|
今月船出の次期政権に課題
現職で8月15日は21年ぶり
 |
| 中国・北京市の日本大使館前で、小泉首相の靖国参拝に抗議する人たち=8月15日 |
小泉首相は終戦記念日の八月十五日、東京・九段北の靖国神社を参拝しました。現職首相によるこの日の参拝は、一九八五年以来二十一年ぶりとなります。
小泉首相は、就任前に八月十五日の参拝を公約していました。しかし、過去五回は「終戦記念日にこだわり、内外に不安や警戒を抱かせることは意に反する」などとし、時期をずらしていました。
今回は「いつ行っても批判する勢力がある。ならば今日は適切な日と判断した」との理屈で、終戦記念日の参拝を強行しました。
首相が「批判する勢力」と表現する相手には、国内での反対の声のほか、中国、韓国も含まれています。
中国は、今回の小泉首相の参拝を「中日関係の政治的基礎を破壊する行動」と指摘し、厳しく批判。また、韓国も「再び参拝したことに深い失望と憤怒を表明する」との抗議声明を発表しました。
さらに、シンガポール外務省も参拝を「遺憾」とし、「地域共通の利益に役立たない」との報道官声明を出しました。マレーシアでは、中国系団体が抗議文を日本大使館に出したほか、オーストラリアの外相も「地域の人々の居心地を悪くしている」と話しました。
A級戦犯合祀、理解得られず
傷ついた外交関係の修復を
諸外国が、首相による靖国神社参拝に反対する主な理由は、A級戦犯の合祀の問題にあります。
靖国神社には、日清戦争以前から戦争の犠牲になった兵士らが長年、まつられてきました。その後、七八年に、日本を第二次世界大戦に導いたA級戦犯も合わせてまつられるようになります。
小泉首相は、参拝後に発表した所感の中で、「特定の人に参拝しているのではない。圧倒的多数の戦没者の方々に哀悼の念をささげるためだ」と説明しています。しかし、諸外国の理解は得られていないのが実情です。
小泉首相は、九月に首相の座を退くことが決まっています。靖国問題を解決し、中韓との外交関係を修復することは次の政権の課題になります。
現在、自民党総裁選には、安倍官房長官、麻生外相、谷垣財務相の三人が立候補を表明しています。
このうち、谷垣氏は首相に就任したとしても靖国神社に参拝しないことを公約しています。麻生氏は、政治と宗教のからみの問題などが指摘される現状を解決するため、同神社を宗教法人でなくすことを提唱しながらも、「この問題は政局にすべきではない」として政権公約では触れていません。
また、最も次期首相の座に近いとされる安倍氏は、元々は参拝推進論者だったものの、最近は態度をあいまいにしています。
小泉首相の参拝で、靖国神社やA級戦犯の問題に、これまでになく大きな関心が集まり、議論が行われています。次の首相は、この議論を生かして、諸外国の心情にも考慮した形で、国による戦没者の追悼のあり方を考える必要があると思います。
(高野 真吾・朝日新聞外報部)
2006年9月3日
|