない、といわれている。
ジャン 化学賞の田中さんはどんなことをしたの?
―人間の体内には、たんぱく質がいっぱいある。体の組織をつくったり、体のはたらきを調節したりしている。そのひとつひとつの重さを知る方法を見つけたんだよ。
ポン たんぱく質の重さがわかると、いいことあるの?
―体内のたんぱく質の中には、その一部分がちょっとちがうだけで病気になるものがある。病気を診断したり、薬をつくったりするには、たんぱく質を調べる必要がある。
ケン 病気を治すのに、田中さんの発見した方法が役立つんだね。
―そう。「遺伝子」ってことばもよく聞くよね。工業にたとえると、遺伝子は設計図で、たんぱく質は製品。人間の遺伝子についての研究はかなり進んでいる。だから、これからは遺伝子の指示でつくられるたんぱく質を調べる時代なんだ。田中さんの仕事は87年に発表されたけど、いま注目される理由は、そこにあるんだよ。
ジャン ふたりの研究はまったくちがうね。
―小柴さんが宇宙のなぞをさぐる人なら、田中さんは人体のなぞにせまる人。共通点は科学の最前線にいる新しい世界の案内役だ。
(02年10月21日)
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