| 移行政府発足、憲法づくりへ
1月30日、イラク国民議会選挙が行われました。イラク国民が主体となってイラク戦争で壊された国を造り直す作業が本格的に始まったわけですが、宗派・民族の違いを超えた協力体制の確立など難題は山積みです。どう解決していくのか。今後、どんな行程を経て国造りが完成していくのか。イラク国民の力の見せどころはこれからです。
まずは今回の選挙がイラクの国造りの行程においてどんな位置づけになるのか考えてみましょう。選挙では、国民の声を国政に反映する275人の議員を選びました。議員たちは今後、国民議会を開き、大統領と副大統領を選び、大統領らが首相を指名します。首相が組閣し、議会の承認を受けて政府を発足させますが、この政府はあくまでも正式な政府ではなく「移行政府」の位置づけです。
正式な政府とは、憲法に基づいて選挙が実施され、選出された人が、憲法に基づいた方法で発足させるものです。憲法は、国家の基本的事項を定めた国の最高法規範。しかし、イラクにはまだ正式な憲法がないため、今回の選挙は、国造りのために暫定的に(一時的に、仮に)作られた「イラク基本法」に従って行われました。いわば、この選挙や国民議会、その結果選ばれる大統領や首相もすべて「暫定」であって、これから発足する政府も正式なものに移行するためだけの存在にとどまります。
これら「暫定」の面々に与えられた最大の責務が正式な憲法を作ること。8月15日までに新憲法を起草して、10月15日までに、その内容を国民投票にかけます。国民の納得を得て制定された憲法の内容に基づき、12月15日までに正式な国民議会選挙が実施され、年内には正式な政府が発足します。ここまで来て初めてイラクの国造りが完成することになるのです。
対立する宗派・民族の協力を
独力でのテロ克服が課題に
ただ、その道筋は険しいものとなりそうです。要因の一つには、イラクの民族、宗教構造の複雑さがあります。今選挙の結果、多数派のイスラム教シーア派が政治の主導権を握るわけですが、スンニ派やクルド人も納得いくような組閣や憲法起草は簡単ではありません。互いに仲が良いとはいえない三大勢力の間で亀裂が深まれば、国造りの行程が道半ばにして空中分解する可能性もあるのです。
もう一つの大きな要因はテロです。国造り自体を不当だとして反発する武装勢力が、国民議会や移行政府要人らを標的に攻撃をしかけてくることが予想できます。テロ行為への対処のみならずテロリストの摘発も含めた治安維持活動には、まだまだ米軍など多国籍軍の力によるところが大きく、イラク独力での対処能力の確立が急務です。
テロの標的になりかねない中、投票に行った多くのイラク国民たちは、生まれ変わった国に安定した生活の保障を期待しています。テロの長期化は、そうした国民の期待を裏切り、国造りへの自信を失わせる結果につながりかねないのです。まさに再生の産声をあげたばかりのイラクですから、今後の成長ぶりをみなさんも注視してください。
(山本 大輔・朝日新聞外報部)
(2005年2月13日)
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