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「1円で売り出し」取引成立
取り消せない欠陥システム
投資家が株の売買をする東京証券市場で大変なことが起きました。誤って大量の株が一株たった一円で売りに出され、コンピューターがチェックしきれないで、普通ならちょっとあり得ない取引が成立してしまったのです。
問題は八日、東京証券取引所(東証)のマザーズという市場にこの日から上場したジェイコムという人材サービス会社の株を、みずほ証券が「一株六十一万円」で売るところを「一円で六十一万株」と誤って売り出したこと。ジェイコムが発行した株式は、一万四千五百株しかないのです。その四十倍以上を、みずほ証券は「売ります」と約束したのです。
みずほ証券はすぐに気づいて買い戻そうとしましたが、他の証券会社や投資家も買い注文をしていて、結局、約九万六千株がキープされたままでした。
この発注ミスによって市場は混乱し、ミス発覚直後は多くの株価が下がって、一時「全面安」状態になったこともありました。
原因は最初、みずほ証券の発注ミスだけだと思われましたが、実はそうではないことがあとでわかりました。みずほ証券は売り出した直後にミスに気づいて、取り消し注文を何回か出しましたが、取り消せませんでした。東証のコンピューターシステムが、うまく動かなかったのです。売買システムに欠陥がありました。
その後、このジェイコム株のうち約五万株が、六つの証券会社グループに買われていたこともわかりました。うち四グループはアメリカやヨーロッパに本拠がある企業の系列、いわゆる外資系でした。
405億円損の負担、話し合いで
巨額利益得た会社に批判も
実際にある株数よりも多い数が売買されたので、すべての買い手に株券をわたすことは不可能ですし、放っておくと、株価全体が大混乱するかも知れません。
そこで、強制的に現金で決済することになりました。株式売買代金の清算業務を行う日本証券クリアリング機構という機関が間に立つ形で、一株九十一万二千円として、みずほ証券から代金を受け取り、買い手に現金を払う決済を行いました。九十一万二千円は、発注ミスがなければ成立したであろう取引価格として算出したといいます。みずほ証券の損は四百五億円で確定しました。
これで問題が全部、解決したわけではありません。責任はどこにあるのか。「みずほ証券だけでなく、東証にも責任はある」として、金融庁は東証に業務改善命令を出しました。東証の社長は二十日、辞任しました。
四百五億円の損は、発注ミスをしたみずほ証券だけでなく、システムの欠陥から売買を取り消せなかった東証や、そのシステムを東証に納入したコンピューター会社の富士通も負担するべきだとの考え方に基づいて話し合うことになるといいます。
異例な発注ミスで株を買って巨額のもうけを得た証券会社グループなどに対する批判も高まっています。
一部のグループは利益を返す方向で金融庁などと話し合いを始めています。ほかの証券会社や個人投資家のもうけをどう扱うかも、議論と調整が必要です。みなさんは、どう思いますか。
(高橋 俊一・朝日新聞記者)
2005年12月24日
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