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元大統領の死刑執行
現政権がフセイン時代に幕
イラクで長年にわたり独裁を続けたサダム・フセイン元大統領(69)の死刑が昨年末に執行されました。元大統領の死によって、混乱の続くイラク情勢に悪影響が出ると心配する声も高まっています。
元大統領の死刑は昨年12月30日、バグダッド北部の司法省関連施設で執行されました。現政権のマリキ首相は「暗い歴史に終止符を打ち、イラク建設に前進しよう」と、フセイン時代の終わりと、新時代の幕開けを印象づける声明を発表しました。
元大統領は、かつて「アラブの雄」とされていた時期もありました。
1937年に北部のティクリートで名もない羊飼いの息子として生まれ、68年のクーデターで指導的役割を演じて、大統領にまで上りつめました。
大統領就任の79年に、隣国イランでホメイニ師が主導するシーア派イスラム革命が親米王政を倒しました。国内少数派のスンニ派が、多数派のシーア派を統治するイラクは、「革命の輸出」を恐れました。翌80年に始まったイラン・イラク戦争中、米国などの支援を見込んだ元大統領は、国内でシーア派など反体制派を弾圧。中部ドゥジャイルでのシーア派住民虐殺や北部のクルド人大量殺害事件を起こしました。元大統領は「悪の独裁者」へと変わりつつありました。
こうした流れを決定づけたのが、90年のクウェート侵攻や91年の湾岸戦争での米国との対立です。完敗したイラクは、その後の経済制裁で国際的に孤立し、2003年のイラク戦争で政権は崩壊しました。
法廷の公正さに批判の声も
対立激化する悪影響が心配
拘束された元大統領を待っていたのは、数々の虐殺などを糾明する裁判でした。問われた罪は13にも及びました。しかし、先ほどあげたシーア派村民大量虐殺の罪で昨年11月に死刑判決を受け、刑が執行されてしまったため、他の数多くの犯罪が解明されずに闇に葬られました。
法廷は集団殺害など深刻な人権侵害を犯した個人を見逃さない国際社会の流れの一環でしたが、米国の主導でつくられ、国連は遠ざけられてきました。元大統領は「これはすべて茶番劇だ。ブッシュ(米大統領)こそが真の犯罪者だ」などと、批判し続けました。
人権侵害を審理する場合、当事国の外に法廷を設置したり、裁判官を国連で選んだりして「国際社会の名の下に」裁く形が求められ、常設の国際刑事裁判所(ICC)もオランダにできています。今回の裁判は全面的にイラク国内で行われ、国際社会から「法廷の公正さに多くの懸念が残る」との批判もありました。
また、米国とともに戦ってきた英国は判決を支持しながらも、「世界中の死刑廃止を主張する」と、死刑に反対する欧州各国と同じ反応を示しました。
犠牲祭(イスラム教の祝日)という重要な日の処刑も、宗教感情を傷つける恐れが指摘されていました。
イラクでは現在、シーア派が権力の中枢を握っています。元大統領支持者の多いイラクのスンニ派地域などでは「処刑ではなく報復」だと抗議デモも続きました。さらにこの処刑が、アルカイダなどスンニ派過激派の米国などへの攻撃の、新たな口実に利用されるのではないかと心配する声もあります。
(金井和之・朝日新聞外報グループ)
2007年1月14日
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