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混乱するイラク再建へ米軍を増派

ブッシュ米大統領の新戦略
対立激化、内戦状態のイラク

約13万人だったイラクの米軍に、計2万1000人の増派が始まりました。派遣を控え、アメリカ本土で式典に出席した兵士と家族=1月末、カンザス州の陸軍基地で

 アメリカのブッシュ大統領は先月、イラクに関する「新戦略」を発表しました。毎日のように爆弾が爆発し、人々が犠牲になっているイラクをどう再建していくか、考えた内容です。しかし、アメリカ国内からも「有効な考え方ではない」と批判を浴びるなど、評判は芳しくありません。
 イラクでは昨年、3万4000人以上の民間人が殺されました。米兵の死者も2003年の戦争開始後、3000人以上に及んでいます。ブッシュ大統領は戦争時は「イラクに自由をもたらす」と話していました。しかし、戦後、独裁者だったフセイン元大統領の重しがなくなったイラクは、スンニ派とシーア派の宗派間の争いが激しくなり、事実上、内戦状態に陥っています。「自由をもたらす」どころか、多くの人が戦前よりも過酷な暮らしを強いられています。

米中間選挙で敗れ政策転換

 こうした状況の中、アメリカ国内では「ブッシュ大統領では、イラク問題を解決できない」という意見が強くなっています。昨年十一月のアメリカ中間選挙でも、ブッシュ大統領が率いる共和党は、ライバルの民主党にイラク政策の失敗を攻撃の材料にされ、負けてしまいました。
 そこで、ブッシュ大統領は今年に入り、「過ちがあった点については、私に責任がある。戦略を変えなければならない」と述べ、新戦略を発表したのです。
 主な内容は、@イラクの首都・バグダッドを中心に約2万1000人の兵士を新たに増員し、治安を維持するAイラクの人が仕事に就き、収入を得られるようにすることなどを目的に約12億ドル(約1440億円)を経済支援するBイラクと国境が接しているイランとシリアが、テロリストの出入りを容認しているので、両国からの支援の流れを止めるC今年11月までにイラクに治安維持権限を移譲することが目標。

対テロ戦費、ベトナム戦超す

 しかし、アメリカの世論調査では6割の人が兵士を増やすことに反対。イラク問題が「うまくいっている」と答えた人は28%にとどまり、「悪化している」が71%に達しています。
 来年11月にある大統領選挙の民主党の有力候補の一人、ヒラリー・クリントン上院議員も「戦線拡大は支持できない。イラク政策は無能力とごうまんさで傷ついた」と批判しています。
 イラク問題は、宗派間抗争や石油収入の分配方法、さらに反米感情を持つ過激派などの問題が複雑に絡み合い、誰も有効な解決方法を示せないのが実情です。
 01〜09年度、イラク・アフガニスタンを含めた「テロとの戦い」の出費は計約7978億ドル(約95兆7000億円)に達する見込みです。アメリカの戦費としては、ベトナム戦争を上回る負担です。
 日本も航空自衛隊がイラクで活動する多国籍軍の支援を続けており、無関係ではありません。イラクを平和な国にするにはどうしたらいいか、国際社会全体で考えなくてはいけません。
(井上 道夫・朝日新聞外報グループ)

2007年2月11日


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