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元米兵・ジェンキンスさんの今後は

 曽我さん家族来日から1か月半
 罪問う米政府に配慮求める

病気治療のため来日したジェンキンスさん(中央)=7月18日、羽田空港で

 北朝鮮による拉致被害者の曽我ひとみさん(45)の夫ジェンキンスさん(64)と2人の娘さんが、日本に来てから1か月半が過ぎました。ジェンキンスさんは北朝鮮に亡命したと言われている元米兵で、米政府は軍法会議(裁判)を開いて罪を問う方針です。裁判は近く始まると見られています。日本政府は「一家が一緒に暮らせるよう配慮してほしい」と米政府に求めており、いまのところ、ジェンキンスさんが北朝鮮の情報を証言する代わりに実刑を免れるという見方が有力です。
 ジェンキンスさんの問題は複雑です。朝鮮半島の国際情勢を反映しているからです。1945年、朝鮮半島は日本の植民地から解放されました。旧日本軍の武装解除をするため、北緯38度線の北側にソ連(現在のロシア)軍、南側に米軍が進駐しました。ところが米ソの対立が激しくなり、ソ連を支持する朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と米国を支持する大韓民国(韓国)に分かれました。
 50年には朝鮮戦争が起き、米国は韓国と一緒に北朝鮮などと戦いました。53年には休戦になりましたが、完全に終わったのではありません。あくまでも「一時的な休戦」です。厳密に言えば、北朝鮮と米国はいまも「戦争状態」にあるのです。
 ジェンキンスさんは、駐韓米軍に所属していた65年1月、北朝鮮に入国したといいます。そのころ、北朝鮮と韓国を分ける軍事境界線では、双方の銃撃戦や工作員の侵入が相次いでいました。

 他の米兵の情報を証言して
 軽減してもらう「司法取引」

 米政府が快く思うはずがありません。小泉首相が北朝鮮を再訪問した五月、米国防総省はジェンキンスさんについて、@脱走A他の兵士に脱走を促したB利敵行為C忠誠放棄をすすめた\\という4つの「きわめて重い罪の適用を受ける」と発表しました。最高刑は死刑です。
 日本政府は、ジェンキンスさんを罪に問わないよう米政府に求めています。しかし、米政府がその通りにすれば、米国の退役軍人たちが怒るでしょう。ブッシュ米大統領は11月の大統領選挙で敗北する恐れもあり、簡単には譲歩できません。
 そこで日米両政府は「司法取引」という形で決着させようとしたようです。ジェンキンスさんが北朝鮮に住んでいる他の米兵の情報などを証言する代わりに、罪を軽くしてもらうという制度です。ジェンキンスさんは8月、米軍の独立法務官(弁護士)と会い、司法取引などの説明を受けたようです。ジェンキンスさんは、自主的に在日米軍施設に出頭して話したいと表明しました。近く裁判が開かれると見られています。
 5人の拉致被害者と家族がみんな日本に帰ってきました。しかし、拉致問題がすべて解決したわけではありません。北朝鮮政府が「死亡した」と発表した横田めぐみさんたちに関する詳しい情報も、まだ明らかになっていません。別の拉致被害者がいる可能性も指摘されています。

 (北川 学・朝日新聞外報部)

(04年9月5日)


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