|
政治編;坪井ゆづる記者(朝日新聞政治部)
お母さんが心配しているの。「自衛隊が戦争に行くのかしら」って。
えーっ、戦争っ! やだよ、こわいよ。どういうこと?
アメリカで起きたテロ事件をきっかけに、国会で新しい法律をつくったんだ。日本が直接、戦争をしに行くわけじゃないけど、戦争に関係はあるよ。
|
|
|
参議院本会議でテロ対策特別措置法が可決・成立し、一礼する福田康夫官房長官(手前)=10月29日、東京・永田町で
|
ケン;どんな法律なの。
―「テロ対策特別措置法」といって、かんたんにいうとテロの犯人をやっつけようとしているアメリカを応援するのが目的だね。そのために、自衛隊を初めて、戦争している国の近くまで出すことにしたんだ。
ジャン;テロはアメリカで起きたのに、なぜ、日本が法律をつくったの?
―おとなの社会では、ルールは法律で決める。こんど自衛隊がアメリカに協力する仕事は、これまでやったことがない新しい仕事なんだ。だから、その中身は法律で決めないといけないんだよ。
ポン;ジエイタイ?
―自衛隊は、どこかの国やグループが日本に攻めてきたときに、みんなを守る人たちだよ。地震や災害のときも助ける。「自衛」は、自分を守るという意味さ。
ジャン;わたしたちを守る人たちが、テロが起きると海外に行くの? ややこしいなあ。
―その、ややこしさが、こんどの法律をつくるときも問題になったんだ。どうやら、むかしの話からした方がよさそうだな。みんなは、日本が戦争をしたことは知ってた?
ケン;何となく。
―50年以上も前のことさ。日本は中国や韓国をはじめ、アジアでたくさん人を殺した。最後はアメリカに、広島と長崎に原爆を落とされて戦争に負けた。日本や近くの国々に多くの犠牲者を出したのを反省して、もう殺し合いはやめようと、「戦争をしない国」になったんだ。
ジャン;平和がいいよね。
―日本は50年以上、外国で鉄砲や大砲を撃ったことがない。これほど平和に行動してきた国はめずらしいし、世界中に自慢できるよ。
ジャン;それが、こんどのテロでかわってしまうの。
―そうとはいえないな。日本はアメリカの兵隊さんたちに食べ物や燃料を運ぶとか、戦争で家をなくした人たちを助けるとか、病気の治療をしてあげるとか、そういう仕事をしようと考えている。アメリカみたいにミサイルを撃ったり、爆弾を落としたりはしないよ。
ジャン;さすが「平和ニッポン」ね。でも、戦争しているアメリカを応援すれば、日本も戦争していることにならない?
―そういう意見は国会でもあったよ。ジャンのお母さんは、その点を心配しているんだろうね。もし自衛隊がおそわれたら、鉄砲を撃ち返すからね。
ケン;やっぱり戦争をするの。
―政府は「戦争をしているところまでは行かない」といってる。だけど、いろんな問題も指摘されているよ。いきなり遠くからミサイルでねらわれたら、戦争に巻きこまれてしまう、とか。自衛隊がする仕事の計画は、出発前に国会でOKしておくべきじゃないか、とか。
ジャン;最後に教えて。心配しているお母さんには、なんといって安心してもらえばいい?
―新しい法律は、2年で「期限切れ」なんだ。もし、戦争が泥沼にはまって、悲しい結果を生んだら、そのときには、もう法律をやめて、自衛隊の協力をやめることもできる。しっかり戦争の行方を見ておいてね、っていっておこう。
|
テロ対策法のおもな内容
【自衛隊の活動】公海上(どこの国でも使える海の上)や、その国がみとめた外国領の、戦闘が行われていない地域で、アメリカ軍などを手助けする。武器・弾薬は、外国の領土で陸上輸送できない。
【武器の使用】自分や、いっしょにいる自衛隊員、また、自分が管理する人を守るために使える。
【国会での手つづき】活動を始めて20日以内に国会で承認をもとめる。
|
(2001年11月3日)
|