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科学編;杉本潔記者(朝日新聞科学部)
野依良治さんがノーベル化学賞をもらうことになったわね。でも、どんなことをしたのかしら。
わたしたちの生活にも、とても役に立っているよ。
たとえば、どんな?
チューインガムや毎日使うねり歯みがきの中には、スーッとするいい香りのついたものがあるでしょ。「メントール」という香りのもとが使われているんだけれど、これをむだなくつくれるようになったのも野依さんのおかげなんだ。
どういうこと。
それまでのやり方でメントールをつくると、いい香りがするものと、しないものと、ふたつの形ができてしまう。
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教え子の大学生らから祝福される野依良治さん=愛知県名古屋市の名古屋大学で
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ポン;ふたつの形って、よくわかんない。
―じゃあ、左右の手のひらを見て。形はそっくりでピッタリ合うけど、両方の手のひらを顔に向けると、5本の指のつき方がさかさまで、形がちがうのがわかるでしょう。
ポン;ほんとだ。
―メントールも同じ。4個くらいの部品がくっついてできてるんだけど、つき方がふた通りあって、片方を鏡にうつすともう片方の形が見える。「光学異性体」ってよんでるけど、いい香りがするのは片方だけ。もう片方はいい香りがしなくて、役に立たない。でも、なにもしないでつくると、両方が半分ずつできてしまう。
ジャン;役に立たない方だけすててしまえばいいじゃない。
―重さとかほとんどの特徴が同じなので分けるのはむずかしいし、それではむだが多すぎる。それだけならまだいいけど、片方だけ毒なんてものもあるんだ。
ポン;こわーい。
―50年くらい前に、サリドマイドっていう、よくねむるための薬が出た。でも片方は薬だったけど、もう片方は毒だった。その両方が混ざっていたので、おなかに赤ちゃんがいるお母さんが飲んで、赤ちゃんの手足の形が変わってしまうなどの被害が出たんだよ。
ケン;それはたいへんだ。役に立つ方だけをつくることはできないの。
―野依さんがやったのはそれなんだ。メントールをつくるときは「触媒」っていうものを助けに使うんだけど、それを工夫して、片方しかできないようにした。このように必要な片方だけをつくる方法を「不斉合成法」と、よぶんだ=イメージ図参照。
ジャン;どういうこと?
―原料の部品がくっつき合うとき、つくものどうしなら、どれとどれがついてもかまわない。でも、野依さんが考えた「触媒」を使うと、ある部品と部品の間に「道」ができて、それ以外のものとはくっつけなくなる。だから片方しかできないというわけ。
ケン;すごい。そういえば、去年も日本人がノーベル賞をもらっていなかった?
―よくおぼえていたね。白川英樹さんが野依さんと同じノーベル化学賞をもらったんだ。2年連続の受賞に、「日本の化学の水準の高さが証明された」という人もいる。
野依さんは後輩の研究者たちへ「化学は日本が非常に強い分野。ものづくりで生きていく国として、ほこりを持って研究してほしい」とメッセージをおくった。
ケン;ノーベル賞をもらう人は天才ばかりだから、ぼくなんかには絶対、無理だね。
―そうでもないよ。野依さんだって、中高生のときは柔道ばかりやっていたわんぱく坊主。成績もそれほどよくなかった。でも、大学4年生になって化学がおもしろくなったんだって。「才能がないから、ふつうの人なら80パーセントですむところを120パーセントやらなければならない」と、研究に熱中したというよ。
ジャン;やりたいことを、いっしょうけんめいやればいいってことね。
―その通り。
ポン;じゃあ、ガムをいっぱい食べよう。
ケン;ちがうって。
(2001年10月21日)
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