パレスチナ 暴力は止まる?
欧米諸国は援助をストップ
イスラエルとの長い対立を経て、一九九〇年代半ばからパレスチナ人らが治めている中東のパレスチナ自治区。一月、日本の国会にあたる自治評議会の議員選挙があり、イスラム原理主義の過激派集団「ハマス」が勝ちました。定数百三十二のうち、ハマスは七十四議席を取り、それまで政権の座にあった「ファタハ」は四十五議席と惨敗しました。
この選挙結果に、世界は緊張しました。
四八年のイスラエル建国で土地を追われたパレスチナ人とイスラエルは、長く憎しみ合ってきました。パレスチナ人の一部はテロでイスラエルに対抗しました。中でも八七年に創設されたハマスは、自爆テロを中心に暴力的な手段を取る過激派として知られ、「イスラエル消滅」を最終目標に掲げていると言われています。
そのハマスが政権を取ったため、世界は「イスラエルとパレスチナの平和的な共存が遠のく」と心配しているのです。歴史的に関係が深く、イスラエルとパレスチナの仲を取り持ってきた米国や欧州連合(EU)はハマスに「イスラエルの存在を認め、暴力を停止し、過去の和平合意を尊重するように」と呼びかけています。日本も同じ考えです。米国のブッシュ大統領は「米国の同盟国イスラエルの滅亡を政策の柱に掲げる政党は、我々は相手にしない」と警告しました。イスラエル政府も交渉しないと宣言しています。
ハマスは三月、ハニヤ首相が率いる内閣を発足させました。しかしイスラエルへの暴力的な抵抗をやめると約束しません。このため、欧米諸国はそれまで続けていたパレスチナ援助をストップしてしまいました。この「兵糧攻め」で、パレスチナ自治政府の職員の給料が払えなくなるなど、ハマス政権はピンチに追い込まれました。
腐敗と貧困への不満が背景
中東和平へ話し合う糸口を
選挙でハマスが勝ったのは、それまでの政権に対するパレスチナの人たちの不満があったからです。外国からの援助をむだ遣いしたり、幹部が不正をしたり、縁故主義(コネ)がはびこったりしていました。一方でハマスは貧しい人への慈善活動や教育活動にも熱心に取り組んできました。不安定な政情から長く続く苦しい生活に嫌気がさしたパレスチナ人たちは「いい方向に変わること」に期待してハマスに投票したのです。
ですから、経済的に追い込むだけでは問題の解決にはなりません。現にロシアや、イスラム教国で米国と犬猿の仲のイランは逆に経済支援を表明しました。このままでは、欧米諸国と絶交したまま、イスラエルとの暴力的な抗争を掲げるハマスがパレスチナを支配し続ける、という形になってしまいます。
同じ三月、イスラエルの総選挙でも、パレスチナとの国境を一方的に決めようとする新党カディマが勝ちました。今のところ、イスラエルもハマスもお互いを認めず交渉もしない絶交状態が続きそうです。しかし、中東の平和のためにはテロや軍事力での衝突はやめ、世界各国から協力してもらい、粘り強く話し合いの糸口を探していくほかに解決策はないでしょう。
(原 敦・朝日新聞外報部)
2006年4月30日
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