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 発明への報酬はどうあるべきか問う
 青色LED訴訟で和解
 会社は元社員へ約8億4000万円
和解について感想を述べる中村修二さん=12日、東京・霞が関で

 「青色発光ダイオード(LED)」という「世紀の発明」に対して、約8億4千万円が、会社から、発明した元社員へ払われることになりました。報酬をめぐって元社員と会社が法廷で争ってきましたが、11日の東京高裁で、この金額で和解したのです。発明の報酬としては、個人が起こした訴訟では、国内で過去最高の金額です。
 発明者は米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の中村修二さん(50)です。中村さんは大学院を卒業後、徳島県阿南市の日亜化学工業に就職し、LEDの発明に成功しました。
 LEDは、携帯電話のカラー画面や信号機などの発光体となる半導体素子です。中村さんが「青色」を発明したことで半導体素子の三原色がそろったため、映画を長時間にわたり何本も録画できるDVDなど、生活を便利にする製品の開発が進みました。
 日亜化学工業はテレビのブラウン管や蛍光灯に使う蛍光材料を作る会社でしたが、1994年にLED商品を開発してからは、売り上げが急増しました。2002年12月期の連結売上高は約1160億円で、94年の約6倍。現在は、LED関連商品の売り上げが全体の8割を占めています。
 中村さんはこの発明で世界的に有名になり、「ノーベル賞に一番近い人」と言われています。しかし、会社は当時、中村さんを表彰し、「ごほうび」として2万円を与えただけでした。中村さんは99年に会社を辞め、会社に巨額の利益をもたらした発明に対する報酬がこれだけではおかしい、と01年8月、東京地裁で裁判を起こしました。
 04年の東京地裁の判決は、中村さんの完全勝訴でした。地裁は、この技術で特許有効期間中に日亜化学工業が得る利益を1208億円と計算し、中村さんの発明の貢献度を、その「50%」、すなわち604億円とみなしたのです。中村さんが要求していた200億円全額を払え、という判決に会社側は納得せず、東京高裁に控訴しました。
 和解案では、発明の貢献度は会社の利益の「5%」に下げられ、「発明の対価」は6億857万円と算定されています。これに、支払いが遅れた損害金を加え、計8億4391億円を払えとの内容です。中村さんの発明を、LEDの開発過程の一つの技術にすぎないとみた結果でした。中村さんは大変不満でしたが、東京高裁の判決を待つとさらに金額が下がる可能性が高いことから、和解を受け入れました。

 訴訟続き、基準作る企業

 米国ではしばしば、企業の研究者は優れた発明をすると、別の企業にもっと高い給料で引き抜かれます。報酬も、研究の成果に応じて契約などで決まります。しかし、日本では、生涯同じ会社に勤め、「何事も会社第一」の風土があり、訴訟を起こすと批判される空気が残っています。
 しかし、これ以降、味の素や日立製作所などで同様の訴訟が相次ぎ、発明の報酬をめぐって多くの日本企業が真剣に考えるようになりました。三菱化学のように、最高2億5千万円の報酬を研究チームに与えることに決めた会社もあります。
 また、特許法には、会社員が発明した発明品に企業がどのくらい報酬を与えればよいのか具体的な基準がなかったのですが、このほど法律も改正されました。
 中村さんは「発明がなければ、そもそも会社の利益はなかったはず。発明に正当な報酬を与えることで、研究者の意欲をかきたて研究を目指す若者が増える」と、日本企業の体質を変えるよう訴えています。和解後、中村さんは「理系を目指す人には、実力が収入に反映される米国に来るよう勧めたい」と、あらためて声明を発表しました。

 (斎藤 智子・朝日新聞記者)

(2005年1月23日)


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