|
「新しい労働党」ブレアさんの10年
教育・医療改革、経済で成果
イラク戦争を機に人気下降
イギリス(英国)で10年間首相を務めた労働党のブレア氏(54)が6月27日に辞任し、同じ党のブラウン氏(56)が新首相に就任しました。イラク戦争に加担したことで、労働党政権の人気は落ちており、ブラウン首相が国民の信頼を回復できるかどうかが、今後の英国政治を占うかぎになっています。
1997年の総選挙で大勝したブレア氏は、20世紀の英国で最も若い43歳で首相になりました。演説が上手でスマートな印象を与える若いリーダーに国民も大きく期待し、当時の支持率は80%を超えました。
ブレア氏が首相になる前は、もう1つの大政党で、企業経営者や中間層が支持する保守党が18年間、政権を握っていました。労働者や低所得者が支持してきた労働党は、その間4回あった総選挙で一度も勝てませんでした。
そこで、94年に党首になったブレア氏は党の改革に乗り出します。それまで労働党は企業を国有化して労働者に平等に富を分配しようとする社会主義をめざしていましたが、それをやめて「強い経済と公正な社会の両立」を目標に掲げました。保守党でもなく、古い労働党でもない「第3の道」をめざす改革後の同党は「ニューレーバー(新しい労働党)」とも呼ばれ、保守党の支持層にも受け入れられるようになったのです。
首相に就任するとブレア氏はさまざまな成果をあげます。まず、98年、北アイルランドの英国からの独立をめざす紛争をめぐり過激派と交渉し、和平合意を結びました。教育にも力を入れ、教育予算を倍増し、教育水準の底上げに一定の成果をあげました。医療改革にも取り組み、経済も安定させ、失業率もフランスやドイツより低く抑えてきました。
しかし、2003年にアメリカとともにイラク戦争を始めたことで、人気にかげりが出てきます。ブレア政権は開戦前、「イラクには大量破壊兵器がある」と国民に訴えましたが、そのような兵器は結局見つからず、もとになった情報も根拠がなかったことがわかったのです。
アメリカ主導の「対テロ戦争」に追従したことで国際テロ組織の標的になり、05年にはロンドンの地下鉄で同時爆破テロが起き、多数の市民が犠牲になりました。
同じ年にあった総選挙で労働党は保守党に競り勝ち、ブレア政権は3期目に入りましたが、選挙前に実業家らに見返りを約束して多額の融資を受けたのではないかという疑惑も出ました。こうしたことで支持率が低下したブレア氏は結局、辞任に追い込まれました。
路線継承、保守党は政権奪還へ
政権を引きついだブラウン首相は財務大臣としてブレア氏を縁の下で支えてきました。ブラウン首相は内政面では「ニューレーバー」路線を受け継ぐとみられています。一方、ブレア氏がつまずいた外交では、イラクに駐留する英国軍の大幅削減などをおこなうのではないかという観測も出ています。
次の総選挙は09年に予定されています。最近の世論調査では、40歳のキャメロン党首が率いる保守党が高い支持を得ています。ブラウン首相の政権運営次第では、2年後に、かつてブレア氏が政権を奪ったように、若いキャメロン氏が12年ぶりの保守党政権を築くことになるかもしれません。
(五十嵐誠記者・朝日新聞外報グループ)
2007年7月1日
|