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ローマ法王発言、イスラム社会に波紋

「イスラム教を批判」と反発
撤回や謝罪要求、法王は釈明

 ローマ法王ベネディクト16世が、大学の講義でイスラム教を批判する発言をしたとして、イスラム教徒から強い反発を受けました。

 問題となったのは、ドイツのバイエルン州にあるレーゲンスブルク大学で9月12日に法王が行った講義です。約30分の講義は、神学と呼ばれるキリスト教の教義や歴史、信仰生活の倫理(道徳)などに関する難しい内容でした。

 法王は、14〜15世紀のビザンチン(東ローマ)帝国の皇帝が話したとされる「ムハンマド(イスラム教の預言者)が新しくもたらしたものを示してみなさい。邪悪と冷酷しか見つからないだろう」「暴力は神の本質と両立しない」などの言葉を引用し、イスラム世界で宗教的な迫害や布教妨害に対し武力を行使する「聖戦(ジハード)」を批判したとされました。

 この発言にイスラム社会は各地で反発しました。パキスタン議会は発言の撤回と謝罪を求める決議を全会一致で採択し、エジプト最大のイスラム政治組織は法王が謝罪しなければ法王が統治するバチカンとの外交関係を断絶するようイスラム諸国に呼びかけました。さらに、イスラム過激派は「今度は我々がローマを征服する」などと攻撃予告まで出しました。

 波紋は法王の母国ドイツにも広がりました。ムハンマドの切られた首が登場するモーツァルトのオペラは、イスラム過激派から反発を受ける危険性があるとして、上演が中止されました。

 法王は自ら「私が話したいくつかの文言がイスラム教徒の感情を害したと受け取られ、一部の国々であった反応を非常に残念に思う」「講義全体を読み、真意を理解してほしい」と釈明しました。

最近、風刺画掲載が大問題に
宗教の深いかかわり考えて

 ローマ法王の発言に過剰とも思える反応をするにはわけがあります。昨年9月、デンマークの新聞がムハンマドの風刺画を掲載し、その後も欧州の新聞が「表現の自由」を理由に転載しました。このためイスラム教徒がデンマークの在外大使館に放火するなど大問題に発展したからです。

 法王はドイツ南部バイエルン州のマルクトル村で生まれ、同州のミュンヘン大学などで哲学や神学を学びました。レーゲンスブルク大学では、1969年から77年まで副学長などを務めました。

 法王とゆかりの深いバイエルン地方は、ドイツの中でも非常に保守的で、キリスト教の伝統的な価値観が大切にされています。こうした影響からか、法王はバチカンの教理省長官時代から「キリスト教至上主義者」の印象が強く、トルコの欧州連合(EU)加盟について「イスラム教の基盤を持つトルコは欧州とは非常に違う」と異を唱えたこともありました。法王はこのトルコを11月に訪問する予定で、今回の問題を受けて、どのように受け入れられるか注目されます。

 キリスト教とイスラム教は、聖地エルサレムをめぐる争奪戦など本質的には根深い問題を抱えています。ローマ法王の発言問題を単なる失言として片付けずに、宗教が歴史に、そして政治にどのようにかかわってきたのか整理してみてください。

(金井 和之・朝日新聞外報部)

2006年10月29日


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