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イラク 日本人の人質、無事解放
罪のない民間人を離すよう
宗教者委員会が呼びかける

 イラクで捕まっていた日本人が全員、無事、解放されました。「人質」となっていた3人に続き、17日には、別のイラク人武装グループに捕まっていたジャーナリストら2人も、解放されました。米軍とは関係がないことや、武器を持っていないことなどがわかり、地元の宗教家グループが「罪のない外国の民間人を離すように」と呼びかけたことが功を奏したようです。無事を祈っていた家族は胸をなでおろしており、日本政府も、最悪の事態は避けられたとホッとしています。

バスに向かう高遠菜穂子さん(中央)と今井紀明さん(高遠さんの左)。郡山総一郎さんは今井さんの左奥=18日、羽田空港で
記者会見にのぞむ安田純平さん(左)と渡辺修孝さん(中央)=18日、ヨルダンのアンマンで

 15日に解放されたのは、イラクで孤児の世話をしていたボランティア活動家の高遠菜穂子さん(34)、フリーライターの今井紀明さん(18)、フリーカメラマンの郡山総一郎さん(32)です。解放された3人は、現地でカタールの衛星テレビ局アルジャジーラのインタビューを受け、「すごく疲れてショックなこともたくさんあるけれど、イラク人のことを嫌いになれない」(高遠さん)などと話して地元の共感を集めました。18日には、民間機で帰国しましたが、「体調が万全ではない」などの理由で記者会見はしていません。
 3人の事件発生後、イラクの武装グループに捕まったのは、フリージャーナリストの安田純平さん(30)と、NGO活動家の渡辺修孝さん(36)です。2人は14日、イラク人通訳らとともにタクシーでバグダッド市内から西へ向かう途中、反米活動をしている武装グループに捕まりました。
 犯行声明も出されず、行方が知れませんでしたが、17日に解放されました。ヨルダンのアンマンのホテルで開かれた記者会見によると、はじめは米国のスパイと疑われましたが、その後は丁寧な応対を受けたそうです。
 解放が実現したのは、どちらも、「イスラム宗教者委員会」が解放を呼びかけたおかげでしょう。3人の身柄引き受け人になったスンニ派のアブドルサラム・アルクベイシ師は、上村司・駐イラク臨時代理大使に「私たちは日本国民ではなく日本政府を責めているのです。自衛隊をイラクに派遣したことで、憲法に反する行動をとったからです」と話し、政府と民間人とを区別してみせました。
 イラクでは、外国人を人質にとる卑劣な事件が相次いでいます。幸い日本人は全員無事でしたが、イタリア人は、米軍と一緒に働いていたため一人が殺されてしまいました。

 

苦しい立場だった日本政府
5人への非難の声には疑問

 今回の事件で、日本政府は大変苦しい立場に立たされました。海外の日本人を守るのは政府の仕事です。が、解放と引き換えに自衛隊を撤退させては「日本人を人質にすれば政府がいいなりになる」と思わせ、逆に、海外で日本人の誘拐を増やしかねません。
 国内では、解放と同時に、5人に対する非難の声があがっています。政府のいうことを聞かずに危険な土地に行った「お騒がせ」な人たちとの見方が強まっているのです。
 確かに、危険への認識は甘かったといえます。しかし、「何が起きているのか」を人々に知らせるため、どこででも取材をすることは、ジャーナリストやカメラマンの責務です。とりわけフリーの記者は、会社勤めの記者が危険な土地から去った後も最前線に残って情報を送り続けることが多く、「非常識」と単純に切り捨てられません。
 また、日本人の民間ボランティアがイラクの人々のため果たしてきた活動は、イラクや国際社会で日本の評判を高めこそすれ、非難すべきことではありません。

(斎藤 智子・朝日新聞記者)

(04年4月25日)


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