中台「経済協力枠組み協定」締結

 

 

 中国と台湾は6月29日に「経済協力枠組み協定」に調印しました。これは互いに輸入品にかける関税を廃止するなど、経済関係への障害を取り除くことを目標としています。日本では中国と台湾が敵対しているように思われがちですが、実は中台は急速に親密になり、経済は一体化しつつあります。アメリカがそれを後押ししているのです。

 

経済協定の署名を終えて握手する中国側関係者(中央右)と台湾側関係者=6月29日、中国・重慶で ©朝日新聞

中国・台湾60年の対立終わる 米は歓迎


 Q 中国と台湾はそのうち戦争するように言う人もいるけど、なぜ仲が悪かったの?
 A 第二次世界大戦後、日本軍が撤退すると、中国では蒋介石の率いる国民党と毛沢東の共産党の内戦が再燃した。敗れた蒋介石は1949年12月に国民党軍80万人とともに台湾に逃れ、米国の支援を得て本土に攻め込もうとした。本土のすぐ沖の金門島、馬祖島は国民党軍が確保し「大陸反攻」の足掛かりにする気だったので、中国軍は上陸作戦をしたが撃退され、68年まで島と大陸の間で砲撃戦が続いた。
 だが米国は、71年から中国に接近、中国軍を強くしてソ連(当時)に対抗させようとし、台湾に対する援助は打ち切った。蒋介石は75年に死去、その後継者の蒋経国は88年に亡くなったため、台湾生まれの李登輝副総統が総統に昇格した。この人は京都大学在学中に学徒動員(大学生も軍に入れること)で日本陸軍少尉、高射砲小隊長をつとめた親日派で、台湾の独立を望む姿勢を示した。
 その次に総統に当選した陳水扁氏も台湾生まれで、やはり独立願望が強かったから、中国は警戒した。台湾が独立すると、他の地域にも独立運動が広がりかねないからね。「公然と独立するなら攻撃するぞ」という構えを示していた。

 

台湾の馬英九総統。「独立反対、大陸との関係拡大」を唱え、2008年に総統に就任した ©朝日新聞

 Q それがなぜ急に仲良くなったの?
 A 2008年の総統選挙で香港生まれの馬英九氏が「独立反対、大陸との関係拡大」を唱え、58%以上の記録的得票率で当選し、中国と直接に通商、通航、通信をできるようにする「3通政策」を進めた。台湾と中国の定期航空便は週に270便に上っている。台湾から中国の多くの主要都市に毎日2便とか4便が飛ぶし、中国側からも来るから、1日約40便になってもおかしくないんだ。馬総統は「週500便にしたい」と言っている。貨物船も昨年1万3000隻が往復した。
 台湾の輸出の約3割、海外投資の約7割が中国向けで、中国には台湾系の企業が2万8000社以上もあり、約200万人の台湾人が中国大陸に住んでいる。馬総統はこれまでにも「中国からの投資の受け入れ」「観光客の解禁」「捜査協力」など12もの協力協定を結んでいたが、今度の協定で関税も大部分廃止になると、中国と台湾の経済一体化が加速するのは確実だ。


 Q 台湾の人たちは大陸との一体化を喜んでいるの?
 A いや。世論調査ではいまの独立でも統一でもない、あいまいな「現状の維持」を望む人が約85%、「独立」が6%、「統一」は2%だ。一緒になって給料も中国並みになってはかなわないからね。関税を全廃すると台湾の農業や一部の中小企業は大打撃を受けるから、農産物の輸

入は認めず、台湾は267品目、中国は539品目の関税を2年以内にゼロにする。中国は台湾を抱き込むため、相当譲った条件をのんだ形だが、台湾では「中国に吸収される」と反対運動も激しい。


 Q 台湾が中国に急接近すると、アメリカも怒るんじゃないかしら?
 A 実は逆でね。米国の高官が「中台関係の最近の発展は喜ばしい」と言明するなど、馬総統の政策を後押ししている。中国は米国債(政府の借金)を80兆円分も買って米国の財政を助け、230兆円も持っている外貨の大部分を米国の銀行、証券会社に預ける大口の客だ。中国に米国系企業は2万4000社もあり、拡大する中国市場を狙っている。台湾にも投資しているから、台湾と中国がケンカされては困るんだ。日本にとっても中台の紛争の可能性が減るのは、まずは良いことなんだ。

 

 

 

 

(田岡 俊次) 

2010年7月25日

 

朝日学生新聞社のホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
すべての著作権は朝日学生新聞社に帰属します
ページの先頭へ