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イラク人指導者も狙うテロ、なぜ?
シーア派のハキーム師死亡

 イラク中部の聖地ナジャフで8月29日に起きた爆弾テロで、イスラム教シーア派のイスラム革命最高評議会(SCIRI)の最高指導者ムハンマド・ハキーム師らが亡くなりました。事件の真相は今も不明です。関与が疑われているのは、イラク国内に今も潜むフセイン元大統領の支持者や、米軍のイラク駐留を快く思わないアルカイダなど外国のイスラム過激派、親米的と見られるハキーム師らと対立するシーア派内部の勢力などです。

 イスラム教には大きく分けてシーア派とスンニ派があります。スンニ派は現在、全世界のイスラム教徒の人口の約9割を占める多数派です。対するシーア派は世界的には約1割ですが、イラク国内では6割を超えて多数を占めますし、隣国イランはシーア派の国です。

爆弾テロで亡くなったシーア派・SCIRIの最高指導者ムハンマド・ハキーム師

 スンニ派が支配的だったフセイン政権下では、北部のクルド人と並んで南部に多く住むシーア派も迫害されました。1991年の湾岸戦争の直後にはフセイン政権に対して反乱を企て、弾圧されたこともあります。この時は10万人以上が犠牲になったとも言われています。

 そうした経緯を考えると今回のイラク戦争でフセイン政権を崩壊させた米軍に対しては友好的になりそうなのですが、実際には複雑な状況になっています。反乱の際、米国に支援を求めたのに拒否されたため、「見捨てられた。米国は信用できない」という強い印象が今も残っているのです。

 また、シーア派の教義の特徴はマホメットのいとこで娘の夫だったアリーとその子孫しか指導者として認めない、という点にあります。歴史上、イスラム大王朝を築いたウマイヤ朝なども認めていません。イランが厳格なイスラム国家体制を続けているのを見ても分かるように、シーア派は世俗化したスンニ派より宗教心にあつく、厳格な宗派だと言えるでしょう。

米国主導の国家運営など 強まる反米

  イラク戦争が始まり米英軍の支配地が増えても、医療や食料などの援助物資が市民にうまく行き渡らなかったことのほか、自爆テロを警戒した米英軍が全身をベールで覆った女性の身体検査を実施したことなども厳格なシーア派の神経を逆なでしました。

 フセイン政権打倒後のイラクの国家運営が、イラク人による自治ではなく米国主導の暫定占領当局(CPA)によって進められていることへは「国を乗っ取られるのではないか」と疑っているのです。米国がイランを「悪の枢軸」と公に非難していることも警戒心をあおります。

 すでに反米デモが各地で起き、死傷者も出ています。CPAが任命した統治評議会に参加しているSCIRIの指導者暗殺の黒幕として、身内のシーア派が疑われてもおかしくない状況が生まれていたのです。

(小倉いづみ・朝日新聞記者)
(03年9月14日)


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