こどもアサヒ > ニュースドンとこい! > ニュースドンとこい!過去一覧

集団自決の説明に「軍の関与」復活

高校日本史教科書検定問題
「強制」の表現は避けて実質修正

 第2次大戦の沖縄戦で住民の集団自決は「軍の関与」や「軍の教育」によって起きたという説明が、高校の日本史教科書に復活します。当初の原稿にあった「日本軍の強制」が教科書検定で削除された問題について、文部科学省が教科書会社の修正を認めることにしたのです。一方では「強制」という直接的ないい方を避けたため、改善かごまかしか、評価は分かれます。沖縄県民の反発や抗議の動きは消えていません。

 学校の教科書は、教科書会社の原稿を文科省が検定調査審議会の意見を聞いて判定する制度になっています。内容を変える必要があるとされれば、訂正の形で書き換えないと合格できません。こうして、原稿から「軍の強制」が削られました。

 これが2007年春に明らかになり、沖縄県民から「軍に自殺を強いられたのに、おかしい」「事実をねじ曲げるな」といった声が高まり、9月に宜野湾市で開かれた抗議の県民大会には約11万人がつめかけました。

 一度合格した教科書の内容を改めるのは異例ですが、文科省も沖縄の声を無視できなくなったかっこうです。教科書会社6社中、要因に触れない1社を除く5社が「強制」削除の訂正申請を取り下げたうえで、修正して再申請。文科省側は「強制」を認めない検定意見は取り下げなかったものの、「関与」などの表現を盛ることにしました。

 たとえば、ある教科書は、初めの「日本軍に集団自決を強制された人もいた」から「集団自決に追い込まれた人々もいた」、さらに「日本軍の関与のもと、配布された手榴弾などを用いた集団自決に追い込まれた人々もいた」と変わりました。
 べつの教科書は「集団で自決を強いられたものもあった」→「集団自決においこまれたり」→「日本軍によって集団自決においこまれたり」といった変わり方です。

沖縄は検定意見取り下げ要求
制度のあり方ふくめ議論必要

 これで「集団自決は日本軍の行為が主な原因」と読める内容になりました。1つの区切りがついたともいえますが、問題は「軍の強制」「命令」が依然消されていること。

 教科書を書いた人の思いは複雑で、「これで生徒が理解できるか」との疑問も。研究者の間には「説明の回復がほとんどされた」「前より詳しくなった」とする受けとめ方と、「沖縄戦の実態がまったく理解されていない」という指摘が。

 沖縄県内でも一部評価と不満の声があるようです。県民大会の実行委員会は、県民に反発が広がるのを感じて、「強制」の記述を入れるとともに検定意見を取り下げるよう求める要請書を首相と文部科学相に出すことを全会一致で決めました。

 今回示されたのは、1つには沖縄戦の実態です。沖縄県民だけでなく、全国的な関心が集まりました。もう1つは、教科書検定制度のあり方に疑問を投げかけたこと。検定は「政治的中立」を掲げますが、本当に偏りはないか、文科省に都合のいい学者ばかりで審議されていないかといった問題が解消されたとは、どうもいえそうにありません。

 これを機会に、戦争を若い人にどう伝えるか、学校の教科書はどんな書き方をしたらいいかを、教科書検定制度への賛成反対といっしょに議論していくことが求められています。

(高橋 俊一・ジャーナリスト)

2008年1月13日


朝日学生新聞社のホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
すべての著作権は朝日学生新聞社に帰属します