|
悲願だった日本初有人宇宙施設
土井さんが船内保管室備え付け
 |
| 「きぼう」の船内保管室に日の丸を飾り、記念写真に納まる土井隆雄さん〓十五日、NASAテレビから |
宇宙に日本の「家」をつくる作業が本格的に始まりました。日本初の有人宇宙施設「きぼう」の部品が、米国の航空宇宙局(NASA)から打ち上げられたスペースシャトル・エンデバーで国際宇宙ステーション(ISS)に運び込まれたのです。乗組員七人の中には土井隆雄さんもいて、設置作業を担当しました。日本人宇宙飛行士の募集も再開され、開発は新時代に入りましたが、宇宙実験がどこまで必要か、巨額の運営経費に見合うか、改めて問われてもいます。
ISSは、参加15か国が共同で持つホテルのようなもので、実際には米国とロシアが運営してきました。ここに、日本が初めて自前でつくる部屋が「きぼう」です。
「きぼう」は、船内保管室、船内実験室、船外実験プラットホームの順で3つに分けてISSに運ばれます。今回運ばれたのは、実験の装置や材料などを置くための船内保管室で、直径4.4(メートル)、高さ4.2(メートル)の円筒形。土井さんがロボットアームなどを操作して備え付け、中に入って荷物の仕分けもしました。このためにエンデバーは約16日間と、ISS組み立て飛行としては最も長く飛び、日本時間の27日朝、米フロリダ州のケネディ宇宙センターに戻る予定です。
土井さんは、53歳。日本人宇宙飛行の最年長記録を今回、塗り替えました。東京生まれですが、中学の3年間は山梨県甲府市で過ごしました。市立東中に在学中は天文部だったそうで、「アポロの月面着陸など懐かしい思い出がある」といいます。資料室には土井さんが描いた火星のスケッチが、今もあるそうです。
船内保管室に入った土井さんは「新しい素晴らしい宇宙時代の幕開けです」と、今回の飛行の意義をビデオカメラ越しに語っていました。
日本、ISSへ経費年間400億円
米国の動向に不安、課題も多く
人が暮らせる有人宇宙施設の建設は、日本の悲願といわれてきました。日本がISSに参加を決めたのは1985年。宇宙の無重量状態の中で高品質の新薬開発を進めることなどが目的です。しかし、米国の計画見直しやコロンビアの事故などで遅れ続け、「きぼう」の第一便が宇宙に旅立つまでに23年かかりました。
エンデバーの打ち上げに日本の関係者はホッと一安心です。宇宙航空研究開発機構は万全の体制で設置をバックアップ。4月から10年ぶりに募る宇宙飛行士について、近く選抜方法などを発表します。
とはいっても、宇宙実験の必要性は以前より減っています。わざわざ宇宙へ行って実験しなくても、地上でデータを得ることができるまでに技術が進歩しました。2010年にシャトルが引退すると、後継機がないといった問題もあります。「きぼう」の設備維持も課題で、90年代に作られた部品の中には、技術者が退職していて、手に入れるのが難しいものも。
さらに、宇宙開発の中心である米国が、宇宙ステーションより月や火星の探査に力を入れようとしていることも、不安材料。次の大統領次第という面もあります。
ISSに日本がかける経費は、年間400億円といわれます。「宇宙実験は依然必要で、(経費のかけすぎと)決めるのは、まだ早い」という反論もありますが、宇宙開発の意義を議論する曲がり角が、「きぼう」の設置本格スタートと同時にやってきていることは、どうやら確かです。
(高橋 俊一・ジャーナリスト)
2008年3月23日
|