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1月14日の台湾総統選挙で、中国本土との関係強化を急速に進めてきた国民党の馬英九総統が再選されました。中国にのみ込まれる、と批判した民進党の女性候補者、蔡英文さんとの接戦が予想されましたが、馬氏が689万票(得票率51・6%)で蔡氏の609万票(同45・6%)に差をつけました。台湾はさらに中国寄りになるのでしょうか。
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| 台湾総統選挙で勝利宣言をする馬英九総統(中央)=2012年1月14日、台北市で©朝日新聞 |
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| 経済協力枠組み協定の署名を終えて握手する中国側(右)と台湾側の関係者=2010年6月29日、中国・重慶で©朝日新聞 |
Q 台湾の人々は独立を願っているのに、中国は軍事力で脅して独立を妨げようとしているのかと思っていたけど、この選挙結果を見ると、どうもそうじゃないみたいね。
A 1996年に初めて台湾で総統選挙が行われた際には、中国は独立色の濃い李登輝氏の当選を妨げようとして、台湾近海でミサイル実験をして脅したが、台湾の人々の反発を招いて逆効果になり、李氏が大勝した。この苦い経験から、その後の中国は台湾に温和に接し、経済関係の拡大で抱き込んだ。
いまでは台湾の輸出の4割以上、海外投資の約8割が中国本土向けだし、台湾人のビジネスマン、技術者ら100万人以上が本土で働いているのだから、4年前の総統選挙でも「大陸との関係強化」を公約にした馬英九氏が当選した。
その後、中国と台湾の親密化は急速に進んで、2009年8月に始まった中台間の定期航空便はいまや週に550便までになった。
1日に約80便とは驚きだが、台湾の3つの空港と、多数の中国の都市を往復する双方の旅客機を足すとこんな数になる。
また10年6月には中国と台湾は「経済協力枠組み協定」を結んで、関税(輸入品にかける税金)を廃止したり、安くしたりした。13年1月には825品目の関税をゼロにする。
日本とアメリカの間では、これからTPP(環太平洋経済連携協定)参加交渉を始めようとするのだから、中国と台湾のほうが先を行っているんだ。
馬英九政権がこれまで中国と結んだ協力協定は16もある。犯罪捜査協力協定もできて、昨年6月には中国と台湾の警察が「振り込め詐欺」の犯人約600人を双方で一斉に検挙したこともある。
Q 今後さらに4年間、馬英九政権が続くと、台湾は中国と一体化し、統一に向かうことになるのかしら?
A 台湾の世論調査では、いつも「現状維持」が80%以上、「独立」「統一」はともに数%だ。台湾は事実上は中国から独立した状態だが、法的には中国の一部、というあいまいな現状を認める人が圧倒的多数だ。
独立して、中国本土との経済関係が断絶したり、戦争になっては困るが、他方で1人当たり所得が約4分の1の中国本土と合体して収入が減ったり、政治的自由が制約されるのもうれしくないから「現状維持」しかないわけだ。
中国にとっても台湾の人々の意向に反して、無理に統一しても、その後の統治が大変だ。いまのように親密な関係を保つ現状維持のほうが得策なんだ。
馬総統は中国との平和協定を検討する考えも示したが、民進党から非難され一時引っ込めた。平和協定の締結は困難でも、中台双方の首脳が「敵対関係の終了」を表明するのは比較的容易だ。
もしそうなれば1989年に米国の先代ブッシュ大領と、ソ連のゴルバチョフ共産党書記長が地中海のマルタ島で会談し「冷戦終了」を宣言したのと似た形になる。
Q アメリカは台湾が中国と親密になり、経済では一体化するのを止めようとしないの?
A それは逆でね、アメリカは馬英九政権の親中政策を後押ししてきた。
中国はアメリカ国債を1兆j以上買って米政府を支えているし、3兆j以上の外貨の大半を米金融機関に預けている。中国への輸出も拡大したいから、中国とうまくやりたいのだ。
もし台湾が中国と対立し、米国内のタカ派が「台湾を助けろ」と騒ぎ出せば米政府はつらい立場になる。馬英九氏の再選でホッとしている様子だ。
(田岡 俊次)
2012年1月29日 |