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不法移民問題でゆれる米国

不法移民の合法化を求めるヒスパニックの人々。規制法案に反対するデモは全米各地で行われています〓2日、米カリフォルニア州で

取り締まり強化に抗議デモ
推定1200万人、不可欠な労働力

 「移民の国」米国が不法移民の扱いで揺れています。去年12月に下院が可決した不法移民取締法案が、不法滞在を重罪とするほか、雇った人からも罰金を取るという厳しいものだったことから、不法移民の多くを占める中南米系の人たちが強く反発しました。上院での審議を前にして、3月25日にはロサンゼルスで約50万人が抗議デモを行うなど、大きな問題となっています。

 現在米国にいる不法移民は約1200万人と推定されています。正しい手続きをとらずに入国した人、認められた滞在期間を過ぎても帰らない人たちです。ヒスパニックと呼ばれる、中南米スペイン語圏の出身者が多く、特に陸上の国境を接するメキシコの出身者は600万人を超えるとみられています。不法移民の多くは建設、農業、清掃、調理などの分野で低賃金の仕事についており、彼らの「安い労働力」なしには米国経済は成り立たないとも言われています。

 こうした現実を背景に、ブッシュ大統領は2004年、すでに米国内にいる不法移民に「一時的労働者」として法的な資格を与え、3年間の滞在を認めることなどを盛り込んだ新しい移民政策を提案しました。

 これに対して、「不法移民にかかる医療費や教育費など国民の負担が増えている」などの批判があるほか、01年9月の同時多発テロ以来、米国民の間に「移民」にはテロリストがまぎれこむとして反感が高まっているという事情もあり、与党共和党内に不法移民取り締まり強化を主張する声が強まっています。

上院で正反対の法案を審議
規制か合法化か世論も分裂

 下院が可決した法案は、こういった声を取り入れたものです。ところが上院では、この法案と同時に、逆にブッシュ大統領の提案にそって不法移民に合法的地位を与える法案も審議されています。

 米国では、同じ課題について上院と下院が内容のまったく異なる法案を可決することが珍しくありません。不法移民問題についても、上院がもし下院のものと違う法案を可決した場合は、両院の協議会で調整が行われることになります。また、両院を通過した法案でも、大統領が署名を拒めば法律として成立しません。

 最新のある世論調査では、「不法移民は出身国に帰るべきだ」が53%、「何らかの法的地位が与えられるべきだ」が40%と、世論も大きく割れているようです。問題の法案が今後どうなるか、見通しにくい状況です。

 米国ほどの規模ではありませんが、日本を含む先進国ではいずれも、不法移民がやはり深刻な問題となっています。自国民がやりたがらない労働をどうするのか、移民の教育や医療にかかるコストをどう考えるのか、不法移民の人権をどう確保するのか、治安への影響はどうか、など、かんたんには答えが出ない課題が山のようにあります。日本でも、真剣な議論を進める必要があります。

(坂口智・朝日新聞外報部)

2005年4月16日


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